三菱 ekクロススペース と eKスペース新型《撮影 安藤貴史》

三菱自動車のスーパーハイト軽ワゴン、『ekクロススペース』と『ekスペース』が6日、正式発表された。これまであった『ekカスタム』は廃止され、その代わりにSUVテイストを強めたekクロススペースが加わったのが大きなトピックだ。

そのコンセプトやねらいについて、デザイナーであるデザイン本部プロダクトデザイン部デザイン・プログラム・マネージャーの大石聖二氏(以下敬称略)に聞いた。

◆カスタムからクロスへ


----:このクルマのフロント周りは、ekクロススペースとekスペースのターボ、そしてノンターボの3種類の仕様が存在します。まず初めにその理由から教えてください。

大石:ekクロススペースは、これまでのekスペースカスタムから決別して完全にSUV方向に振り切りました。そうはいっても普通の形をしたエアロ系、いわゆる昔ながらのカスタム系のクルマが欲しいというお客様は必ずいます。その受け皿も必要だろうということで、ekスペースのターボだけは少しスポーティーに見えるようにしました。具体的にはグリルを黒くし少し洗練させ、かつ力強いイメージを出しました。またコーナープロテクターのような用品も作りました。

----:そうするとekクロススペースとekスペースのターボとはユーザー層が全く違うと考えているのですか。

大石:その通りです。

----:ではekクロススペースは新規ユーザーがターゲットとなるのですか。

大石:いえ、そうではなく、昔ながらの三菱のお客様です。三菱はSUVのフィールドの方が勝負しやすいと考えた結果、いわゆる普通のカスタム系からシフトしたのです。実はハイトワゴンの『ekクロス』と『ekワゴン』とを比べると、ekクロスの方が圧倒的に売れているので狙い通りになっています。


----:しかしekワゴンは、ターボとノンターボで顔を変えていませんね。

大石:実はこの時に、色々な人から「普通のカスタムは出ないのか」という質問を受けましたが、計画はありませんのでそう答えています。

----:それを踏まえて今回の作り分けにつながったのでしょうか。

大石:それも多少はあります。しかしそれ以上になぜ最初からこの作り分けの計画を立てたのか。それは、ekスペースの車形、つまり背の高いクルマの方が登録車からのダウンサイザーが多いことが挙げられます。そういう方はターボの方が高いということもよくご存じですので、そういう方に満足してもらえるクルマが必要でした。

一方ekワゴンですが、こちらはターボの仕様はありません。もしターボが欲しければekクロスをお選びいただくことになります。

◆ギラギラ顔が好みのユーザーもクロスが受け皿に


----:ekスペースのターボの場合、グリルを黒くしたり用品などでカスタム風にデザインする以外でも、よりカスタム方向にデザインする方法もあったと思いますが。

大石:用品でエアロパーツ風のコーナーの部分や、フォグランプガーニッシュなどを採用し差別化を図っていますが、実際には色々なものを検討しました。しかし、軽の枠の中では標準のタイプでもバンパーは全長や全幅を使ってしまっていますので、これ以上の変更は出来ませんでした。

----:それでもカスタム需要の受け皿という割には、やはり少し大人しいかなと思います。先代のekスペースカスタムがマイナーチェンジでかなり迫力を持たせていました。それを踏まえると、ekクロススペースよりもギラギラ感が欲しい人もいるかもしれません。


大石:ekスペースカスタムのギラギラ顔が受け入れられているということは、その人たちはおそらくekクロススペースでも十分だと判断しました。ギラギラとまではいいませんが、個性的な顔をしているので、受け入れられると思います。

販売傾向の話をすると、実はカスタムは出だしの3か月くらいはとても良いのですが、最終的にはスペースばかりが売れるという傾向があり、これは三菱の特徴でもありました。そしてマイナーチェンジするとこの割合が逆転してカスタムだけが売れていき…。

ekクロスとekワゴンを見てみますと、そろそろ発売から1年が経ちますが、当初7:3くらいでekクロスが売れていましたが、現在でも6:4くらいですので、カスタムの時ほど極端な落ち込みはありません。三菱の強みを生かした戦略的なラインナップにしていますので、最終的には5:5ぐらいに落ち着くと嬉しいですね。


----:ノンターボのフロントフェイスはどういう考えでデザインされたのでしょう。

大石:誰が見てもekクロススペースとは違うクルマに見えるようにグリルもボディ同色にしました。これにより、立体感がきちんと表現出来ています。ここを黒く塗るとターボのような力強さが出ますし、造形を強調するという点ではボディカラーで見せた方がより表現出来ています。その結果、綺麗なekスペースのデザインが出来ました。

◆「軽に見えない」幅広デザインの工夫


----:ekクロススペースはSUV方向にシフトしたわけですが、これはekクロスというクルマがあったからこそ、この方向に向かうことが出来たのでしょうか。それともカスタムと両方考えながらクロス方向に振る決断をしたのですか。

大石:ekクロスの時の方がよほど悩み、紆余曲折ありましたが、クロススペースでは最初からSUV方向でしか考えていませんでした。

----:つまりスペースに関しては、最初からクロスしか考えておらず、その後カスタムの人達を救うにはどうしようかと考えたのですね。

大石:順番としてはそうなりますね。


----:このekクロススペースのデザインでのこだわりを教えてください。

大石:ダイナミックシールドを綺麗に収めたことです。ともするとちょっと怖いと思われがちなフロント周りですが、今回はちゃんと女性にも受け入れられるような構成になっています。また、フロントフェンダー周りもこだわりの造形です。

ヘッドランプの造形ですが、ekクロスや『デリカD:5』と同じように上に持ってきたらどうなるかもトライしてみましたが、現在の方が収まりも良く、こちらを採用しました。

また、サイドから見るとフェンダー周りのラインは前にいくにしたがって徐々に下げたくなりますが、それを下げないように頑張って前に抜き、ダイナミックシールドのランプ部分につなげています。フロント周りも絞込まずに幅をキープさせてもいますので、幅広く見えるでしょう。ナンバープレートが中央についているので軽に思われないと思います。

三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 eKスペース 新型(東京オートサロン2020)《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース と eKスペース新型《撮影 安藤貴史》 三菱自動車 デザイン本部プロダクトデザイン部デザイン・プログラム・マネージャーの大石聖二氏《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekスペース 新型《撮影 安藤貴史》 三菱 ekスペース 新型《撮影 安藤貴史》 三菱 ekスペース 新型《撮影 安藤貴史》 三菱 ekスペース 新型《撮影 安藤貴史》 三菱 ekスペース 新型《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱 ekクロススペース《撮影 安藤貴史》 三菱自動車 デザイン本部プロダクトデザイン部デザイン・プログラム・マネージャーの大石聖二氏《撮影 安藤貴史》 三菱 eKスペースカスタム と eKスペースの先代モデル《撮影 宮崎壮人》