トヨタ カローラ 新型(ハイブリッド)《撮影 雪岡直樹》

◆「格好よさ」のために3ナンバー化

1966年10月の誕生以来初の3ナンバー化をした新型トヨタ『カローラ』の、車体寸法拡大の理由について開発者は、「格好良い外観のため」と言い切った。

4ドアセダンでは全長が+95mm、全幅が+50mm拡大され、逆に車高は−25mmと低くなって、その言葉通り大地に踏ん張りの利いた立派な姿となった。ステーションワゴンの「ツーリング」も若干の寸法はセダンと異なるが、同様の拡大により欧州車と競合できるほどの存在感を備えている。

◆運転の楽しさと静粛性は様変わり


現行『プリウス』以降展開が続くTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)により開発された新型カローラは、操縦安定性も格段に進歩している。目線の定まりや、旋回の決まりやすさ、ライントレース性において、開発者が意図した通り、都市高速の屈曲路で俊敏な走りを体感することができ、運転を楽しませた。

快適性においても、路面からの振動を的確に収束させ、静粛性が明らかに向上して上質さを思わせる空間を生み出している。カローラが様変わりしたといっていい。


一方で、ハイブリッド車(HV)とガソリンエンジン車(1.2リットル・ターボ車には試乗できておらず、1.8リットル車)では、静粛性にかなりの差を感じた。HVの静粛性は、上級車並みと言っていい。一方のガソリンエンジン車は、同様の速度で走ろうとするとエンジン回転数が高まり、室内騒音が大きくなった。

また、舗装路面の変化によってロードノイズが上下し、騒音の落差をかえって意識させた。実際には前型に比べ騒音の音量は下がっているとの説明だが、路面変化の影響を受けやすい騒音対策のように思われた。

◆「カローラとは何か」という伝統的価値との板挟み


ところで、単に3ナンバー化による車幅拡大というだけでなく、運転席の着座位置が前型に比べ80mm後退しているのも理由の一つかもしれないが、車幅感覚をつかみにくかった。このため手の内で自在にクルマを操れるといった印象は薄い。車線をはみ出していないか、対向車とのすれ違いに支障はないかという不安が心の内に残る。

上級車種になったことが、良い点と気がかりな点を含め、大衆車として生まれたカローラへの親近感を薄れさせている。トヨタが標榜するもっといいクルマ作りと、カローラとは何かという伝統的価値との板挟みとなって生まれた新型のような気がする。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★

御堀直嗣|フリーランス・ライター
玉川大学工学部卒業。1988〜89年FL500参戦。90〜91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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