カーナビなどに交通情報を提供しているVICSセンターが2020年春より新たなチャレンジとして、プローブデータを活用した実証実験をスタートさせる。10月にシンガポールで開催されたITS世界会議と、その直後の東京モーターショーの同社ブースでその概要を公開した。
◆交通情報提供の対象道路は現状の30%から70%へと大幅拡大
それによると、首都圏の1都6県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川)の6万kmの道路を対象として、既に提供中の交通情報に加え、自動車メーカーやカーナビメーカーのプローブデータを統合して提供するというもの。これにより、現状は道路全体の30%(1万8000km)しか提供できていなかった交通情報が全体の70%(4万2000km)にまで引き上げられる。これは2018年の5月に策定された2022年までの5カ年計画に基づくもの。実証実験の期間は2020年春〜秋の約半年間だが、VICSセンターとしてはこれを足がかりに全国へと広げていきたい考えだ。
プローブデータとは会員が実際に走行して収集した道路状況を交通情報として反映させたもの。VICSが提供している交通情報は、全国の道路総延長距離約128万kmのうち主要幹線道路を中心とした約7万kmにとどまり、それを補完する目的で各社が独自に収集して交通情報として活用して来たのがプローブデータだ。
たとえば、プローブデータをカーナビで反映させてきたパイオニアの場合、VICSの約5倍もの道路を対象に交通情報を提供。これは幹線道路に通じる大半の道路までも対象とする。また、各社が災害時に“通れる道路”として公開した情報もこれを活かしたもの。つまり、より広範な道路で交通情報を反映させるにはこのプローブ情報が欠かせないというわけだ。
◆「VICS WIDE」対応カーナビなら一般道での渋滞回避がより高精度化
今回の実証実験で素晴らしいのは、既に使っているFM-VICS対応カーナビでこの情報が表示できるということ。まだプローブデータをどう表示させるかなどの詳細は未定とのことだが、この実験がスタートすると対象エリアを走るカーナビ上には交通情報が一気に増えて表示されることになる。表示を確認しながら渋滞を迂回することに大いに役立つってわけだ。
さらに2015年4月よりサービスが開始された「VICS WIDE」対応カーナビなら、この情報を活かしてビーコンユニットなしでも一般道での渋滞回避を自動的に行う。提供情報が増えることで、よりスムーズなドライブが実現するのだ。
実はVICSがプローブ情報を利用するのは初めてではない。2015年4月の「VICS WIDE」提供時から東京地区のみタクシー車両から得られるプローブ情報を利用していたのだ。ただ、当初は「対象エリアは順次拡大していく」としていたものの、その後もいっこうにエリアが広がることはなかった。
VICSセンターによれば「タクシーの台数はエリアによってバラツキがあり、交通情報として活用するには適切でないという事情があった」という。しかし、今回明らかになった実証実験で活用するプローブ情報では、各メーカーが自社のカーナビを使っているユーザーが収集したデータを使う。その情報量が膨大であることは疑いがない。
2020年春、VICSは新たなステージへと大きくステップアップする。渋滞のないスムーズなモビリティ社会の実現へと近づくことを期待したい。
VICSがプローブデータを首都圏で導入 2020年春からの実証実験で
2019年11月07日(木) 11時00分
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