日産自動車 「今後の防災対策と電気自動車」 トークセッション《撮影 小松哲也》

日産自動車は10月24日、東京臨海都心MEGA WEB、東京モーターショー2019のOPEN FUTER EXPO会場で、台風や地震の被災地の自治体担当者を招いて、『今後の防災対策と電気自動車』をテーマにしたトークセッションを開催した。

まず2019年9月に上陸した台風15号の被災地のひとつ千葉県市原市役所総務部危機管理課長の佐久間重充氏からは「台風15号の強風によって倒木、電柱の倒壊、住家の屋根の被害が非常に多く発生した。また停電が長期化したことによって通信障害、携帯電話も固定電話もつながらない状況になり、情報の伝達収集ができなくなったということで、市としての支援活動や市民生活に大きな支障が出た。最大6万7400軒、市内の半分で停電し、復旧まで15日間かかった。これまで経験のしたことのない長期にわたる停電となった」と被害状況が報告された。

この台風15号の被災地に対し日産は電気自動車『リーフ』を提供、給電活動にあたった。日産の日本事業広報渉外部大神希保部長は「これまで千葉県と連携する機会はなかったが、市原市、木更津市、君津市、富津市、香取市の各市役所の代表番号に電話し、電気自動車ができることを説明し、何か役にたてることはできないかということで危機管理課につなげてもらった。総台数50台以上配備し、情報取得のためのスマホ充電、暑さ対策としての扇風機、福祉・老人ホームで流動食を作るための調理器具などの給電に使われた」と振り返った。

また「とくに今回気づいたのは避難所に駆け付けられない方、老人ホームや保育園への要請が一番多かった。電気自動車の大容量バッテリーであれば例えば扇風機やスマホ充電だけに使う場合は避難所、公民館で1週間くらい持つ。また福祉、老人ホームでは電気自動車の静かさも貢献した。ガソリンによる発電機は結構な音がする。入居者がストレスなく過ごすには静かさが重要になってくるので、騒音対策にもなった」とも。実際に市原市では「福祉施設、病院等で扇風機、冷蔵庫に活用した」と佐久間課長は話す。

一方、2016年に大地震の被害を受けた熊本市環境局環境推進部環境政策課桝田一郎課長からは被災報告とその後の防災対策が語られた。まず「震度7クラスの地震が立て続けに2回発生、なおかつ余震が4000回以上あった。これにより最大避難者数11万人。さらに大きな余震がくるのではないかということで、市民がみんな避難所に駆け込んだという状況。また車中泊が非常に多く、学校のグランドやスーパーの駐車場がほぼ一杯になるくらいだった」と当時の状況が語った。

その際の教訓を受けて熊本市では「災害時のエネルギー確保の一環として電気自動車を活用することを決めた」ほか、「電気自動車の保有が少ないので、日産および熊本の販売店2社と災害時などに試乗車を借りる受ける協定を結んだ。この協定では借りるだけでなく、電気自動車を普及させていくことも盛り込んでいる」という。

災害リスクアドバイザーの松島康生氏からは「災害時に飲食やトイレのほかに必須となるのが明かり、情報、通信。この3つが最低限度ないと災害時を乗り切ることができなくなる。これらはすべて電気が必要なる。生きていくためには水、食料、トイレが必須だが、生活する上では電気なしでは難しいと痛感すべき」との指摘がなされた。

被災現場の声などを受けて日産の大神部長は「いつもの時は移動手段としてお使い頂き、もしもの時には電気自動車をバックアップ電源として活用するという、『いつもともしも』の組み合わせを推進したい。そのためには自治体はもちろん、民間企業とも連携しながら災害に強い街づくりにつなげていきたい。そのためにもより早くより多くの電力を供給していきたい」と締めくくっていた。

日産自動車 「今後の防災対策と電気自動車」 トークセッション《撮影 小松哲也》 日産自動車 日本事業広報渉外部 大神希保 部長《撮影 小松哲也》 千葉県 市原市役所総務部 佐久間重充 危機管理課長《撮影 小松哲也》 熊本市環境局環境推進部環境政策課 桝田一郎 課長《撮影 小松哲也》 災害リスクアドバイザー 松島康生 氏《撮影 小松哲也》 日産自動車 「今後の防災対策と電気自動車」 トークセッション《撮影 小松哲也》 日産自動車 「今後の防災対策と電気自動車」 トークセッション《撮影 小松哲也》 熊本地震で避難所となった益城町の駐車場(2016年)《photo (c) Getty Images》 台風15号の被害(9月10日、千葉県市原市)《photo (c) Getty Images》