日本自動車工業会 定例会長会見《撮影 小松哲也》 

気になるニュース・気になる内幕。今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析する新聞ウォッチ。…………

11月中には通算の在職日数が憲政史上最長となる安倍晋三首相。4年間、優勝を逃してきた巨人軍の3回目の監督に就任し、大胆かつ柔軟な采配でリーグ優勝を飾った原辰徳監督。そして、日本自動車工業会(自工会)の会長職をさらに延長するトヨタ自動車社長の豊田章男氏。余人をもって代え難いとみられる3人の共通するキーワードは「再登板による長期政権」ではないだろうか。

自工会は、2020年5月に任期が満了する豊田会長の任期を2022年5月まで延長することを発表した。9月26日に開かれた理事会で、全会一致で続投を決定したそうで、同時に、副会長を務めていた日産自動車の西川廣人・前社長兼最高経営責任者(CEO)による申し入れで副会長職を辞任したことも発表した。

自工会の副会長職としては、すでに2016年に三菱自動車の相川哲郎社長(当時)も辞任しており、日産も辞退したことで、当面は豊田会長を支える副会長職はマツダの丸本明社長、ホンダの神子柴寿昭会長、常勤の永塚誠一氏の3人となった。

きょうの各紙も「自工会の会長任期は1期2年で2期連投は異例だ」とも報じているが、気になるのはその真相である。豊田氏は、最初の自工会会長を2012年から14年まで就任したが、18年からも再登板しており、今回、さらに2年間延長することで合算すると6年つとめることになる。もっとも、2000年からのトヨタ、ホンダ、日産による「輪番制」の前には、会長職を6年や10年もつとめた長期政権の重鎮もいたほどである。

豊田会長の続投については、記者会見で、神子柴副会長が「グローバルでの変革期を迎え、より一丸となってオールジャパンで勝ち残り、競争力を高めるために、強力なリーダーシップがある豊田会長が、これまでのように2年で代わることが適切なのか、次期会長会社として考え、各社で相談し総意で決めた」と述べ、輪番制は継続し、22年5月からの次期会長は「ホンダから出す」ことも明言した。

きょうの日経は「自動運転や電動化といった新潮流が進む中、あらゆる面でトヨタ色の強まりが鮮明になっている」としながらも「豊田会長の任期延長は世界の車業界が変革期にある中で、日本として戦略の一貫性を重視する必要があった。特に20年夏の東京五輪・パラリンピックは『未来のモビリティー社会を見せることができる貴重な機会』(トヨタ幹部)だ。日本のメーカーの技術を世界に発信するためにも中期視点で業界連携を進める必要性があった」とも伝えている。

ただ、「輪番制」が導入されてからホンダでは、自工会副会長職までは現役社長が就任するが、歴代の自工会会長には社長経験のない事務系トップを送り込んできた。会長職は代表権を持つことが不文律だが、この5月に八郷隆弘社長と副会長を交代した神子柴氏にしても「代表権」のないままの就任で、「自工会軽視」の声もある一方で、足元が揺れる中で「業界活動まで取り組む余裕がない」との”お家の事情”も指摘されている。

「東京モーターショーに100万人を集めたい」と意欲を示す豊田会長の続投には諸説紛々飛び交っている。

2019年9月27日付

●日米貿易、農産品7700億円分関税減免、来月にも国会提出、車「撤退」は継続協議(読売・1面)

●自工会豊田会長任期を2年延長、22年5月まで(読売・8面)

●関電会長らに1.8億円、福井・高浜町元助役提供、国税指摘(毎日・1面)

●JDI再建また暗礁、600億円超支援立ち消え(毎日・7面)

●ガソリン9週ぶり値上がり(東京・6面)

●シラク元大統領死去、フランス、知日派、米単独主義けん制(日経・1面)

●リニア開業に静岡の壁(日経・2面)