日本製鉄のUSスチール買収承認、トランプ政権「黄金株」の拒否権内容が明らかに(写真はUSスチール)《photo by U. S. Steel》

「損して得取れ」ということわざもあるが、6月15日付けの各紙の社説「日米連携の新たな扉を開いた」(読売)や「完全子会社化を歓迎する」(産経)のほか、石破首相も「トランプ大統領のリーダーシップや決断力に心から敬意を表したい」などと述べたほど、はたして手放しで喜ぶことができるのだろうか。

トランプ米大統領がこの期に及んでやっと承認した日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収をめぐり、米政府が保有する「黄金株」による拒否権の内容が明らかになったそうだ。米国のラトニック商務長官がX(旧ツイッター)に投稿したもので、きょうの読売や朝日も「生産・雇用国外移転を禁止」などのタイトルで取り上げている。

それによると、黄金株は、経営の重要事項に関する拒否権を持つ株式だが、先週末、トランプ政権が、日鉄と国家安全保障協定を締結し、USスチールの買収を承認した時点では具体的にどのような事項に及ぶかは、明らかにされていなかった。

ところが、ラトニック氏の投稿によると、黄金株に基づき、トランプ氏か代理人が拒否権を持つのは、USスチールの本社のペンシルベニア州ピッツバーグからの移転、社名変更、140億ドル(約2兆円)の設備投資の削減・撤回・延期、生産・雇用の米国外への移転、設備改修など通常の一時停止を除く工場の閉鎖・休止などのほか、従業員の給与や海外からの原料調達についても制約を設けるとしているという。

さらに、米政府による黄金株の保有は「永続的」なもので、トランプ政権以降も踏襲されるとの見通しも示したとも伝えている。

つまり、トランプ政権の同意なく投資の削減や、生産・雇用の米国外への移転などを行うことを禁じており、完全子会社化が承認されたとはいえ、今後、日本製鉄の経営の重荷となる可能性もあるようだ。

2025年6月16日付

●イラン石油施設を攻撃、イスラエル、報復欧州激化 (読売・1面)

●日鉄投資削減に拒否権、黄金株、生産国外移転にも、米商務長官 (読売・2面)

●発車時の死角幼児犠牲、車高影響ミニバンなど事故相次ぐ(読売・26面)

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●日産、ルノー株一部売却へ、社長表明、1000億円規模確保「新車開発に投資」 (日経・1面)

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USスチール《photo by U. S. Steel》