オーストラリア大陸を縦断する世界最高峰ソーラーカーレース「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」(BWSC)へむけ渡航準備に追われる工学院大学ソーラーカーチームのピットに「伝説のボートレーサー」といわれた植木通彦の姿。
ブリヂストンワールドソーラーチャレンジを1か月後にひかえた工学院大学は9月11日、「艇王」とまで呼ばれた植木通彦を特別講師として招き、渡豪直前講演を開催。水上格闘技のレジェントと学生ソーラーカーチームメンバーが初顔合わせ。
1968年生まれ福岡出身の植木通彦といえば、語り継がれる伝説や数々の名シーンを生み出してきたボートレース界のレジェンド。デビュー3年後の1989年、桐生のレースで転覆し、顔を75針も縫う大けがを負うも、翌年の唐津で初優勝。のちに公営競技史上初の年間獲得賞金2億円、ボートレース最高峰レースSGで5年連続優勝など数々の記録を残し、いつしか「艇王」と呼ばれる存在に。
ボートレーサー養成所所長を経て、初代ボートレースアンバサダー(BA)を務める植木BA。1週間後にオーストラリアへと渡り、いよいよ最北の街ダーウィンから南端の州都アデレードへ、3000kmのレースに挑む工学院大学ソーラーカーチームにどんな声をかけたのか。
工学院大学ソーラーカーチームの濱根洋人監督(工学部 機械システム工学科 教授)、尾崎大典キャプテン、安部達哉エネルギーマネジメント、早川雄大ドライバーが話を聞いた。
◆結果が出なくても次につながる失敗があればいい
まず「レースでプレッシャーに打ち勝つには?」という問いに植木BAは、「勝負や仕事、受験もそう。プレッシャーっていつもある」といい、こう伝えた。
「そのプレッシャーは、どれだけ準備してきたかによって変わるはず。守りに入らず、監督が描く勝つためのシナリオを、みんなそれぞれの役割で100%のちからを出せばいいと思う」
「でもね、勝負の世界では100%のちからは出てないと思う。自分の70%のちからをしっかり出し切ることも大事じゃないか。で、めざしていた結果が出なくても、次につながる失敗があればいい」
「ちょっとの疑問点や不安点が本番で大きな想定外を生むことがある。そうした疑いや不安を準備段階でいかに解消していくかも大事ですよね」
「目標を達成できなかったからって、挽回しよう挽回しようなんて思わないほうがいいですよね。きのうはきのう。きょうやることを集中したほうがいいと思います。いい意味で、過去を引きずらないように」(植木BA)
◆強くなればなるほど謙虚であれ
工学院大学ソーラーカーチームは、前回大会で、時速90km/hでテスト走行中、強風にあおられて工学院大学ソーラーカーが転覆。レース棄権が妥当という状況に陥ったという。
チームは、それでも再起をかけて可能な限りの修復作業を重ね、レースに出場。このとき地元メディアは「日本の技術力は、もうだめだというほどに追い込まれた状況でも急ピッチで復旧させるちからもある」と伝えたという。
「ぼくも20歳のときに転覆して大けがした。そのとき、痛い思いをして気づくことがある。自分を過信していたと。人からいろいろ忠告を受けていたのに、それを受け入れなかった。でもその転覆した瞬間に思いがよぎったんですよ。『ああ、やっぱり言われたとおりだ』って」
「やっぱり人のアドバイスや話は、謙虚にむきあうこと。どんなに勝ち続けても、強くなればなるほど謙虚にならなければならないって思いますね」(植木BA)
◆風に合わせて斜めに走らせることができる
この日、植木BAは濱根監督に案内されて工学院大学 八王子キャンパスのソーラーカーチームのピットも見学。ボートレースは水上、ソーラーカーレースは舗装路と、舞台は違えどマシンの話になると話題がつきない。
「工学院大学ソーラーカーは実は、風にあわせてクルマも方向をやや斜めにして走らせることができる」(濱根監督)
「ボートと似てますよね。クルマでいうとドリフトしている感じ? ノーズがやや右に向きながらまっすぐ走るっていうこと?」(植木BA)
「工学院大学ソーラーカーチームは、監督以外はすべて学生。ほかではプロのドライバーを雇うチームもあるけど、工学院大学はドライバーもメカニックも学生」(濱根監督)
◆やっぱり線が敷かれた道を走るのは……
また植木BAは、この特別講演でこんなことも学生たちに伝えた。日々の仕事や暮らしにも役立ちそうな、ひとこと。
「好きなものを食べればいいと思います。メンタルに影響ないように好きなものを。もちろん、ボクサーなどと同じで、勝つための食事は守らなければなりませんけどね」
「勝ちすすんだり、うまくいったりすると、当初の目標よりも上げる人がいるけど、ぼくはそこで目標ラインを上げない。逆に少しつまづいたとき、目標が達成できなさそうなときは、すぐに目標を下げる。それがメンタルにも、日々の焦りが軽減する」(植木BA)
「艇王」「ボートレース界 伝説のレジェンド」といわれた植木BAは最後、こんな素顔をみせて学生たちを笑わせた。
「実はこうみえて、クルマの運転がダメなんですね。まっすぐ走れない。やっぱり線が敷かれた道を走るのは苦手なのかもしれない」
豪ソーラーカーレースに挑む工学院大学に、“艇王”植木通彦が激励「実はこう見えて……」
2019年09月11日(水) 19時02分
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