ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》

◆ボルボのプラグインハイブリッドEV

“Twin Engine”は目下のボルボのPHEVを指す呼称で、エンジン(フロント)とモーター(リヤ)で駆動するAWDであるのが特徴だ。『V60』では、エンジンの性能違いで「T6」と「T8」の2モデルが用意されている。

今回の試乗車は「T6」。エンジンについては実はT8と同じ2リットルのターボ+スーパーチャージャーの仕様だが、専用のチューンで253ps/35.7kgm(T8は318ps/40.8kgm)の性能としている。ボルボはエンジン+モーターによるパワーの参考合算値は340ps(T8は405ps)と説明しており、いずれにしてもエンジンのみの「T5」を大きく凌ぐ動力性能の持ち主ということができる。


バッテリーはセンタートンネル部にスペースを確保し搭載しており、ほかにインバーターをラゲッジスペースの床下に搭載、フロアボードを持ち上げるとカーペットが盛り上がっていて「あ、ここにあるな」とわかる。とはいえ車重は2050kgとガソリン車のT5と較べると+350kgながら、前後重量配分は54:46とT5(56:44)より数値上は僅かながら“前寄り”となっている。

◆スムーズで洗練された走り


実車はシステムの作動が実にスムースで、自然で洗練された走りが実現されている。デフォルトは“Hybrid mode”だが、条件が許す限りかなりモーターで走ってくれ、エンジンの入り方も、それをほとんど意識させない。“Power mode”はその強化版で確かに加速など力強くなるが、いたずらに力づくな走りに豹変しないところがボルボらしい。

他方で“Pure mode”は最高速度120km/hまでモーター走行でカバーしてくれるモードとなっており、静粛性の高さはまさしくEVといったところ。とはいえ加減速時に感じるGはガソリン車に対し極端に違わず、なのでドライバーも同乗者もリラックスして乗っていられる……そんな印象だ。

またなめらかで重厚な乗り味を実現しながら、クルマの挙動が素直に感じられるのは、バッテリーがボディの中央に置いたことの副産物だろう。それとHybrid mode時のモーターとエンジンの使用領域を示すディスプレイの表示が見やすく、クルマを効率的に走らせるためにとても役立つ。

◆賢い選択肢


なお駆動用リチウムイオンバッテリーの容量については、仕様変更があり30Ahから34Ahに拡大されるとのこと(試乗車は変更前の個体)。これにより、カタログ記載のプラグインレンジでの走行距離が48.2km(変更前=45.1km)、WLTCモード燃費は13.7km/リットル(同・12.3km/リットル)となる。

いずれにしても、走行中に積極的に充電を行なう“Charge”モード、その電気を一定量保持しておく“Hold”モードを活用しながら、自宅に充電設備を持たずに乗れるのもPHEVのメリットだ。

ちなみに価格に着目するとベースグレードの“momentum”は659万円の設定だが、ここからエコカー減税、補助金分の少なくない額を差し引いて計算ができるうえ、さらに平日はEVとして乗る……など使用パターンが合致すれば長い目でみてガソリン代も節約ができる等、非常に賢い選択肢になると思える。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》 ボルボ V60 T6 TWIN ENGINE AWD INSCRIPTION《撮影 島崎七生人》