スズキ カタナ 新型《撮影 山内潤也》

1981年に初代『GSX1100S KATANA』が登場して以来、いつの時代も熱狂的ファンに支えられ、名車としての地位を確立した『カタナ』。

2000年のファイナルエディション発売まで、クラスを問わずさまざまな派生モデルが登場したことからもわかるとおり、スズキが世界に誇る由緒正しきブランドとなっている。

その復活は待望であったが、1980年秋に発表された初代と同じように、2018年のインターモト(ドイツ・ケルン二輪車国際見本市)にて新型が登場した。その復活劇はドラマティックなもので、17年にイタリアのバイク誌が企画しリメイクしたマシン「KATANA3.0」にスズキが賛同し、改めて製品化のために開発したものだった。まさに異例中の異例と言えよう。

長らく愛されてきた初代があるからこそ、新型に対しての賛否両論は数多く聞かれるが、いずれにせよ注目度はきわめて高く、1980年の“ケルンの衝撃”再びと、カムバックのニュースはバイクファンだけでなく広く伝わっている。

◆タダ者ではないオーラ漂う!?


その新型「カタナ」を10日間ほど預かったが、街乗りをしていると、やはり視線を強く感じる。復活のニュースを知っている人も、そうではない人も際立つ存在感に目を向けずにはいられないのだろう。「あっ、カタナだ」という声も何度か耳にしたし、スマートフォンをこちらに向けて写真を撮る人もいる。

角形デザインのLEDヘッドライト、フロントノーズからテールエンドにかけてのシャープで流れるようなライン、初代とフォルムは異なるものの、エッジの効いた切り欠きを入れて“刀”と漢字で車名を入れるなど初代のエッセンスを随所に盛り込み、ひとめで「カタナ」だとわかるデザインとしているからだ。

その心臓部はスズキ・スーパースポーツの最高峰『GSX-R1000』譲りのDOHC4バルブ並列4気筒。一般道での常用回転域で特に力強く、スタートダッシュも中間加速も強烈としかいいようがない。右手のグリップ操作に忠実で、アクセルワークだけで乗り手が意図したとおりに操れる。

ストリートバイクの心臓部に最適化するよう、スズキ開発陣はあえて2005〜08年のパワーユニットを選んでカタナ用にリチューンした。ロングストローク設計がゆえに低中速トルクが図太く、全域でエキサイティングなパワーを発揮するからだ。

◆目指したのは最強ストリートバイク


多くのライダーに受け入れられるよう、神経質な乗り味にならないよう配慮されている。まず発進時や極低回転走行時にトルクの落ち込みを防ぐ「ローRPMアシスト」を採用した。

これは必要に応じて自動的にエンジン回転数を、乗り手も気付かない程度に上げてくれる電子制御装置。実際、渋滞時の低速走行やUターンの際、エンジン回転の落ち込みが感じにくく安心感が得られた。極端な話し、右手でアクセル操作をせずともクラッチレバーを操るだけでスタートできてしまう。


そして、ピックアップが過激すぎて扱いにくくならないよう、スロットルグリップにおけるケーブルの巻き取り形状を見直し、アクセルの開け始めで穏やかにパワーが立ち上がるようしている。通常のバイクが絶えず1:1なら「カタナ」は0.8から始まり、徐々に1:1に戻っていくというプログレッシブな特性としているのだ。

さらに、トラクションコントロールも装備。3モードの介入レベルとOFFが選べ、もっと感度の高い「3」なら濡れた路面や冬季の冷えた状況でもスリップに臆せずアクセルを開けていける。現代のロードスターとして、なくてはならない装備と言っていいだろう。

◆最新技術を結集し、死角なし


サウンドも素晴らしい。「イージースタートシステム」で瞬時に目覚めると、アイドリングから迫力のある図太い音。元気溌剌とした排気音はアクセルを開けるのが嬉しくなり、高回転まで引っ張り上げれば官能的とも言えるエキゾーストノートを全身で味わえた。五感を刺激する“いい音”を奏でるようサウンドチューニングが徹底された賜物であり、新型「カタナ」の大きな魅力のひとつとなっている。

強力なエンジンにマッチするよう車体や足まわりも死角はない。高剛性と軽量化を両立したアルミ製ツインスパーフレームとスイングアームは最新解析技術で「カタナ」のために最適化され、軽快なハンドリングと高いトラクション性能を実現した。


アップライトなハンドルはリラックスしたライディングポジションを生み出し、小さな入力で車体を軽々と操れる。着座位置が前寄りなこともあってフロント荷重が高まり、コーナリング性能も高い。前後17インチのキャストホイールは、ダンロップ製のハイグリップラジアルタイヤ「ロードスポーツ2」を履く。

インナーチューブ径43mmのKYB倒立フォークはフルアジャスタブル式で、ブレンボ対向4ピストンラジアルマウントキャリパーと310mmフローティングディスクの組み合わせとしたフロントブレーキも第一線級。プログレッシブ特性のリンク式モノショックのリアサスペンションも63mmのストロークを確保し、伸び側、スプリングプリロードを調整可能としている。

◆また新たな伝説がはじまった


バランスに優れた完成度の高い新型ロードスポーツであるのは確かだが、「カタナ」に乗っていると思うとそれだけで高揚感があった。名車とはそういうもの。まだ登場したばかりだが、すでに乗り手を納得させるオーラ、説得力、満足感があるのだ。

初代がそうだったように、きっとまた長く愛され続けるだろう。新型「カタナ」に乗りたくて、バイクの免許をとる人もきっとあらわれるに違いない。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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