ファンティック・キャバレロ スクランブラー500《撮影 ダン・アオキ》

16歳の誕生日と共に原付免許を取り、でも、20代はクルマに夢中。アラサーでリターンライダーになるも、40代は仕事に忙殺される。そしてアラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが、最新のバイクをチェックしていきます!

◆ちょっとレトロな「これぞスクランブラー!」


ファンティック『キャバレロ スクランブラー500』は、なかなかワイルドなバイクですね。前19インチ、後ろ17インチのブロックタイヤを履かせ、排気管を高い位置に配した、ちょっとレトロな「これぞスクランブラー!」というスタイルを採ります。4ストロークの449cc水冷単気筒エンジンは、ブリキのバケツをブッ叩くような金属的なサウンドを発して、イタリアン・スクランブラーをガンガン走らせる。

赤信号などで停車すると、アイドリングにときどき不整脈が混じるのが、いかにも大排気量のシングルシリンダーらしい。低回転域ではトルクの変動が大きいので、街なかでは丁寧にスロットルを扱わないと多少ギグシャクしますが、4000rpmを超えるころには本領発揮。シートを通して強めのビートを伝えながら、キャバレロ スクランブラーを力強く押し出します。

ギアは6段。トップギアの100km/h巡航では、エンジン回転数は約4000rpm。もちろんライダーは正面からの風を全面的に浴びますが、バイク自体は余裕を持ってのクルージング。タンク容量は12リッターと少なめですが、これなら旅の相棒としても活躍できそう。

フロントタイヤが19インチなので、コーナリングの入り方は鷹揚ですが、立ち気味のフロントフォークのおかげか、回頭性はいい。意外なほど、ヒラヒラと向きを変えられます。ダートのウデ自慢なら、存分にバイクを振り回して楽しめるんじゃないでしょうか。

◆2度の倒産を経験する老舗ブランド


さて、ファンティックとは馴染みの薄い名前ですが、実は50年を超える歴史を持つ老舗のバイクメーカーです。1968年の創業当初からスクランブラーモデルを手がけ、モータースポーツへの参加にも積極的。トライアルやエンデューロといったオフ系の競技で強みを発揮し、数々のタイトルを手にしてきました。

ところが好事魔多し。イタリアンブランドの常として、レースに入れ込みすぎたためか経営は不安定で、なんと! 2度の倒産を経験。そのたびに「ファンティック」の名を惜しむ救済者が登場するところもすごいですが、現在はVeネットワークという投資家グループが経営を支え、2014年以降、順調に業績を伸ばしています。今年から日本への輸入も始まり、イタリアンスクーターの「ランブレッタ」なども手がけるサインハウスがインポーターを務めます。

モデルラインアップは、キャバレロシリーズと、未舗装路でのトレールを楽しむ「エンデューロ」の2系統。キャバレロには、スクランブラーとフラットトラックの2モデルがあります。それぞれ500、250、125のエンジンが用意され、いずれも水冷4ストロークの単気筒です。

念のため確認しますと、スクランブラーとは、バイクのオン/オフがまだ未分化だった時代に、オンロードモデルを未舗装のコースで走れるようにモディファイしたもの。フラットトラックは、文字通り平らなダートのオーバルコースを周回する、北米で人気のレースに出場するためのマシン。キャバレロの市販2モデルは、こうしたレースマシンのイメージをストレートに反映しているのです。

◆少々ラフな部分も笑い飛ばせる度量が必要


キャバレロ スクランブラーと同フラットトラックは、ベースは同じマシンですが、シート形状やタイヤサイズが異なります(フラットトラックは、前後とも19インチ!)。装備類はほぼ共通で、フロントフォークは41mmの倒立タイプ。ブレーキは、ブレンボ由来のBYBREで、カット機能を持つABS付き。ARROWのエグゾーストを備え、フロントランプ、テールやリアウィンカーの灯火類にはLEDが使われます。

スクランブラーのシートはクラシカルなタックロールタイプ。シート高は820mmと少し高めですが、スクランブラー500で乾燥車重150kgと、比較的軽いことが救いでしょうか。449ccエンジンは、最高出力40ps/7500rpm、最大トルク43Nm/6000rpmを発生します。

スクランブラー500は、ネオクラシックな外観に違わず、野趣あふれる武骨な「走り」が最大の魅力。少々ラフな部分も、「それが個性!」と笑い飛ばせる度量が必要です。一方、より穏やかに、日常的にスクランブラーと付き合いたい方は、250や125を試してみてもいいかもしれません。価格は、500が110万円、250が89万円、125が79万円となります。

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