日産自動車、志賀俊之氏

気になるニュース・気になる内幕。今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析する新聞ウォッチ。…………

欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、仏ルノーに対し、経営統合を申し入れたと発表。ルノー側も「統合の是非について検討を進める」と前向きにとらえており、両社を軸に世界規模で自動車業界の再編が本格化する可能性もある。

きょうの日経も「自動車、3度目の大再編」とのタイトルで、「電動化や自動運転技術の革新など自動車産業は『100年に1度』の大変革期にある。企業規模で勝る米IT(情報技術)大手などとの合従連衡を見据え、交渉力を高める狙いがありそうだ」と伝えている。

今後の焦点となるのは、ルノーが大株主の日産自動車の対応である。きょうの各紙も「経営の自主性を守れるかは不透明だ」(朝日)、「ルノーと連合を組む日産に複雑な影響を与えそうだ」(毎日)、「当面は事態の推移を慎重に見極めるとみられる」(日経)などと伝える一方で、日産の西川廣人社長は「企業連合の幅が広がる方がいい。将来に向けてポジティブな話だ」(読売)というコメントも報じられている。

過去の再編劇などでスネに傷を持つライバル同士だが、日産と三菱自動車までが相乗りすれば、世界最大規模となる日米欧の自動車連合が誕生することになる。

世界の自動車業界はそんな生き残りを賭けた再編が加速する中、この業界から「足を洗う」ことを決めたのは、日産のゴーン体制下でCOO(最高執行責任者)を務めた志賀俊之氏である。6月25日に開かれる定時株主総会後には日産の取締役を退任するが、志賀氏は一足先に自動車向け急速充電規格の普及活動に取り組む「チャデモ協議会」の会長職を5月27日付で退任。後任には東京電力出身の姉川尚史・経営技術戦略研究所長が会長に就任した。

チャデモ協議会は2010年に設立し、今年で10年目の節目を迎えたが、初代会長には東京電力の勝俣恒久会長(当時)が就任。しかし、翌年3月に発生した福島第一原発事故で経営責任を問われて任期途中で退任したため、志賀氏が後継会長として急きょ登板した。それから8年間、チャデモ対応の充電器は世界で2万5000基に達したほか、電気自動車が普及する中国と国際規格の完成を目指す覚書を締結するなどチャデモの拡大普及に取り組んできた。

東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで開かれた2019年会員大会では、会長として最後の挨拶をした志賀氏は「チャデモにはひとしおの思い入れがあるが、このチャデモを含め、日産に関するすべての役職を辞める」と述べた。日産関係の公職から身を引くことで、一連のゴーン事件に対する“ケジメ”とも受け取れた。

2019年5月28日付

●FCA対等統合提案、ルノー、是非検討へ(読売・1面)

●タイヤIoTで保守・点検、販売と両輪新収益源に(読売・10面)

●日産社長「ポジティブな話だ」(読売・11面)

●日米貿易参院選以降に決着、首脳会談、交渉加速で一致(朝日・1面)

●EU統合推進か分断か、懐疑派阻止へ勢力結集不可欠(産経・7面)

●日米貿易交渉、米、自動車で譲歩困難、大統領選控え長期戦も(産経・11面)

●経団連会長が検査入院、中西氏、体調不良、総会欠席へ(日経・5面)

●デンソー、中国にEV向け新工場(日経・16面)

●五輪渋滞休日並みに、首都高、1000円上乗せや抑制策で(日経・36面)

経営技術戦略研究所、姉川尚史所長