ホンダ ステップワゴン モデューロX《撮影 雪岡直樹》

ホンダアクセスが手がける「Modulo」ブランドはそもそも、エアロやホイール、そしてサスペンションなど、チューニング&カスタマイズパーツを販売していたが、2013年、初のコンプリートカーとなる「Modulo X」を『N-BOX』と『N-ONE』でリリースした。匠の技により、走りの上質感を求めたのがこのモデルの特徴だ。また、ベース車に対してよりスポーティなチューニングが施されている。

さて、2018年12月、ステップワゴンの「Modulo X」がマイナーモデルチェンジして登場。そしてこのタイミングで、ガソリンモデルに加え、ハイブリッドモデルのModulo Xも追加された。ハイブリッドは従来、フリードのみだったので、ステップワゴンが加わることで、より商品性が高められた。

◆内外装ともに、コンプリートカーならではの上質感



そのステップワゴン ModuloXに、北海道の雪上で試乗するチャンスを得た。スポーティなカスタマイズモデルを敢えて雪上試乗できることなどなかなかないだけに貴重であり、また、滑りやすい路面では、よりクルマの素性もわかりやすいので、とても興味深かった。

ベースとなるのは、「スパーダ ハイブリッド G EX ホンダセンシング」。そう、ステップワゴンには、スパーダというスポーティで上質なグレードが存在するのだ。それだけに、Moduloとして個性を出すのは難しい。かといって、ミニバンだし、ブランドの位置付けからしても、あんまり尖ったものも作れない。ここはデザイナーの腕の見せ所。そして、Moduloの開発に当たっては、デザイナーも一緒に走るという。見た目のカッコ良さという静的性能だけでなく、動的性能をも求められるからだ。さらにハードルが高い!!

デザインコンセプトは「Dynamic&Sporty」。ディテールは写真をご覧いただきたいが、フロントグリルやエアロバンパーが一新された。また、リヤコーナーガーニッシュをボディと同色にすることでスポーティさを演出している。そして、インテリアもインパネをピアノブラックにするなど、内外装ともに、コンプリートカーならではの上質感がある。

◆ボディの一体感があり、素直でスムースなハンドリング



雪道に向かう道中、高速道路は雪のないアスファルト路面だったが、雪道以上にここで、ModuloXの直進安定性の高さを実感することができた。そして雪の路面へ。ここでもっとも大きな違いを感じたのはボディの動き方だ。ノーマルは、ステアリングを切った後、リヤのヨーが出るまでに遅れがある。フロントが曲がり出してから、ワンテンポ遅れてリヤが動き出すのだ。一方のModuloXは、ボディの一体感があり、素直でスムースなハンドリングを味わえた。スポーティさを味わうのはアスファルト路面でまたの機会に改めて。

このようなクルマの動きは、もちろん、「トータル」での性能だが、ノーマルで採用されている「パフォーマンスダンパー」を敢えて外したという。路面によっては突っ張ってしまうからだ。突っ張り棒を外しながらも、しっかり感としなやかさを上手くバランスさせたチューニングの妙を感じた。

Moduloの個性とこだわりは理解したし、走りの違いも体感できたが、正直、雪道においてはノーマルとの性格の差はそれほど大きくはなかった。確認したところ、ModuloXはデビュー当時のクルマをベースに開発期間3年以上かけてじっくり煮詰めていったものだが、リリースのタイミングですでにステップワゴンもマイナーモデルチェンジし、Moduloの乗り味と近い方向に性能向上したという。それならば、両車の差は少なくても納得できる。とはいえ、スタイリングやインテリアなども含めてのコンプリートカーなので、十分にModuloXの存在価値はある。

◆後席でも酔うことなく快適なドライブを堪能

クルマにとっての「体幹」は基本、ボディ剛性で鍛えられるが、Moduloはその性能をエアロで出しているという。たとえば、エアロにより床面のCd値を上げることで直進性が増す。リフトバランスを改善することにより、ボディがノーマルと変わっていなくても、ドライバーや乗員はフラットライドや安定感が増したように感じられるというわけだ。実際、今回試乗したModuloXステップワゴンも、ボディには手を加えていないにも関わらず、しっかり感が増していた。

ドライバー目線での性能向上はわかったが、ミニバンとなれば、2列目、3列目の快適性も大事。ちなみに私、クルマ酔いが酷くミニバンの後席は苦手だ。罰ゲームか拷問か、と思いつつ渋々後席に乗り込む。が、幸いまったく酔うことなく快適なドライブを堪能できた。ホッ。

ModuloX、コンプリートカーとはいえ、ボディやパワートレーンなどには手を加えていないため、アフターで個々にパーツを組み込める気もするが、あくまで「コンプリートカー」としてのみの販売で、パーツのバラ売りはしない。その理由を問うと、たとえばサスペンションとエアロのセットでハンドリングや前後バランスを図っているため、どれか一部のパーツを変更しても、トータルでの性能が発揮されないとのこと。なるほど、開発者の「こだわり」が感じられる。

ミニバンは、多くの人を乗せたり荷物を運べ便利だが、ドライバーにとってはけっして「楽しい」クルマではない。が、ModuloXなら、ドライバーも乗員も、ハッピーな移動時間を過ごせるだろう。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性: ★★★
パワーソース: ★★★
フットワーク: ★★★★
オススメ度: ★★★★

佐藤久実|モータージャーナリスト
大学在学中にレースデビュー。耐久レースをメインに活動。海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動。ホンダ・ドライビング・ミーティング、ポルシェ・ドライビング・スクール、BMWドライバートレーニング、VWエコドライブトレーニング、ブリヂストン・タイヤセーフティ・ドライビングレッスンなどでインストラクターを務める。レーシングドライバーとしてのホットな目、ジャーナリストとしてのクールな目、そして女性目線からクルマを評価、自動車専門誌への執筆をはじめWEBやテレビでも活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師。

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