肘折温泉を走るスバル XV e-BOXER《写真提供 スバル》

今回で10回目を迎えたスバルテックツアー。その内容は多岐にわたり、時には飛行機に乗せてもらったり、古いスバルを堪能したりと様々。今回は総合雪国性能を試すべく、山形を200kmにわたって走った。

総合雪国性能と言われても、雪国育ちでも雪国生活者でもない僕にとっては無関係…みたいな思いが正直なところあったのだが、改めて丸1日こうしたところを走ってみると、いやいや、雪のない都会生活者にとっても有難い装備や走りの良さが実感できるものだと感じた次第である。

◆雪深い山形を、スバルで走る


いわゆる雪上試乗会は昨年、安比高原から酸ヶ湯経由で青森までという、それこそ八甲田山の雪中行軍よろしいルートで雪上走行を満喫した。いわばその続編で今度は山形である。我々のスティントは酒田に飛行機で飛んで、そこから肘折温泉を経由して山形に向かうというルート。

前回の設定ルートにも築108年という年季の入った芝居小屋、康楽館や、日本三大銅山の街として栄えた秋田県小坂町の鉱山事務所、スバルのラッセル車などが置いてある博物館など見学するアトラクションがあった。スバルは「三大」とか、三に拘るのが好きなのか、今回は出羽三山神社の見学がその行程に含まれていた。

出羽三山神社とは、出羽神社、月山神社、湯殿山神社の3つ。このうち出羽神社には、三神合祭殿という3つを束ねた祭殿があって、ここをお参りすると3つの山すべてのご利益を授かることができるという有難い神社があるのでとりあえずはそこに行くことに。でもその前に酒田には、即身仏を安置したお寺があるというので、先にそこに行こうということになった。残念ながら即身仏見学は時間が早すぎて断念。近くにあった松尾芭蕉の銅像の見学で終わってしまった。それにしても松尾芭蕉、よくぞこの地まで歩いてきたものだ。ものすごい健脚である。

◆リアルワールドでの雪国総合性能で重要なヒーターは


中継地点の肘折温泉までは『フォレスター』でのドライブ。ブリヂストンのスタッドレスタイヤを装着したシンメトリカルAWDということもあって、雪さえ積もっていれば本当に頼もしい走行性能を発揮してくれる。ただし、氷はダメだ。途中ヒヤッとした場面に遭遇したが、刻々と変わる路面をきちんと把握するのはドライバーの仕事であることを痛感させられた。無事で通過できたのは出羽三山神社をお参りした御利益だったのだろうか。

有難かったのはシートヒーターならびにステアリングヒーターである。今や、シートヒーターを標準装備するクルマはかなり多くなっているが、フォレスターの場合、座面のみならずバックレストにもそれが仕込まれているようで、快適極まりない。それにステアリングヒーター。立ち上がりが早いからすぐにぬくもりを感じる。冬のコールドスタートで何が嫌かって、冷たいシートに腰掛けることと、これまた冷たいステアリングを握ること。寒がりの僕にとって、こいつは相当な苦行なのだ。

もう一つはヒーター。吹き出し口が工夫されていて、中央のみならず、足元全体が温まるようになっている。これが、リアルワールドでの雪国総合性能の一端である。というわけで寒冷地での室内の快適具合は、抜きん出ているといって良い。

◆山形で生まれる高級酒、その酒蔵へ


肘折温泉ではドライブの疲れを癒してください、と温泉に入ることも可能だったのだが、行った先はあいにく清掃中とのことで断念。昼食の後は『XV』に乗り換えて山形市までのドライブだ。後半の立ち寄りスポットとしては銀山温泉があった。しかし、お酒好きの僕としては折角山形にまで来て、是非見てみたい酒蔵があったので、ペアを組んだ相棒に無理を言って、とある酒蔵に。

お酒好きはご存知だろうが山形産のお酒は近年とみにその人気が上昇している。県も積極的に後押しし、初めて県単位で地理的表示保証制度「GI」(Geographical Indication)の指定を受けたのが山形である。この制度、フランス・シャンパーニュ地方で生産する発泡性のワインに限って「シャンパン」と呼べるのと同じように、地域の特徴を持ち一定の基準に達している優れた産品に対して、地域名を名乗ることを許可し、国が保証する制度である。そんなわけで、山形にはいわゆる高級酒が多い。

◆XV e-BOXERのスポーティな走りが光る


その代表格である十四代を作る高木酒造にお立ち寄り。ここでお酒が買えるわけではないが、記念にXVの写真を撮ってきた。XVの方はフォレスターに比べたら、より都会的というかスポーティな感触を残した走りが出来る。

XVの方はモーターを備えたe-BOXERである。今回特にこのe-BOXERが良いと感じたのは発進のスムーズさだ。出始めはモーターがアシストしてくれて、そこからガソリンエンジンへと切り替えてくれるのだが、この動きがμ(ミュー:摩擦係数)の低い雪上には実に適していて走り易い。雪深かった山を下りてしまうと、すっかり雪はなくなりドライ路面が顔を出していたが、こんな時にXVのスポーティな走りが光った。

結論から言って、スバルが極めて寒冷地に強いことは良く分かった。今度は夏の暖かいところでどんな高性能を発揮してくれるのか、そんなツアーを企画してもらいたいものである。

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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