ホンダ インサイト 新型《撮影 雪岡直樹》

1999年に登場した初代『インサイト』は2ドアの実験車的な風貌。2代目は車両価格が189万円からという、手が届き安い価格帯にしたことでハイブリッドカーを一般に広めたが、3代目は上質なセダンとして登場した。

◆もはやライバルはマツダ アテンザ



いや、スタイリングに対する個人的な印象は、まるで4ドアクーペのようなスタイリッシュなモデルに進化したと感じた。4ドアながら低くリヤに向かって流れるルーフのシルエット、フロントグリルとフェンダー周りは彫刻的な造形を施すことで、フロントフードが低く構えた姿に見えるあたりがいい。

一方で、インテリアは高級セダンのように座り心地のいいシートを設定。インパネ周りは豊かな造形で描かれているほか、職人の手仕事を思わせるステッチが施されているこだわりよう。2代目インサイトは『プリウス』がライバルだったが、今回のインサイトはもっと格上の存在であることを主張しているかのようにも感じられる。内外装のしつらえ、力強い走りを含めて考えてみても、もはやライバルはマツダ『アテンザ』といえるのではないだろうか。

◆車重の重さに振り回されるようなネガは感じさせない



パワーユニットは、1.5Lエンジンに、『アコード』『CR-V』『オデッセイ』『ステップワゴン』に搭載されている2モーターのハイブリッド。一般道では滑らかに走り出してみせるほか、いざ踏み込めば、モーターが分厚いトルクで車体をグイグイ前に押し出すほどのインパクトを与えてくる。操縦性にも優れており、ハイブリッド車特有のモーターやバッテリーを搭載している車重の重さに振り回されるようなネガを感じさせず、車体の動きはスムーズで、気持ちのいいハンドリングを楽しませてくれる。

後席はハイブリッド用のバッテリーをシート下に配置しているが、身長180cm程の長身の男性が座れるだけのヘッドクリアランスを備えている。その上で、荷室は広く確保され、後席を倒すと、長尺物が積めるトランクスルーまで実現。セダンとして日常使いをする上ではフラストレーションを感じにくそうだ。

環境性能は当たり前。その上でセダンとして求められる居心地の良さとスペースユーティリティを確保し、力強いパフォーマンスで走りを楽しませてくれる。女性の私の目にはスーツ姿の男性をスマートに演出してくれる男前な一台に映った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

藤島知子|モータージャーナリスト
幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年からワンメイクレースに挑戦。市販車からフォーミュラカーに至るまで、ジャンルを問わず、さまざまなレースに参加している。2007年にはマツダロードスターレースで女性初のクラス優勝を獲得した経験をもつ。現在はクルマの楽しさを多くの人に伝えようと、自動車専門誌、一般誌、TV、WEB媒体を通じて活動中。走り好きの目線と女性の目線の両方向から、カーライフ全般をサポートしている。COTYの選考基準は、クルマと共に過ごす日常において、気持ちを豊かにしてくれるクルマかどうかに焦点を当てる。

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