ボルボ 新型 V60(VOLVO V60)《撮影 中野英幸》

◆「ヨーカンの箱」は昭和の化石

車内空間だの横からの衝突安全性だのと大義名分をかかげて横幅が肥大化していく流れのなかで、あえて絞り込んできた『V60』である。日本市場の希望を汲んだというけれど、世界戦略車だもの、さすがに欧州やその他の国でも「どこまでデブになるのよ?」という声があったであろうと思われる(推測)。

横幅1850mm。けれど、伸びやかなボンネットフードと(エンジン見るとき開けるやつ)、印象的なヘッドライトで低く抑えられた雰囲気のフロントマスク(いわゆる“顔”)で、ぱっと見た感じでは、もっと幅があるように見える。クルマ全体のスタイルは優雅でなめらかで、ちょっと、いや、かなり色気あり。「ボルボは走るヨーカンの箱」と書いていた事実は(すいません、なんて失礼な書きっぷり)、ずっと昔の昭和の化石である。

◆居心地のよさと、ひたひたと伝わる安心感


2016年に登場した『XC90』以降、ボルボはインテリアや使い勝手のコンセプトを一新させた。長年培ってきた安全へのこだわり、スイッチ関係の配置を変えるのには勇気のいったことだと思うけれど、こうしてV60の運転席に座ると、居心地のよさと、ひたひたと伝わってくる安心感があり、一新させるにあたり、どれほどの研究と議論が重ねられてきたかがよくわかる。

残念なのは、高性能カーナビゆえETC2.0や警察の光ビーコンをキャッチしたとき、情報が画面全体に表示されて地図が見えなくなることだ。ナビの中身は日本製なのだが、日本のこうした情報システムは本国になかなか聞き入れてもらえないらしい。

◆なめらかで上品で、やさしい


試乗車は、2リットル+ターボ。1500回転から最大トルクが出るということは、アイドリング状態からアクセルペダルに右足の自重がかかったくらいで力強く加速していく。それを8速ATがつないでいくのだが、なめらかで上品で、とんがったところがなくて、とてもやさしい。でも、ここぞというところでアクセルを踏み足すと期待どおりに動いてくれて頼もしい。

ハンドルを握ると人が変わるというけれど、本当はその人の本性が出るらしい。V60に乗ると、こんな私でも、ほんとは穏やかでやさしいという本性を引き出してくれる、かも。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

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