ヤマハ NMAX125《撮影 清水知恵子》

◆可変バルブ機構が活きるイメージ通りの加速

さすがはヤマハ「MAXシリーズ」の末弟。ヨーロッパでも大人気のスポーツコミューター『TMAX530』譲りの精悍なスタイルだけでなく、クイックなハンドリングで車線変更もキビキビ。

コーナーでもイン側に荷重を掛けると、スッと車体が曲がりたい方向へ寝ていき、ノーズから向きを変えていく。剛性の高い車体と前後13インチの足まわりがバランス良くマッチし、車体の動きは軽快そのものだ。

エンジンは水冷SOHC4バルブ。右手のスロットル操作にきっちり応答し、信号待ちの停止状態からの加速も鋭い。市街地を流しているときも、中高回転域がしっかり伸びるから余裕を持ってクルマを追い越していける。

125ccながらイメージ通りに加速してくれ、全域で決してもたつくことがないのは、可変バルブ機構(VVA)を備えているところが大きい。6000回転までは低速向けのカム、そこからは高速向けカムに切り替わり、吸排気量を適時最適にしているのだ。

実際に乗ってみて、VVAの切り替わる瞬間は分からない。スムーズに切り替わるよう味付けされ、低速ではトルク感と燃費、高速では伸びが重視されている。

ピストンをアルミ鍛造製とし、オールアルミ製ダイキャストシリンダーを採用。「BLUE CORE(ブルーコア)」と名付けられたこのエンジンは、走りの楽しさと燃費・環境性能の両立を高次元で達成。小排気量エンジンに可変バルブといったコストもかかる機構を組み込むとは、激戦化するカテゴリーでライバルに負けられないというヤマハの強い意気込みを感じずにはいられない。そんな心意気がレベルの高い走りを生み出し、結果的に走っていて楽しいのだ。

◆フレーム剛性やブレーキにこだわり、軽快な走りを実現


ダイレクトなハンドリングは車体の剛性が充分にあるからで、旋回中の捻りを抑えている。スクーターの場合、特にヘッドパイプ周辺の剛性が足りないとコーナリング中にフレームが頼りなくよれがちだが、NMAXではその傾向は見られない。開発陣が充分に対策を講じた結果である。

そして街乗りしていて、安心材料となるのが性能の高いブレーキ。スクーターではリアブレーキをドラム式とすることが多いが、ディスク仕様とし制動力とコントロール性を高いレベルで確保した。さらにABSも搭載し、安全性を高めているから安心してブレーキレバーを強く握れる。

混雑した市街地もスイスイ行けるのは、ハンドル切れ角が大きいことが貢献した。これは主な仕向け地であるアセアンで活躍できるようにした結果。というのも東南アジア諸国では渋滞が日常的で、クルマとクルマの間を縫うように走る。その機動性の高さは、日本のストリートにおいても有利に働く。

フル液晶のデジタルメーターはシンプルだが、文字盤が大きく本来の機能をきっちり果たす。レンズは角度や表面処理にこだわっていて、写り込みなどで見えずらくならないよう配慮された。都会の走行は忙しないが、瞬時に目線移動するだけで必要な情報が得られる。デザインも今どきと言っていい。

ライディングポジションは人間工学に基づいた疲れにくいもの。ステップは足がはみ出しにくいよう広く確保され、両足を前方に投げ出してリラックスして乗ることもできるし、真下に降ろしてスポーティに走ることも可能とした。自由度が高いから、長い距離を乗っても疲れが少ない。普段は街乗り、休日は郊外へ出掛けるのも楽しいだろう。

◆1ランク上を求める大人もナットク!


スタイルはスポーティさが際立つもので、ブーメラン状になったフロントカウルのパネルカバーはMAXシリーズのアイコン。ヘッドライトはLED式で、ロービーム時は左右の2眼がポジションランプとともに点灯し、ハイビームにすると中央も光ってトリプルライトとなる。

価格は税込み35万1000円で、もっと安く買える原2スクーターはあるものの売れ行きは好調。選んでいるのは、チープなスクーターでは満足できないという大人のライダーなのだろう。

シートには上質なレザー調の表皮が使われているし、ボディの樹脂パーツも質感が高い。フロントボードなどスクーターの黒いところは塗装が施されておらず、すぐに焼けて白くなりがちだが、NMAXはそうではなさそうだ。

ウインカーはクリアレンズで、LEDが帯状にレイアウトされたテールランプといい、先進的かつ被視認性を高めたもの。パッと見でも、細部をじっくり見ても、125ccスクーターだからといった妥協は感じられない。

走りも軽快でスタイリッシュ、そして1ランク上を求める人たちも納得させる上質感。NMAXが売れる理由は、見て触れて乗れば、すぐにわかる。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある

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