キャデラック エスカレード 新型撮影 中村孝仁

◆アメリカの個性を象徴している

4年前、お洒落なニューヨークのソーホーにヘッドクォーターを移したキャデラック。しかし4年経った今、彼らは再び古巣のミシガン州ウォーレンに、その本拠地を移す決断をしたそうだ。

キャデラックは、言わずと知れたGMのトップブランド。そしてその最高峰のSUVとして君臨している『エスカレード』は、文字通りアメリカンセレブリティーに愛されているクルマである。本拠が戻された理由は、よりアグレッシブな新車導入や、次世代技術の開発を強力に推し進めるため、と言われている。

正直なところ、近年作られているアメリカの自動車は、明らかにグローバル化してアメリカンとしての個性に乏しいと感じていたが、このエスカレードだけは別次元の存在で、そのサイズ感や成り立ちそのものが、まさにアメリカの個性を象徴している気がしてならない。

勿論、単なる郷愁にとらわれてそのようには言っているわけではなく、真にアメリカ的だと思うからである。単にデカいからアメリカ的というのはあまり当たらず、例えば『レンジローバー』のロングホイールベース版はエスカレードよりも長いし、さすがに幅2m越えは少ないが、1900mm台はざらにあるこのご時世、エスカレードを飛び抜けて大きいとは言えないのである。

◆ピックアップとの共通点と相違点


ボディオンフレーム構造である。この構造自体は稀少になりつつあるが、それでもメルセデスベンツ『Gクラス』は依然としてこの構造を持つし、我が国のトヨタ『ランドクルーザー』、さらにはレクサス『LX』もこの構造だ。とにかく頑丈に作れるという点が大きなメリットで、一方で重くなったり、重心が高くなったりといったネガ要素もある。アメリカのフルサイズSUVがこの構造を取り続ける大きな理由は、一番売れているピックアップトラックとその構造を共有でき、コストを抑えることが出来るためである。

何しろものによっては、年間で80万台も売るピックアップが存在するほど、アメリカはピックアップ大国。パーツを共有できればコスト削減は相当なものだ。とはいえ、エスカレードの構造がピックアップとまるで同じかというと、それは間違いで、例えばサスペンションはトラックがリーフスプリングをリアに用いているのに対し、エスカレードはコイルスプリングが使われるなど、静粛性や乗り心地などの面で大きな違いを見せる。

また、シャシーとボディはゴムブッシュを介して接続されているのだが、これは振動数の違いを生んで乗り心地には不利と言われているが、近年はその進化が著しく、乗り心地の面では異次元と言っても過言ではないほどの進化を遂げている。

現行エスカレードは2015年に誕生したもので、すでに4年が経過しているモデルだが、毎年何らかの改良が行われるのがアメリカ車の常。ちょっと乗らない間にまた良くなっていた。

◆大味だが乗り心地が良い


具体的に良くなったと感じたのは、乗り心地である。基本はデビュー以来変わっていない。しかし、常に細かい見直しがなされているのか、路面から入力されるはずの突き上げ感などはほぼ皆無。凹みにタイヤを落とした時などに伝わるショックも最小限だ。何より、モノコックの場合、こうした状況ではボディ全体に揺れが伝わり、言い方を変えればそれがソリッド感という表現になるのだろうが、ボディオンフレームの独特な乗り味は、それとは無縁。ものによってはボディに全く伝わらない振動すらあるといって良い。

そんなわけで、フィーリングとして独特な大味さは残るものの、細かい常に揺すられるような振動は皆無で、かつ大きな入力はほぼ完全に往なしているから、全体として乗り心地は非常に良い。

エンジンは6.2リットルのV8である。今となっては確かに大排気量だが、マツダのエンジン設計のボス、人見光夫常務執行役員によれば、大排気量を低回転で回した方が燃費には有利だという考えもあるので、単に大排気量を悪者扱いするのもいかがなものか。それにOHVながら、今や可変バルブタイミング機構すら備えているのだ。

そのV8、さすがにパワフルである。驚くほどではないが、腹の底に染み渡るV8サウンドを聞かせてくれるのも醍醐味。ただし普段静かに走る時は完全に黒子に徹している。

試乗車は2-2-3という3列シートレイアウトを持つ。2列目シートはキャプテンシートが配置され、快適そのもの。さすがに3列目は床が高く、シート自体も平板に出来ているので、大人が座るにはきつい。あくまでエクストラという存在である。

エスカレードはやはり独特な世界観を持つ個性豊かなSUVで、他のアメリカンSUVを比較するならともかく、ヨーロッパの大型SUVとは完全に一線を画す、これぞアメリカンを感じさせてくれるモデルである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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