アウディ A8 60 TFSIクワトロ《撮影 諸星陽一》

昨年の東京モーターショーでも話題となったアウディのフラッグシップセダンとなる『A8』がついに日本に上陸した。

モーターショー当時の最大のトピックスは「レベル3」の自動運転。今回のA8ではレベル3自動運転は作動していないが、それを可能にする各種のデバイスはそのまま。それがA8のドライビングをイージーにしてくれている。

◆意外なほどに小回りが利く

世界的にクルマはどんどん大きくなる傾向にあるがA8もその例に漏れず、全長×全幅×全高は5170×1945×1470mmとかなりの大きさだ。試乗会場となった旧軽井沢は有名な避暑地とは言え、明治から開発が行われた土地だけに狭い道も多い。2mに届こうかという全幅はさすがに持て余すかと思ったが、これが意外なほどに小回りが効く。

それを可能にしているのが、ダイナミックオールホイールステアリングと呼ばれる4輪操舵システム。低速時は逆位相にステアする方式で、未装備時に比べて0.5mの回転半径短縮を実現しているという。各種センサーの助けもあり、緊張しながらではあるが、狭い裏道もクリアできる。

◆サイズ、車重を感じさせない走り

片側1車線の道路に出ると、今度はアクティブレーンアシストが運転をイージーにしてくれる。走行中はつねに車線の中央を維持するように動作してくれるため、あまり気を遣わずにドライブが可能。大きなクルマは安心感も、ゆったり感も魅力的なのだが、それにともなう緊張感も受け入れないとならないのが通常。しかしA8はこの車線維持装置のおかげで安心してクルマを走らせることができる。

460馬力、660Nmのスペックを誇るV型8気筒4リットルは、必要十分するぎるほどのスペック。A8は車重を2トンを超えるクルマだが、その車重をものともしないエンジンの性能。ワインディングでもその車重を感じさせないスポーティな走りを披露する。登坂車線のあるワインディングの上りでは、左に寄って道を譲るクルマを横目にまったく力不足を感じさせずに上っていく。

◆スポーティさと重厚感の両立

さらにはそのハンドリングのスポーティさも特筆もの。2トンのセダンとは思えないほどグイグイと走っていける感覚には感動を覚える。このハンドリングを実現しているひとつの要因のひとつが、小回りにも関係していた4WS。日産のスーパーHICASのようにいったん逆位相に切ってクルマの向きを積極的に変え、その後に同位相として安定感を増すという方式で、この動きが2トンという重いA8にスポーティな走りを与えている。

また2トンという重さがどっしりとした安定感のある走りも実現している。スポーティさとどっしりさの両立という走りが両立できているのもアウディA8のいいところ。こうしたフィーリングは今の国産車では味わえないもの。独特の魅力がアウディA8には存在している。

アウディA8の価格は試乗した「A8 60 TSFIクワトロ」が1510万円、ベースグレードの「A8 55 TSFIクワトロ」でも1140万円、ロングホイールベースの「A8L 60 TSFIクワトロ」だと1640万円という価格。オススメ度の★の評価は金額を考慮しないものとしている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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