アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》

アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)はインドネシア国際モーターショー(GIIAS)2018で、2台のコンセプトモデルを初公開した。その1台、『アイラ・ターボコンセプト』は、同社のデザインとエンジニアリングの能力を示すショーケースだ。

かつてのダイハツ『シャレード・デ・トマソ』を思わせる、レッド/ブラックのツートーンカラーが印象的なアイラ・ターボコンセプト。しかしこの車両はドレスアップ提案や、たんなるスポーティグレードの提案ではない。ADMのデザイン部門とエンジニアリング部門が共同で手がけたスタディモデルだ。

デザイン部門によるスタイリングのコンセプトは「Thrilling Simplicity(スリリング・シンプリシティ)」というもの。「最小限の付加要素で、最大のスリルを」という方向性に沿って、フロントエンドはノーマルモデルの雰囲気を残しつつエアロダイナミクスを考慮した造形にされている。実際にはラジエーターの前にインタークーラーを追加するためにオーバーハングを拡大しているのだが、違和感はまったくない。バンパー左右にある三角形の開口部はブレーキ冷却用のエアインテーク。

前後フェンダーは左右20mmずつ拡幅されているが、ドアはノーマルのままでフェンダーとの境界にわずかな段差を持つ。これはこれ見よがしにワイドトレッドを主張するのではなく、ロードカーとしてのたたたずまいも重視しつつ、スポーツ走行に必要なグリップを確保しようとした結果だ。「フェンダー形状にダイナミックさは必要ですが、過剰な表現にはしたくありませんでした。だからドアの見切りで断ち切られる造形にしています」と語るのは、ADMのチーフデザイナー、マーク・ウィジャヤ。

「このプロジェクトの基本として、ルイス・サリヴァンの“形態は機能に従う”という言葉を掲げました」とウィジャヤ氏。ホイールが15インチとショーモデルとしては控えめなのも、これに従った結果だという。「見た目だけでスポーティさを演出するなら、もっと大径にするところです。でもこの車両は、実際にスポーツ走行できなければいけません。車両のサイズやスペックを考慮すると、このサイズが適正なのです」とのことだ。

ちなみにエンジンは直4で、1.2リットルという排気量はそのままに、ターボとインタークーラーの追加で88ps から200psへと大幅なパワーアップを実現。最大トルクも108kgmから242kgmに増加している。キャビンには本格的なロールケージを組んでいるほか、シャシーにも手を加え、サスペンション取付部を補強するなどしているという。

しかし「実はまだ開発途上なんです」とウィジャヤ氏。ブレーキ強化やペダル位置の最適化、エンジンチューニングの最適化などはこれからなのだという。スタイリングと性能それぞれが目標を達成し、両者がバランスすることではじめて、アイラ・ターボコンセプトのデザインは完成するのだ。

なお同社のブースにはもう1台のコンセプトカー、『ブーン・アクティブバージョン』も展示された。こちらは内外装のドレスアップを中心とした提案で、昨年の東京モーターショーで公開された『DN TREC』でも多用されていたハニカムパターンを大胆にあしらっている。

ダイハツ関係者によれば、アイラ・ターボコンセプトとブーン・アクティブバージョンの2台とも「企画立案も開発も、ADMが主体となって進めました。日本側としては、サポートを少ししただけです」という。「インドネシアの若者たちに刺激を与え、コンパクトカー市場の活性化に繋げられるといいですね」とのことだ。

アイラ・ターボコンセプトのイメージスケッチ エクステリアの変更部位を示す アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 アイラ・ターボコンセプト《撮影 古庄速人》 ダイハツ・アイラ(特別仕様)《撮影 古庄速人》 ダイハツ・アイラ(特別仕様)《撮影 古庄速人》 ブーン・アクティブバージョン《撮影 古庄速人》 ブーン・アクティブバージョン《撮影 古庄速人》 ブーン・アクティブバージョン《撮影 古庄速人》 ブーン・アクティブバージョン《撮影 古庄速人》