ホンダ クラリティPHEV《撮影 岩貞るみこ》

PHEVと聞いて想像するのは、HVだけど充電すればEVで走れる距離が長くなりますよというもの。だけど『クラリティ』は違う。もうこれはEVだ。だって、ずーっとEVで走るんだもの。一回の充電でEVのまま走れる距離が長いのはもちろんだけど、アクセルをぐぐっと踏み込んだってエンジンがかからない。

通常ここは表記の正確性を重んじて「かかりにくい」と書くところだが、いや、ほんとにかからないんだってば。ホンダではご丁寧に「これ以上アクセルペダルを奥まで踏んだらエンジンがかかります」と伝えるために、アクセルペダルの踏み込みに応じてコンと足裏に伝わる仕組みを採用しているけれど、市街地でも首都高速でも、そこまで踏むシーンはほとんどない。

そもそもEVなので速度ゼロからの立ち上がりが早く、時速40kmなんて、あっという間に到達するのだ。エンジンをかけようとして、さらにアクセルペダル踏みんだら、超下品な運転になってしまう。

とはいえ、加速感はいいのに気持ちいい走りだと思えないのはなぜだろう。理由は3つ。

ひとつは、ハンドルの重さ。かなりずっしり感があり市街地で交差点を曲がるときに腕力がいる(すみません、か弱いもんで)。

ふたつめは音。エンジン音はしないけれど、高速では風切り音やロードノイズが目立ち、なんとなくざわざわする。

3つめは、ノーマルモードからスポーツモードに入れたときのメリハリの乏しさ。ホンダなんだもの、スポーツモードにしたらもっとどかーんとEVらしい加速感を演出してほしかったなあ。

けれど、それ以前にクラリティには大問題がある。デザインである。これをよしとする感覚がさっぱりわからない。いや、デザインは好みの問題だ。ここは私の感覚がずれていると譲るとして、許せないのは内装である。

ドアポケットは、プラスチックのちゃちさを前面に押し出したセコさ。グローブボックスを開けたときに感じるがっかり感、使い勝手の検証はしたのかと腹立たしさを感じさせるドリンクホルダー。500万円を超えるクルマでよくぞここまでケチれたものだと情けなくなる。

走りはいいのに、内外装のデザインやあしらいとの落胆のギャップに、ふと中学生時代を思い出した。クラスにひとりか二人、すごくアタマがいい秀才がいたけれど、私服姿は超絶ださくて彼氏には絶対したくないと女子が囁きあったものだ。ああ、勉強一筋なんだなあ。しかし、中学生はそれでいい。恋の季節になればかっこよく変身してくれることだろう(期待)。

でも、クルマはそれじゃ、ダメだと思うんだよね。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

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