マツダ・ロードスターRFプロトタイプ《撮影 吉田瑶子》

1989年夏にデビューし、オープン・スポーツカー市場をけん引してきたのがマツダの『ロードスター』だ。その4代目は「人生を楽しもう」をコンセプトに、2015年春にベールを脱いでいる。そして16年12月、電動格納式ルーフを搭載したロードスターRF(リトラクタブル・ファストバック)を仲間に加えた。これ以降もロードスターは定期的に商品改良を行い、「人馬一体」の気持ちいい走りに磨きをかけている。

もっとも新しい商品改良は18年6月だ(発売は7月26日)。パワーユニットを進化させ、今まで以上に人馬一体感を高めた。また、カラーコーディネーションの深化を狙い、ソフトトップに「キャラメル・トップ」(特別仕様車)を、インテリアカラーにはオシャレなスポーツタンを追加している。それだけではない。安心して運転を楽しむための環境づくりにも熱心に取り組み、全機種「サポカーS・ワイド」対応とした。これは高く評価できることだ。ステアリングにテレスコピック機構が加わったこともニュースにあげられる。

ロードスターRFは、2.0リットルのPE-VPR型直列4気筒DOHCエンジンに改良のメスを入れた。手を入れたのは、吸気系を筆頭に、シリンダーヘッド、ピストンやコンロッドなどの回転系パーツ、排気系、マフラーまで、多岐にわたっている。全域でトルクを太らせるなど、高性能化を図っているが、相反する燃費と環境性能も向上させた。最高出力は158ps(116kW)から184ps(135kW)6000rpmに、最大トルクも20.4kg-m(200Nm)から20.9kg-m(205Nm)に引き上げている。26psのパワーアップだが、その要因となっているのは許容回転数の上乗せだ。最高出力の発生回転は、これまでの6000回転から7000回転に高められた。ちなみに回転限界は6800回転から7500回転と、700回転も高い。



◆クローズドコースで新旧比較

試乗したのは、量産前の最終プロトタイプ、しかもステアリングを握ったのは伊豆にあるクローズドコースだ。幸運だったのは、マイナーチェンジ前のロードスターRFも用意され、比較することができたことである。

最初は6速ATを積むロードスターRFを交互に乗り、フィーリングをチェックした。低回転域では違いを感じ取れない。が、アクセルをジワッと踏み込んでいくと、3000回転あたりで気になったトルクの落ち込みがなくなったことが分かる。今までより実用域のトルクが太くなった印象で、勾配のきつい上り坂も力強く駆け上った。これまではキックダウンさせても加速に物足りなさを感じる場面があったが、この弱点が解消されている。

また、高回転のパンチ力と伸び感も違う。今までは5500回転あたりでパンチがなくなり、苦しそうだった。が、新型はATでも6500回転オーバーまでストレスなく回り切る。それでいてフラットなトルク特性だから低速走行を苦にしない。アクセルをゆっくりと開いても気持ちよくスピードを上げていく。エンジン音もかなり違う印象だ。音圧を高める味付けとしているから、低回転から重低音を強調した心地よいエンジンサウンドになっている。



◆走りの楽しさが増した6速MT

本命の6速MT車は、高回転を使っての走りがさらに楽しくなった。3000回転から少し上のゾーンでトルクの谷がなくなり、4000回転を超えたあたりからパワーとトルクが気持ちよく盛り上がる。タコメーターの針は7000回転まで一気に跳ね上がり、アクセルを踏み込んだときの音色も耳に心地よい。高回転の伸び感、刺激性は6速AT車を大きく凌ぎ、変速フィールも絶妙だ。2速、3速の守備範囲が広がったからワインディングロードの走りは楽しさを増した。

チルト機構に加え、テレスコピック機構も装備されたからドライビングポジションはピタリと決まる。大柄な人でもフィットするし、ペダルも操作しやすい絶妙な配置だ。

ダブルウィッシュボーンとマルチリンクのサスペンションに変更はない。が、ステアリングを握ってみると、ハンドリングはより正確になった印象を受けた。今まではGT的な味わいが強いと思っていたが、新型はステアリングを切り込んだときの応答フィールがさらに洗練されたように感じる。身のこなしは軽やかで、回り込んだコーナーでも狙ったラインにたやすく乗せることが可能だ。

先進安全装備も加わり、走りを進化させた最新のロードスターRFは、幅広いユーザー層をとりこにする。同時に商品改良を行ったソフトトップの1.5リットルモデルは試乗していないが、次の試乗が楽しみになってきた。



片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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