MTシリーズと安田主事(右)、片平デザイナー《撮影 古庄速人》

日本流行色協会(JAFCA)が毎年、最も魅力的な車両のカラーデザインを選ぶ「オートカラーアウォード」。20回目となる今回は12月16日、横浜美術館(神奈川県横浜市)で最終審査がおこなわれ、ヤマハ『MT-10 / MT-09 / MT-07』のカラーリングがグランプリに選出された。

グランプリに選ばれた色は「ブルーイッシュグレーソリッド4」、そしてアクセントカラーの「アシッドイエロー」のコンビネーション。車種ごとに設定された色彩ではなく、MTシリーズとして展開されるカラーリングの受賞となる。

審査員は、タイヤに注目させるという発想が、新しく自由な印象を受けたという。そして「マーケットを意識しすぎず、デザイナーが自分の意志でその常識をくつがえした」ことを高く評価し、授賞したとのこと。

「新しい色彩調和に挑戦したデザインは、20年という節目を迎えた今回のオートカラーアウォードに相応しいといえる。今後もこれまでの殻を破り、次の時代をつくっていくようなカラーデザインに期待していきたい」としている。

では、このカラーリングはどのような理由で生まれたものなのだろうか。MTシリーズのコンセプトデザインを担当するヤマハ発動機デザイン本部・プロダクトデザイン部デザイン企画グループの安田将啓 主事は「街のなかでどう使っていただくか、どう目立つかというところに立ち返ると、このカラーが映えるんじゃないかと思いました」と振り返る。

背景には、MTシリーズのそもそものキャラクターがある。「ツーリングに出かけて別の世界へ行くというのではなく、普段生活している街のなかでもっと楽しむためにコンパクトにして扱いやすくしたり、ストップ&ゴーでも楽しめるように低速でのトルク感といったものにフォーカスしています」と安田主事。

こうした日常感の中で「 ちょっと、いままでとは違うところに跳ぶ」ことがポイントで「世の中にまだないものを生み出そう」と考えた結果、強いコントラストを見せるカラーコンビネーションを着想したという。

実際のカラーデザインを担当したGKダイナミックス動態グラフィック部の片平憲男デザイナーによれば、イエローの採用は既存製品であまり使われていない色相を使いたいと考えた結果だとか。そしてこれを「いかに鮮やかに見せるか。高品質感の表現よりも、彩度を上げるということにトライしてきました」とのこと。

同時に、ブラック塗装のメカ部品を美しく見せるタンクやシュラウドのグレーとあわせて、色を決めていったと説明する。新型車のカラーリングではなく、すでに発売されている車種シリーズのために開発するということで「いろいろな部分の調整を繰り返して実現できました」と片平デザイナーは振り返っている。

ヤマハ発動機のデザインスタッフと審査員《撮影 古庄速人》 ヤマハMT-10 ヤマハMT-09 ヤマハMT-07