ホンダ ステップワゴン スパーダ「ハイブリッドG・EX」撮影 中村孝仁

ファミリーミニバンの御三家と呼んで過言ではないのが、トヨタの『ノア/ヴォクシー』、日産・『セレナ』、それにホンダ『ステップワゴン』だと思う。

現行ステップワゴンがデビューした時、他のライバルとは異なる戦略を取り、ハイブリットの設定がなく、代わりにダウンサイジングターボというアプローチで市場に挑戦した。2年たってその結果はというと、残念ながらホンダの目論見通りに市場が動かなかったということで、2年を経てホンダもハイブリッドの設定に動かざるを得なかったのだという。

勿論、ダウンサイジングターボが失敗だったというわけではないし、それなりに評価も得ているのだが、これはインターネットが発達した現状が成せる技なのか、他メーカーのハイブリッドモデルが1.8リットルや2リットルエンジンとの組み合わせで、多くの場合どうも2リットルというキーワードで検索をかけると、1.5リットルエンジン搭載車はその網に掛かってこないようなのである。

そうしたこともあって、今回は2リットルエンジンにハイブリッドを組み合わせた。ちなみにハイブリッドを設定したのは「スパーダ」だけで、ノーマル・ステップワゴンには設定がない。その理由として考えられるのは、現状ステップワゴン販売の8割がスパーダなのだそうで、今回のマイナーチェンジでもエクステリアの変更を受けたのはスパーダだけ。ノーマルステップワゴンは現状維持である。しかし、スパーダだけがさらなる進化を遂げ、おまけにハイブリッドも設定されるなど大いに商品力をアップしていくと、ただでさえ低い販売比率のノーマルがますます売れなくなる悪循環に陥るのではないかと心配するのは僕だけなのだろうか。しかも後述するが、その走りにも明らかな違いがあるのである。

今回のハイブリッドはホンダが「スポーツハイブリッド」と称する2モーターのi-MMDで、既に『オデッセイ』に搭載されて市場デビューしているものだ。性能的にはシステムトータルで215ps。強力なモーターは単体で184ps、315Nmを誇る。この数値からホンダでは3.5リットル車並みの走りと謳っていたが、それはちょっと盛り過ぎ。でもまあ走りはなかなか活発である。

試乗車はスパーダの中でも最上級グレードとなる「ハイブリッドG・EX」。実はこのグレードだけ、パフォーマンスダンパーと呼ばれる、アクスル系の左右をダンパーで繋ぐ機構が標準装備されている。これ、その効果が顕著で、付いていないものと乗り比べると、ボディ振動の出方が明確に異なる。設定は今のところ最上級機種だけ。他のグレードにはオプション設定すらない。せめてオプションにすればよいのにと思ったものだが、聞くところによると、相当にコストのかかっているもので、価格との兼ね合いからか今のところは設定できないとのことだった。

というわけで、このパフォーマンスダンパーの装備された最上級グレードはその乗り心地からして、他グレードとは明確に差があるのだから、無理してでも最上級車種を買う価値があるというわけだ。

ハイブリッドの燃費はJC08モードで25.0km/リットル。来年から記載が義務付けられるWLTCモードでは20.0km/リットルだ。ほーらね。そろそろJC08モードの信憑性のなさが露呈してきた。単純に2割以上減。これが普通にエアコン付けて特にエコ運転をしなければ、もっとずっと悪くなる。一般的には3割減と言われるが、現実にはもっとだろう。

このまやかしの燃費を実現している要素の一つが、CVTトランスミッションだと僕は思っている。CVTは確かにコンパクトに作れるが、ドライブフィールは最悪だし、設定できるギア比の範囲も限定される。それに、出来の良いステップATには最近燃費の面でも大きな差がなくなってきていると感じる。今回のモデルも、高速などで追い越しの際にアクセルをグイッと踏み込むと、エンジンが唸る唸る。それまでがEV状態だと、その差がとても激しく、えっ!? という感じになる。それもこれもCVTのせい。ステップATならこんなことはないはずだから、日本のメーカーはそろそろCVTの見直しをした方が良いと思う。

今回のスパーダは電動パーキングを備えたおかげで全車速対応のACCが装備されたことは大きな進化。と言ってもこれが付くのはハイブリッド仕様だけだから、ダウンサイジングターボは依然として継子扱いとなる。

変更内容、装備内容などを考えると、明らかにユーザーをハイブリッドに誘導している印象が強い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

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