トヨタ ランドクルーザー70《写真撮影 中村孝仁》

お前はゾンビか! と言いたくなるトヨタ『ランドクルーザー70』である。再々登場だそうだから、2度目の復活ということだ。

1984年に初登場してから今年で40年。それが新型車として蘇ったのだから、まあどうして?という素朴な疑問がわくのだが、実は海外ではずぅっと販売が続いていて、日本は特殊な事情?ということになる。だから再版された10年前と、今回のモデルはデザインも異なる。それに前回はガソリンの4リットルV6エンジンで、1年の期間限定発売だったが、今回は2.8リットルの直4ターボディーゼルエンジンで、どうやら発売期間は限定されないようだ。

10年ぶりに登場したモデルだが、とにかくこの種のモデルのユーザーは、変わることへの極端な拒否感があるのか、できるだけいじらずに進化させることが開発の大前提だったようだ。

実はジープ『ラングラー』のユーザーも、同じような要望をメーカーに出している。だから本当に変わらない。ランドクルーザー70の場合、10年前と違うのはヘッドライトが初代同様の丸形に回帰したこと。さらには数々の最新デバイスを装備したことなどが違うものの、そのための最小限の変更を除けば、まあ初代モデルにそっくりである。

◆「250」とほとんど変わらんじゃないか!
実は10年前のモデルには乗っていない。それ以前、即ち初代モデルには試乗した経験があるが、遠い昔のことでどんなだったかはすっかり忘れた。だから、比較対象としてちょうど良いのは、つい最近試乗した『ランドクルーザー250』である。あちらは8速ATを装備するのに対し、こちらは6速ATだから少し違うけれど、心臓は同じ2.8リットル直4ターボディーゼルだから、かなり印象は近いはずである。

というか、それ以前に基本が40年も前のクルマだから、さぞやクラシカルな雰囲気なんだろうなぁ(250と比べて)と思って乗ってみると、どうしてどうして。ほとんど変わらんじゃないか!もっとずっとヘビーデューティーで、優しくない乗り心地を想像していたのだが、見事に裏切られた。

250とほとんど変わりない快適さを提供してくれる。それにレンジローバー並みのコマンドポジション(サイドウィンドーの下側の位置がちょうど肘を載せられるあたりにある)だから、明るくて見晴らしも良くて解放感がある。この点は250よりも好ましい。

一方で古さを感じさせるのはステアフィール。まさに昔のクロカン四駆そのもので、中心付近は全く持って頼りないから、ちょっとぐらいハンドルを左右に振ってもクルマは何事もないかのように直進するし、低速で角を曲がるような場合は、セルフアライニングトルクが働かないので、ちゃんとドライバー自身でハンドルを戻してやる必要がある。

それに直4ディーゼルはやはりかなりの振動を伴い、クルマが止まる直前にはコラムごとハンドルをぶるぶると震わせる。アイドリングストップなんていう気の利いたものは付いていないから、信号待ちは常にこのぶるぶるを感じながら過ごさなくてはならない。

◆「250」よりも200万円以上安い
装備関係は、旧さと新しさが混在したまさにハイブリッド状態。メーターは40系のデザインを模したというアナログと、その隣に小さなディスプレイ表示で瞬間燃費やら外気温度などを表示してくれるし、このディスプレイはそれ以外の情報もたくさん表示してくれる。驚いたことにオートマチックハイビーム機構もある。

ダッシュセンターにはナビ表示のディスプレイがあるのだが、ここからは信号が変わるのを告げてくれたりするし、先行車が発進したことも知らせてくれる。でも、エアコンはマニュアルで温度設定は微妙に自分で調節する必要があるし、そもそも温まるのが遅いから、冬場(まさに今の季節)は乗り込んだ時には手袋やコートはそのままの方が無難である。

エンジンの透過音は流石に250よりも大きく、決して静かではない。ボディオンフレームだから路面からの音は遮断しやすいが、それも250ほどではないから、それなりにロードノイズなどは進入する。しかし、700万円を超える250に対し、こちらはオプション込みでも500万円をわずかに超えるレベル。車両本体価格は480万円だから、200万円以上安い。この価格差と性能差、それに快適さの差などを勘案すると、個人的には70の方が勝っている気がしなくもない。寒いのが苦手なのでステアリングヒーターとか、シートヒーターなどが付いていたら、文句なくこちらを選ぶ。

それにビックリしたのは燃費。WLTCの燃費が10.1km/リットルなのに、今回は300km弱走行して10.2km/リットルを記録した。市街地だけだと8.0km/リットルだが、たぶんそれもクリアしそうな気がする。70、侮れないし、結構イケてる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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