三菱 ミニキャブEV 改良新型、発表。航続距離など実用面を改良《写真撮影 豊崎淳》

三菱自動車が改良新型『ミニキャブEV』を発表した。年内、12月21日から販売が開始される。新型は、現行『ミニキャブMiEV』の改良モデルで、荷室が広がったこと、航続距離が180km(WLTC)に伸びたことなど実用面での改良が特徴だ。


◆価格据え置きで実用面をアップデート
外観はヘッドライトと、グリル部分の装飾が変わったくらいで現行モデルとほぼ同じ外観だ。しいて言えば、ディーラーオプションのEVデカールのデザインも新型になるが、コンセプトは同じなので正直、普通の人には区別はつかないだろう。

だが、航続距離など実用面では、現行モデルのオーナーにとっては改善が進んでいる。価格は2シーターモデルで243万1000円(価格はすべて税込)。4シーターモデルも248万6000円。今年度のCEV補助金や自治体他の補助金がどう適用されるか次第だが、仮に現行ミニキャブMiEVに適用された49万円が適用されれば、200万円を下回ることになる。

現行の4シータモデルの245万3000円と比較しても価格据え置きと言える設定だ。プラットフォームは『eKクロスEV』で採用したものではなく、現行と同じものだ。バッテリーはリチウムエナジージャパンのマンガン系リチウムイオンバッテリーを搭載する。i-MiEVでも実績のあるバッテリーだが、性能と容量が16kWhから20kWhまでアップした新型(LEV61)だ。航続距離は180km。充電性能は、普通充電で満充電まで約7.5時間(200V15A=3kW)。急速充電で80%までが42分(充電出力60Aのとき)となっている。

◆実績と価格・性能・安全性のバランスを重視
i-MiEVには東芝のSiCBを搭載したモデルがある(電圧は低いが充放電特性が高く、劣化しにくいバッテリーとして定評がある)が、新型では採用されなかった。航続距離延長や調達コストといった理由が考えられる。

航続距離を180kmとしたのは、現行モデルのオーナーや事業所の利用状況調査で約80%が1日90km以下しか走らないという結果がでているからだという。プラットフォームを刷新しなかったのも、10年以上の実績と価格・性能・安全性のバランスを重視したからだ。

駆動方式は現行モデルと同じRRになるが、スペアタイヤを廃止した(パンク補修キットに代替)ため荷室の出っ張りがなくなった。2シーター状態で1830mmの奥行がとれるため、コンパネや建材などを平積みできる。助手席を倒せば2680mmまで伸びるので長尺の脚立を積むことができる。

◆オプション設定とADAS機能
DC急速充電はCHAdeMOに対応するが、オンボードチャージャーとCHAdeMOの充電ソケットはメーカーオプション設定(5万5000円)となった。すでに導入、運用している企業の実績データから、ラストマイルやルート配送、営業業務では、つまりミニキャブEVのほとんどのユーザーにとって経路充電の必要性は低いと判断した。急速充電オプションを選んだ場合、eMPの充電器が使えるカードプランに申し込むことができる。このプランは、同社のEV、PHEVに提供されているものと同じものになるそうだ。

うれしいのは、急速充電オプションをつけなくても車内に1500Wのサービスコンセントが設置できる(メーカーオプション:8万2500円)ことだ。DCチャージャーオプションより高いのが気になるが、電動工具の充電、照明機器、その他電源として利用できる。自治体などでは非常用電源としての利用が考えられる。

新型ではADAS機能も充実させた。衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制装置、車線逸脱警報、オートはビーム、パーキングセンサー、ヒルスタートアシストが追加され、サポカーSワイド対応となった。。高速道路では「MI-PILOT」(三菱自動車のレベル2自動運転機能)がほしいところだが、商用軽バンの主な用途としては必須機能ではないということだろう。

◆ニーズを考え割り切った決断、ライバルとの競争力に注目
DC急速充電器をオプションにしたり、プラットフォームをあえて流用したりと、乗用車基準ではありえない新型かもしれない。しかし、商用バンに求められるのは、最終的には価格、荷室、ランニングコストだ。新型発売ながらこれだけ割り切った決断ができるのも、同社は10年以上商用軽EVバンを製造販売してきた知見と積み重ねがあるからだろう。

現行のミニキャブMiEVも、一時生産を中止していたものを市場の声によって復活させたものだ。それが価格はほぼ据え置きで、航続距離延長、荷室拡大、安全装備が充実となれば、商品力は期待できる。カインズ、日本郵政、白洋舎、コーポ、赤福、mediceoといった事業所が静粛性やユーティリティ、ランニングコストを評価しているという。このようなリアルEVユーザーには、新型の改良ポイントの合理性は理解できるのではないだろうか。

完全な新型より、現行モデルでも本質部分の改善でスピードを重視する戦略は悪くない。12月販売というライバルにできないタイミングでの新型投入は、ミニキャブMiEVを持つ同社ならではの戦略だ。だが欲を言えば、24年以降に投入される他社の新型軽EV、軽EVバンとの競争も考えたい。先行者利益を生かしつつ、競争力をさらに高める必要がある。そのためには、ホンダなどが表明している30kWhを目安としてバッテリー容量の増量と、商用・乗用ともに活用できる新しい軽EVプラットフォームはぜひともほしいところだ。

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