日常でもレジャーでも使える!新型『N-BOX スロープ』の可能性《写真撮影 宮崎壮人》

◆歴代N-BOXに設定されていた車いす仕様
歴代ホンダ『N-BOX』では、車いすのまま乗り込めるスロープ付きモデルを設定していたが、新型N-BOXにもグレード名を「スロープ」(標準/CUSTOMともに4WD含め設定)とする福祉車両を継続設定した。

初代N-BOX(2011年12月発売)では『N-BOX+』(2012年7月発売)として、日常生活からレジャー、介護まで幅広い用途に対応するモデルを別車名で用意しており、多くのユーザーから支持された。

N-BOX+は収納式のアルミスロープを車体後部に装備し、ミニバイクなど車輪の付いた重量物が簡単に積み込めた。加えて車内では、3枚のボードを使い分ける「マルチスペースシステム」を提案し、5つの室内モードを可能にした。このうち、後ろ倒しにした後席と組み合わせた「ベッドモード」は好評だった。2012年8月には、福祉車両としてN-BOX+の車いす仕様車(消費税は非課税)を追加している。

2代目N-BOX(2017年9月発売)では、N-BOX+を改め、「N-BOXスロープ仕様」として2018年4月に追加で発売した。初代のN-BOX+とN-BOX+車いす仕様車をドッキングさせた新提案で、2代目N-BOXスロープ仕様では「車いす専用装備」(電動ウインチ+操作リモコン+手すり)のアリ/ナシが選べ、アリを選ぶと福祉車両として認定された。

◆日常でもレジャーでも使える!新型『N-BOX スロープ』の可能性
3代目となる新型N-BOXのスロープでは、福祉車両のみに構成を整理しつつ、「4名乗車モード」と「車いす乗車モード」(前席2名+車いす1名)のモード切替手順を3ステップ(後席ヘッドレストレイントを下げる→後席をダイブダウン→スロープ引き出す)に抑えて利便性を大きく向上させた。

新型スロープでは、N-BOX+での“日常生活からレジャーでの幅広い使い勝手”を今一度、体感してもらいたいという願いが込められた。

「福祉車両という言葉の響きから敬遠されてしまったり、車いすのある生活を考えるにはまだ早いと思われてしまったりすることがありました」と語るのは本田技研工業で福祉事業課アシスタントチーフエンジニアを担当する井上秀剛さん。

「自分ごととして感じて頂けないところも理由としてあるようです。国内市場に目を向けると被介護人口は2020年時点で682万人と年々増加傾向です。一方、介護に役立つ福祉車両の市場はピークの3万台から減少傾向が続いています」と、需要に対して供給が追いついてない実情を福祉事業課チーフの山崎麻由さんが解説する。

こうした実情を踏まえ新型スロープでは、趣味やキャンプなど荷物が増えるアウトドアフィールドでの使い勝手を“多様性”という観点で視野に入れながら、福祉車両としての使い勝手を大きく向上させた。新型N-BOXの試乗会では、この新型スロープが用意されていたので早速、実車に触れてみた。

◆電動ウインチの制御、車いすでの着座位置にもこだわり
車いすを引っ張るのはN-BOXの電動スライドドアに採用している同型の高出力モーターを内蔵した電動ウインチだ。左右2つの電動ウインチによって2本のベルトを巻き上げし、じんわり確実に車いすを引っ張り上げる。

巻き取り時には左右に2つある電動ウインチの強みを活かし、左右の巻き取り差を自動補正する。これにより、車いすが斜めに停止していても、巻き取りを開始するとすぐさま正対に戻してくれる。

2代目「スロープ」同様、テールゲートの形状も他モデルとの差異が非常に少ない。加えて利便性向上ためノブ位置からさらに25mm下げられた。こうした巻き取りの自動補正やノブ位置の見直しは、車いすで乗車する時間短縮にもつながるから介護する人にとっても朗報だ。

筆者は車いすでの介護経験が長かったことから、実際に車いすに乗車して引っ張られ体験をしてみたが、斜めになっていてもすぐさま正対するし、そもそもスロープ角度が緩やかで段差もないので身体への負担が少ない。また、車いすを固定してシートベルトで身体を拘束させた走行可能な状態では、お尻が若干下がり気味になるのでの減速時に前のめりになりにくいことがわかった。

車いすでの着座位置は、前席の人と頭位置がほぼ同じ高さになるように設計された。これに新型N-BOXの水平基調インテリアが加わるから視界が広い。側方ウインドが拡大されたことも開放感を高める理由のようだ。

後席を格納した状態でのラゲッジルーム容量は2代目から40リットル増えた。これはラゲッジルームサイドのパネル形状を見直し得られたのだが、スペースの拡大は介護する人にとってもありがたい。なお、スロープの耐荷重は人+車いすで200kgまでと十分だ。

「福祉車両にも多様性」。歴代N-BOXが大切にしてきたこの想いは、新型スロープにもしっかり活かされていることがわかった。

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