パトレイバー風パワードスーツとV2Xが街を救う!?《写真撮影 根岸智幸》

あれ、パトレイバーのType ZERO? いや違う。しかし、なんだか格好いいロボットがジャパンモビリティショー2023の西ホールに展示されていた。スタッフに声をかけると、「いまから、始まるので見てください」と言われた。いったい、何が始まるのか?

◆ロボットもモビリティだ
ジャパンモビリティショーが今までの東京モーターショーと異なるのは、展示内容が自動車やバイクだけでなく、それ以外の幅広い「モビリティ」に広げられたことだ。具体的には電動キックボードや電動車椅子、エアモビリティ(空とぶクルマ)など、従来では 脇役だったモビリティが今回は主役扱いで展示されている。

それに加えてロボットもモビリティの仲間に加わっている。南ホールの親子向けエリアに展示された巨大ロボット『THE ARCHAX』(アーカックス)は大人気だ。さらに西ホールでもロボット系の展示がいくつかあった。冒頭で紹介したパトレイバー風(今風に言えばダイ○マン風)のロボットは上半身だけで人間が体に装着するためのベルトも見える。こんな格好いいパワードスーツってあった?

展示のデモは寸劇形式になっていて、東京の街がゴジラに襲われ、電力や通信などライフラインが失われた中、新しいモビリティの力で被災者の救助を行うというドラマだった。東京がゴジラに襲われて新モビリティが危機を解決するストーリーは、西ホール入り口の巨大スクリーンに上映されたCG映画と一致する。入り口の映画では「モビリティの活躍で街が復旧した」と簡単にまとめていたところを細かくひとつひとつのテクノロジーを紹介するのが、この寸劇形式の展示なのだ。

ゴジラに襲われて崩壊した東京の街で、3人の民間人が活躍する。EVのバッテリを電力として使うV2Xによって、Starlinkの衛星ネットワークを起動し通信網を復旧。続けて、壊れたビルに閉じ込められた被災者を救うため、電力不要のパワーアシストスーツであるマッスルスーツを着用してガレキを撤去する。やがて、救援依頼を受けたエアモビリティが近くに着陸し、そこから自動運転のストレッチャーロボットが出動して、救助された被災者を運んでいく…。

◆2足歩行ロボットが災害救助
問題はパワーアシストスーツで、3人のうち2人は現実に存在するマッスルスーツを身につけるが、最後のひとりが身につけるのが、例のロボット風スーツ。3人一緒にガレキを片付けるが、本当に重いガレキを運んでいるわけではなく、軽そうなハリボテなので、格好は良いけどパワーは感じない。

実は、このロボット風スーツは、パワーアシストスーツではなく、エンタメ目的に開発されたSKELETONICS(スケルトニクス)という外骨格ロボットの上半身だったのだ。開発した株式会社ロボットライドのWebページによれば、スケルトニクスは、身長約3mで、モーターなどの動力を使わずに「三次元閉リンク構造」により、装着した人の動作を拡大し、まるで巨人になったような体験と演出ができるという。

今回の展示デモと同じフロアに下半身もついた完全版のスケルトニクスが展示されている。

スケルトニクスは、現状ではエンタメのためのロボットで、実際の災害で活躍することはないだろう。ただし、マッスルスーツの方は本物で、最上位モデルの「Exo-Power」は最大補助力27kgfで重量物の持ち上げをアシストしてくれる。会場内ではマッスルスーツの装着体験も可能で、平日でも長い列ができていた。

また、今回の展示デモには登場しなかったが、マッスルスーツの横で、川崎重工業のヒューマノイドロボット『Robust Humanoid Platform Kaleido』も展示されている。産業用ロボットの技術で作られた、転んでも壊れない丈夫なロボットで、大人とほぼ同じ体格のボディで60kg以上のものを持ち上げられるパワーを持つ。現在、災害救助や高所作業用に開発が進められているそうだ。

2足歩行ロボットがモビリティとして活躍する未来が本当に来るかもしれない。

大人気だった巨大ロボット『THE ARCHAX』(アーカックス)。今回の展示デモには出てきません。《写真撮影 根岸智幸》 全高約3mのエンタメ外骨格ロボット『SKELETONICS』(スケルトニクス)。《写真撮影 根岸智幸》 パワーアシストスーツであるマッスルスーツの展示。装着体験ができる。《写真撮影 根岸智幸》 川崎重工業の2足歩行ヒューマノイドロボット『Robust Humanoid Platform Kaleido』。実用化が楽しみだ。《写真撮影 根岸智幸》 スケートボードみたいに見えるけど、要救助者のところまで自走して駆けつけるロボットストレッチャー。《写真撮影 根岸智幸》 救助活動での活躍が期待されるドローンヘリ。《写真撮影 根岸智幸》