小糸製作所(ジャパンモビリティショー2023)《写真撮影 山田清志》

小糸製作所は今回のジャパンモビリティショー2023のテーマを「光とセンシングでもっと“うれしい”モビリティ社会へ」に設定し、次世代のモビリティを実現する製品を紹介した。

「当社はこれまでも企業メッセージ『安全を光に託して』のもと、交通社会の安全と安心に貢献してきた。そして、これからもそうあり続けたいという思いから、昨年11月に当社のビジョンとして『人と地球の未来を照らす』を策定した。今回のジャパンモビリティショー2023では、世界中に安心、安全、そして快適なモビリティの未来を実現していくため、3つのサポートを提案する」と加藤充明社長兼COOは説明する。

その3つのサポートとは、「ドライバーサポート」「センシングサポート」「コミュニケーションサポート」だ。これらを実現することにより、ドライバー、歩行者、そして交通に参加するすべての人に“うれしい”モビリティ社会を提供しようというわけだ。

ドライバーサポートでは、「良好な夜間の視界を提供するライティング技術でドライバーの運転の楽しさはそのままに、もっと安全で快適なドライビングをサポートする」(加藤社長)という。高精細ADB(Adaptive Driving Beam:ハイビーム可変ヘッドランプ)と二輪用ADBがそうだ。どちらも今回が世界初公開である。

高精細ADBは、従来12個分割だったハイビームの照射範囲を1万6000個に分割したもの。「細分化された1万6000個のLEDの点消灯、出力高度を制御することで、消灯する範囲を極小化するとともに、明るく照らす範囲を最大化し、歩行者や障害物の早期発見をサポートする。また、歩行者や道路標識の照射範囲は局所的に光を弱め、他の交通参加者や車載カメラの認識にも配慮している」と技術本部長の勝田隆之専務執行役員は説明する。

二輪ADBは、車体のバンク角に合わせて曲がる方向を明るく照らすコーナリングランプ機能に加え、ライダーの前方視線に合わせてより遠方まで照射範囲を拡大するとともに、前走車への眩しさを防止する。

センシングサポートでは、投入予定の車載用「LiDAR」に加え、車載以外への製品展開を目指す移動体検知システム「ILLUMIERE(イルミエル)」を初公開。特にイルミエルは期待の製品のようで、展示製品のほか、ブースの入口2カ所に設置するという力の入れようだ。

「イルミエルは人物を特定しないLiDARの特長を生かし、屋内外に設置したLiDARモジュールで、プライバシーに配慮しながら移動体の位置情報を点群データとして取得、制御ユニットで復習の人やクルマを判別・分類し、動きを把握するシステム。検知した情報や蓄積・分析による動きの予測は、交通事故防止や商業施設などでの人流、混雑状況、駐車場の空き状況の把握など、さまざまなシーンへの活用が期待できる」と勝田専務執行役員は話す。

コミュニケーションサポートでは、アニメーションランプと標識灯路面描画ランプを紹介。どちらも今回が初公開のものだ。アニメーションランプは、車両前後の標識灯を部分的に点消灯する光の演出で、クルマの状態やドライバーへのメッセージを伝えるランプ。ドライバーの異常やドア開放時の後続車への警告機能なども備えているそうだ。

一方、標識灯路面描画ランプは、ターンランプやバックアップランプと連動して、路面上に光のパターンを表示することで、交差点や駐車場で自車の動きを周囲の人やクルマに知らせるもので、歩行者の巻き込みや出会い頭の事故防止に貢献できるという。

加藤社長はプレスブリーフィングの最後に「これからも、さまざまな“うれしい”をお届けし、安全、安心、そして快適なモビリティの未来を実現していきたい」と改めて力説していた。

ジャパンモビリティショーは、従来の東京モーターショーにモビリティの枠を超えて他産業やスタートアップなども加わり、装いを新たに開催するもの。一般公開は28日から11月5日まで、主催は日本自動車工業会。

加藤充明社長兼COO《写真撮影 山田清志》 勝田隆之専務執行役員《写真撮影 山田清志》 二輪社用ADB《写真撮影 山田清志》 ブースの入り口に設置された移動地検知システム「イルミエル」《写真撮影 山田清志》