Can-Am Spyder RT Limited《写真撮影 雪岡直樹》

3輪車である。前2輪、後1輪のCan-Am『Spyder』/『Ryker』は、カナダに本社を置くBRP社が手掛ける。2007年に北米で先行発売を開始し、現在日本ではBRPジャパンが取り扱いを行なっている。

前2輪は舵の役割を担うものの、車体はバイクのように傾かない。また、日本で販売しているCan-Am各モデルは前トレッドの法規を満たすため、免許区分では普通車(車両区分では側車付きオートバイ)となる。そのためヘルメットの装着義務はない。つまり普通自動車免許で公道走行可能な乗り物なのだ。

今回はSpyderのフラッグシップモデルである「RT Limited」に試乗した。

◆立ちゴケとは無縁!足つき性能が悪くても問題なし
ハンドルはバイクのようだが左右にレバーはない。電子制御式のセミオートマチック車(シングルクラッチ方式)なので左手のクラッチ操作は必要ない。ブレーキ操作は後述する右足レバーのみ。これで前/後輪の3輪すべてにブレーキが掛る。

ギヤ(前進6速/後退1速)の変速は左グリップの根元にある電磁シフトスイッチで行なう。スロットル全開でもアップシフト操作を受け付けてくれるし、なによりクラッチ操作から解放されるので渋滞路では非常に快適だ。ただしシフトダウンは車速に応じて自動的に行なわれるものの、オートマチックモードはないのでシフトアップは常にライダーの役割として残る。

シート高は755mmと原付きバイク並みだが、車幅は広く足つき性能は悪い。しかし悪かろうが問題なし。なにしろ3輪で自立するわけで、渋滞だろうが坂道だろうが苦にならないからだ。大型バイクに乗るリターンライダーの多くが抱える立ちゴケの心配とは無縁の世界。ちなみに車両重量は乾燥状態で464kg。

◆体力づくりが必要? 2輪車とは違うブレーキ
ブレーキ操作は独特だ。右足のレバーを踏み込むと、後輪に加えて2つの前輪にもブレーキが掛る。前後ブレーキバランスは適正で、占有コースではABSとESCを頼りに50km/hからのハードブレーキを試みたが、レバーの踏み込み量に比例した確実な減速性能を発揮した。

注意すべきは一点。通常の2輪車では体感できない前2輪による強烈な減速Gだ。計測はできなかったが4輪車の最大減速Gとされるマイナス1Gの80%程度は軽く出ている。これに耐えられるだけの腕力を含めた体力づくりの必要性を強く感じた。

◆スノーモービルに近い3輪車独特のコーナリング
コーナリング時は3輪車独特の特性を意識する。なかでも低速域での旋回はステアリング操作を積極的に行ない、かつダイナミックな体重移動を併用しないと小回りができない。これは前サスペンションが上下方向には動くものの、バイクのように内傾しない機構上からくる特性で、試乗したSpyderの場合はスノーモービルの旋回特性に近いと感じた。

高速域では2輪車では味わえない重厚な直進安定性が光るが、前輪に適度な荷重の掛かった下り坂での高速コーナーでは微妙な修正舵が必要になる。これには3輪車のコーナリング特性に加え、前105kPa、後193kPaという独特の指定空気圧が関係している。

価格は426万3600円。

■5つ星評価
パワーソース:★★★
ハンドリング:★★★
扱いやすさ:★★
快適性:★★★★★
オススメ度:★★★

西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

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