ハーレーダビッドソン ブレイクアウト《写真撮影 真弓悟史》

「おぉぉっ!?」。目の前に現れたその存在感・圧倒感には思わず感嘆。チョイワルという言葉ではすまない全身からあらん限りのワルワルオーラを放ちまくっているこのマシンはハーレーダビッドソン2023新作となる『BREAKOUT(ブレイクアウト)』だ。

◆単なるワルさだけでなく、美しさが高次元で同居している
ドーンと前に突き出したフロント21インチ大径フロントホイールのチョッパー系スタイルに、ここまでビカビカにするかというほどクロームメッキでまぶしい輝きを放つエンジンは車体右にあるエアクリーナーもここまで張り出す必要があるのかといった自己主張ぶり。そして何より、ぶっといリヤタイヤには参ったよ。トレッドサイズは240mmで真後ろから見ると、まるでタイヤだけが走っているかのよう。いかにもハーレーダビッドソンらしい世界観を持っていて、このスペシャル感はなかなか他メーカーには真似できない。

ライディングポジションもスタイルどおりの世界観だ。一般的なチョッパースタイルだと高くて長いプルバックハンドルが定番だが、カスタム色を持ち味とするブレイクアウトはガバっと横に広くて高さの低いフラットバーハンドルを採用。そのため上半身はプルバックハンドルのふんぞり返ったリラックス姿勢とはまったく逆の、前に伏せてハンドルを上からガッと押さえるようなゼロヨンダッシュ系の姿勢となる。「オラァッ!」と前にある邪魔なものを押しのけて突進していくような、そんなワルさ感だ。

シート高は665mmと低〜く設定され、身長168cmの私でも両足かかとまで着いた状態でヒザが軽く曲がり、停車中も自然と様になるポーズに落ち着いてくれる。フォワードステップはちょっと遠いかなと思えるけれど十分扱える範疇だ。

そんな主張の強いブレイクアウトだが、単なるワルさだけではなく美しさや綺麗さが高次元で同居しているのもハーレーダビッドソンならではの部分だった。メーターはハンドルクランプに収まってしまう極小タイプで、跨ると視界に入るのはクロームの光沢を放つ太いハンドルバーのみと実にシンプル。さすがにクラッチワイヤーは見えてしまうものの、スロットルワイヤーはハンドル内部を通しているのでまったく見えず、フロントブレーキホースもライダーから見えない角度でうまく処理しており、その雰囲気たるや高級カスタム以外の何物でもない。

歪さのない丸い造形やペイントも素晴らしい燃料タンクに加えて前後フェンダーからも醸し出てくる金属感・重厚感にもため息が出てくる。この金属感・重厚感については310kgと実際に重量があるので、押して歩くとそれなりにずっしりだ。

◆マシンと同じく、自己主張が激しい人にこそピッタリだ
エンジンには“ミルウォーキーエイト117”と呼ばれる1923ccの空冷Vツインを採用。同じエンジンを採用する『ロードグライドST』にも乗ってみたのだが、最高出力などカタログスペックだけでなくフィーリングもそれとはずいぶん違って個性を付けていたのが印象的だった。ブレイクアウトのエンジンはクランクマスを軽くしているような雰囲気で、低速の粘りの方よりもパルス感のあるちょっとレスポンスがいい豪快な部分を楽しませるようなフィーリング。低回転なのに6速まで上げてしまうとスロットルを開けてもなかなか付いてこないが、適正ギヤでスロットルを開けてやると、コンロッドを叩くような力強い音をたてながら、ズダダッと鋭い加速を見せてくれる。エンジン本体だけでなく、きっとマフラーもこのフィーリングの違いに貢献しているのだろう。

前かがみでハンドルを押さえつけるライポジから右に左にとマシンを振り回すスポーティなハンドリングを予想するかもしれないが、実際にはキャスターがガツンと寝ているチョッパースタイルどおりで、かなり直進性が強い。バイクを寝かせてもなかなか旋回状態にならず、一定のバンク角を超えると重いフロントまわりが一気に切れ込んでくるセオリーどおりの感覚だ。ただ、この直進性の強さは逆に言うと疲れ知らず。雰囲気だけはワルっぽくいきながら、実際には高速道路などの長い直線をゆったり走るような乗り方が気持ちよく最高かも。

それではまとめとしてブレイクアウトはどんな人に向いているか。これはもうマシンと同じく自己主張が激しい人にこそピッタリだ。そしてカスタムしてあるバイクが欲しい人。質感も含めてすべて最初からカスタムしてある感じなので、きっとこのままイジらずに乗ってもいいんじゃないかなと思えてしまうはずだ。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー
1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。

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