スバル ソルテラ《写真撮影 青山尚暉》

いま世界的に注目されているのが、脱炭素、カーボンフリーに向けた電気自動車(以下EV)。ここ最近、国内外の自動車メーカーから数多くのEVが発売、上陸し、その先進性やEVならではの走行性能、環境性能が話題を呼んでいる。

ではEVは愛犬家、いや愛犬にとってどんなメリット、デメリットをもたらすのだろうか。ここでは、わが家の3代目自称自動車評論犬!? 歴、早10年のジャックラッセルのララに犬目線でのメリット、デメリットを聞いてみた。

◆EVならでは? 嬉しいポイントとは
まずはメリットから。

1.静かでスムーズな走行性能
EVは100%モーターで走るため、エンジン車に比べクラスを問わず圧倒的に静か。そして加減速がスムーズで、ガソリン臭や排気ガスの臭いもしない。これは聴覚に優れ、車内でどこかにつかまれず、クルマの急な挙動に対応できない犬にとってはじつに好条件なのだとか。

2.低重心で安定感と快適感ある走行性能
EVは重量物のバッテリーを車体床下に敷き詰めているため、それによってやや背の高いSUVのようなボディ形状でも重心が低まり、クルマの前後左右の挙動変化が抑えられ、カーブやレーンチェンジなども安定した挙動を示す。

さらに、低重心によって背が高めのクルマでも足回りを硬めずに済むため、乗り心地面でも有利になるというわけだ。静かでスムーズな走行性能と合わせ、EVの大きなドッグフレンドリーポイントとなりうるのである。

3.真夏、灼熱地獄となった車内もリモートエアコンで事前に涼しくできる
犬は1年中毛皮を着ていて足の裏からしか発汗できない、暑さや高湿度に弱い生き物として知られている。真夏だと屋外駐車のクルマの車内は、環境によって室内温度70度に達することもある。

ウィンドウを開け車内の熱気を逃がしつつ、走り出してエアコンを効かせたとしても、しばらくは車内の温度は熱いまま。飼い主はもちろん、愛犬もたまったものではない。

そんな真夏に便利なのが、EVの機能装備にあるリモートエアコン(一例として、メルセデスベンツのEVではプリエントリークライメートコントロールと呼ばれる)だ。スマートフォンのアプリによって事前にエアコンを作動させ、車内を涼しくしておくことができる。

それもエンジンの騒音や排気ガスなしで行えるところがEVならでは。ララによれば、犬によっては極端に寒がりの犬もいるから、冬も事前に暖房を効かせられるメリット絶大…とのこと。

◆意外な落とし穴も…愛犬のためにココは要注意
一方犬目線でのEVのデメリットはどんなところにあるのか。EVは補助金をもってしてもまだまだ割高、EVのスマートな使い方は自宅充電が基本だとしても、電気料金の高騰が気になる…なんていう話は飼い主側の問題として、国内外のEV試乗経験も豊富なララによると、以下のようなデメリットがあるという。

1.長距離ドライブ途中の急速充電中の過ごし方に気を使う
航続距離の長いEVが増えたとはいえ、長距離ドライブでは途中の高速道路のSA/PA、道の駅などで充電する機会もあるはず。そんな時人間だけなら店内でお茶をしたり、食事をして急速充電のお約束である30分の時間をつぶしやすいものの、犬連れだとSA/PAや道の駅の施設の中に入ることはまずできず、カフェでランチタイムを過ごすにしても、テラス席限定となってしまう。気候のいい時期ならいいとして真夏は暑く、真冬は寒い。これではさすがに辛い。

もちろん、愛犬を車内に残してクルマを離れるのは厳禁である。テスラにはドッグモードがあり、飼い主が短時間クルマから離れても車内の温度を適切管理し、ディスプレーに飼い主がすぐに戻ってくるという表示まであるものの、それと車内に残された犬のストレスは別問題かもしれない。

もっとも30分の急速充電時間を、例えば東名高速道路・足柄SA上下線のように、充電スポットとドッグランが至近距離にあれば、愛犬のドライブ途中のリフレッシュタイムとして有効に活用することはできる。

2.EVは主にSUV、セダン、軽自動車の車種がほとんどで、ドッグフレンドリーカーとしてララもお気に入りのミニバン、ステーションワゴンの選択肢がほぼない
国産EVのラインナップを見てみると、純乗用車系だと話題の軽EVの日産『サクラ』、三菱『ekクロスEV』、トヨタ『bZ4X』、スバル『ソルテラ』、日産『アリア』、日産『リーフ』、マツダ『MX-30』、レクサス『UX300e』といったハイトワゴン系軽自動車、SUV、ハッチバックタイプがほとんど。ミニバン、ステーションワゴンタイプの選択肢は見当たらない。

つまりボディタイプや車種が限られてしまうのである。ミニバン、ワゴンタイプが好みのララにとってはそこが不満、デメリットなのだという。輸入車にしても、EVモデルのほとんどがクロスオーバー、SUVタイプとなっている…。

3.EVの航続距離に大きく影響するのがエアコン、ヒーター
エアコンやヒーターによる航続距離減が心配な飼い主だと、真冬、真夏の車内空調環境に不安がある。何しろ、エアコンOFFでの航続可能距離を確認したあとにエアコンをONにすると、航続可能距離の数値がガクッと減ってしまうのがEVだったりする。

暑がり、寒がりの犬にとっては、それもデメリットだとジャックラッセルのララは訴えるのだが、回避策として、犬の特等席の後席がスバル ソルテラなどのように、後席シートヒーターが装備されているEVだと、寒い時期でも航続可能距離に影響するエアコンに頼らず、後席でぬくぬく過ごすことができるようになる。

実際、真冬にソルテラで極寒の河口湖へドライブした経験があるのだが、後席にドライブベッドとリード&ハーネスを利用して安全に乗車していたララは、すこぶる快適そうだったのである。

というのが、電気自動車の試乗経験も豊富なわが家の3代目自称自動車評論犬!? のジャックラッセルのララによるEVのドッグフレンドリーカーとしてのメリット、デメリットの説明である。しかしこうして項目を立ててみると、メリットがデメリットを大きく上回っているようにも思える(車種、航続距離、装備によるが)。

愛犬家家族がこれからEVの導入を検討しているなら、そうしたメリット、デメリットを理解し納得した上で、EVをドッグフレンドリーカーの選択肢のひとつとして、土俵にあげるのはいかがだろうか。

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