ヤマハ発動機がタンザニアでバイクを使ったラストマイルデリバリー事業の実証実験を開始。写真のバイクは110ccのヤマハ『CRUX-REV』《写真提供 ヤマハ発動機》

ヤマハ発動機は2月28日、グループ会社のCourieMate(クーリーメイト)がアフリカのスタートアップ企業WASSHA(ワッシャ)とともに、東アフリカのタンザニアでバイクを使ったラストマイルデリバリー事業の実証実験を開始したと発表した。

CourieMateは、ウガンダでラストマイルデリバリー事業を行うヤマハ発動機グループ会社。ラストマイルデリバリーサービスに必要なノウハウやITシステムの知見を有している。一方WASSHAは、キオスクと呼ばれる小売店を通じて電力サービス事業を展開するスタートアップ企業。2013年の創業以来、タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、コンゴで事業活動を行い、当地での加盟店管理、決済アプリ運用など様々な知見を持ち合わせている。

両社は、これまでもウガンダでの物流サービスなどで両社の知見を共有しながら、それぞれの事業を推進してきたが、今回、この実績を生かしてタンザニアでのラストマイルデリバリー事業を早期に立ち上げるための協業契約を締結。この契約に基づき、タンザニアでの実証実験を開始した。

◆住所のない国でおこなうラストマイルデリバリー
タンザニアは人口がおよそ6000万人で、国民の年齢(中位年齢)が17.6歳と若い。1人あたりGDPは日本の1960〜70年代程度だが、インターネット環境(携帯電話網)は整備されており今後も市場拡大が期待されている。個人によるインターネット通販が流行の兆しを見せており、自宅への配送が課題となっている。

CourieMateは荷物を運ぶライダーの確保やトレーニングをはじめ、ITシステムを活用することでライダーや荷物、代金のトレース(追尾)をおこなう。ウガンダやタンザニアでは口座を持っている人は少なく、通販で購入した商品も代引きが基本。配達時に現金で受け渡しをおこなう必要があるが、ライダーが代金を持ち逃げしてしまったりすることを防ぐためのシステムだ。

また住所が整備されていないため、配達時にはコールセンターの職員や顧客と通話しながら、手探りで配達をおこなうのが基本だが、宅配履歴をもとに住所代わりのマッピングをおこなうことで配送の効率化を図る。これらウガンダでの実績をもとにタンザニアでも事業の拡大をめざす。

またWASSHAが展開するキヨスクでのビジネスと連携することで、荷物の取り置きや、WASSHAがすでに導入しているモバイルマネーによる決済システムを今後CourieMateでも活用が可能か検証していく。

実証実験は1月からすでに開始しており、6月末までおこなう。

◆地域経済の活性化、職業ドライバーの雇用創出を目指す
ヤマハ発動機は、2022年発表の新中期経営計画(2022〜2024年)にて、新規事業と成長事業を戦略事業領域と位置づけ、将来のコア事業として育てるための経営資源を積極的に配分するポートフォリオマネジメントを進めている。新規事業のひとつであるモビリティサービスビジネスでは、雇用機会不足などの社会課題に対して、二輪車事業の知見を活かしたモビリティアセットマネジメントを通じ、人々の暮らしが豊かになる環境づくりを推進。ラストマイルデリバリー事業ではバイク製品の販売とは別に、バイクを使った物流サービスの提供により地域経済の活性化、職業ドライバーの雇用創出を目指すとしている。