LVCCのセントラルホールに出展したパナソニック(CES 2023)《写真提供 パナソニック》

パナソニックは、1月5日〜8日に米国ネバダ州ラスベガスにて開催されたCES2023に出展。電動モビリティの普及に向け、それを推進するキーデバイスや技術・ソリューションや、グリーン水素製造デバイス・水電解装置を捨スケルトンモデルで紹介した。

◆ペロブスカイト太陽電池982枚で仕立てた「ペロブスカイトTREE」
パナソニックが環境ビジョンとして掲げるのは「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」というグループ共通のテーマだ。産業や生活の中でCO2削減に貢献する要素技術などの研究成果を展示する。

同社によれば、地球全体の二酸化炭素の排出量は2019年で年間336億トン(出典:IEA)あり、パナソニックとしては、そのうちの1%の削減を2050年までに実現することを目標にしているという。そのために、その材料や商品などのサプライチェーンから製造に関わる工場で発生する二酸化炭素だけにとどまらず、さらには製品を使った際の省エネ効果を上げることでその削減効果を狙う。

パナソニックのブース入口で最も目立っていたのがペロブスカイト太陽電池のセルで構成された「ペロブスカイトTREE」だ。これはセル1枚が発電する電力は7Wで、これを982枚用意してツリーに仕立てたことで、単純計算で7kWh近くの電力がまかなえるのだという。CO2削減に貢献する要素技術として、この電力を使った携帯電話や電動自転車を充電するデモも行われた。

また、現時点で世界最高の発電効率約17.9%を実現した30cm角のペロブスカイト太陽電池モジュールの試作品も出展された。これはインクジェット型で塗布することができるため、建物とかデザインに合わせて透過率を変えて製作することが可能となる。軽くて柔軟性のあることでこれまで以上に扱いやすく、既存のシリコン製太陽電池よりも安価に製造できるとして普及が期待されているという。

会場では再生可能エネルギーを用いた水電解による、CO2フリーのグリーン水素製造デバイス・水電解装置のスケルトンモデルも展示された。貴金属フリー高活性触媒材料を用いているのが特徴で、パナソニックとしてはこの技術を活かしてグリーン水素の普及を加速させる考えだ。

◆スピーカー数を減らしても音が良い!最大67%の省エネ「EVオーディオ」
車載関連で注目されたのが、EV(電気自動車)向けに開発したEVオーディオシステムである。EVによって貴重な電力の消費量を減らするために、ドアスピーカーの廃止や、スピーカーのサイズと数を減らすことで、最大67%の省エネを実現している。しかも、スピーカーの設置場所の最適化やサウンドチューニングなどにより、多くのスピーカーを使ってきたのと同等かそれ以上の音響性能を獲得したのが特徴となる。

試聴してみると、少ないスピーカーとは思えない臨場感と音圧が再現できていた。もともと車両に搭載されていた純正6スピーカーと切り替えてみたが、むしろスピーカー数が少ないEVオーディオの方が輪郭がしっかりとしていて、聴きやすい印象を受けた。スピーカー数が少なくなれば重量面でもメリットが生まれるわけで、今後はこうした展開が増えてくるのかもしれない。

快適な車内空間を実現するための取り組みとして出展されたのが、車内に持ち運んで利用できるポータブル空気清浄機「ナノイーX」だ。ポイントは「特許技術のナノイーXをポータブル車載製品として再設計し、どんな乗り物のカップホルダーにも収まるようにした」こと。車内の臭いを消すのはもちろん、ウイルス、細菌、カビ、アレルゲンを抑制することが可能で、より健康的で快適なドライブを実現することができるという。

◆米カンザスにリチウムイオン電池の新工場建設、ルーシッドへの電池供給も
モビリティ電化のキーデバイス・技術として紹介したのは、テスラ車でも使われている電気自動車(EV)用円筒形リチウムイオン電池と、それを活用した電動アシスト自転車『XEALT M5』。EV用円筒形リチウムイオン電池として出展されたのは、現行ラインアップの「1865」「2170」に加え、次世代の大容量電池として開発が進められている「4680」。容量拡大によってで、EVの進化・普及に貢献するという。

パナソニックとしては、これらが世界最高レベルのエネルギー密度を実現してることや、高い安全性・信頼性で業界をリードしていることをアピール。「4680」の実用化が進むことでEVの進化・普及に貢献できるとした。また、電動アシスト自転車XEALT M5は、走行性とスタイリッシュさが求められるスポーツタイプの電動アシスト自転車(eバイク)として開発された。小型ながら高容量のリチウムイオンバッテリーをフレームと一体化し、ダイナミックで力強いスタイリングと長い航続距離を実現するという。

一方、パナソニックのプレスカンファレンスでは、2022年10月に発表した米カンザス州の車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場の建設についても紹介した。同工場は、同年11月から工場建設を開始しており、2024年度中の生産開始を計画している。ここでは車載用円筒形リチウムイオン電池「2170」を生産し、初期の生産能力は30GWhを予定している。これまでバッテリーを供給していたテスラ以外にも供給する計画で、同年12月に発表した新興EVメーカー「ルーシッド(Lucid)」へ供給する契約も紹介した。

同じくプレスカンファレンスでは、Amazonとの共創の成果として、パナソニックの車載インフォテインメントシステム(IVI)「SkipGen」と、Amazonの音声アシスト「Alexa」の連携を強化することも発表された。SkipGenのアップデートにより、Apple CarPlayやAmazon Alexaを使用中に「Hey Siri」および「Alexa」のどちらかのウエイクワードと発すれば、SiriとAlexaに同時アクセスできるようになるというものだ。これは、単一のデバイスで複数の音声APIを同時にサポートする業界初の例となる。

982枚のペロブスカイト太陽電池のセルで構成された「ペロブスカイトTREE」(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 世界最高の発電効率約17.9%を実現した30cm角のペロブスカイト太陽電池モジュールの試作品(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 CO2フリーのグリーン水素製造デバイス・水電解装置のスケルトンモデル(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 EV(電気自動車)向けに開発したEVオーディオシステム搭載車(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 EVオーディオシステムは省電力を進めた3スピーカーで、従来のシステムを超えるサウンドを再生可能とした(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 ポータブル空気清浄機「ナノイーX」(パナソニック/CES 2023)《写真提供 パナソニック》 電気自動車(EV)用円筒形リチウムイオン電池で、現行ラインアップの「1865」「2170」(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 次世代の大容量電池として開発が進められている「4680」(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 円筒形リチウムイオン電池で作ったオブジェ(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 スポーツタイプの電動アシスト自転車「XEALT M5」(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 米カンザス州の車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場の建設についても紹介された(パナソニック/CES 2023)《写真撮影 会田肇》 CarPlayとAlexaの共存により使い勝手を高めた。写真はPanasonic Automotive Systems AmericaのAndrew Poliak氏(左)とAmazonのArianne Walker氏(パナソニック/CES 2023)《写真提供 パナソニック》 Alexa使用中に「Hey Siri」および「Alexa」のどちらかのウエイクワードと発すれば、SiriとAlexaに同時アクセスできるようになる(パナソニック/CES 2023)《写真提供 パナソニック》