ホンダ ホーク11《写真撮影 雪岡直樹》

ホンダ自らが「上がりのバイク」と称し、他とは一線を画す成り立ちで誕生したモデルが『ホーク11』だ。着々と上がりに近づきつつあるモーターサイクルジャーナリストの伊丹孝裕と、そこにはまだまだ程遠いモデルの大関さおりが試乗。ホーク11の魅力を語り合った。

◆見るのと乗るので変わるサイズ感。ライダー含めたデザイン
大関さおり(以下、大関):長い……ですよね。こうして真横から眺めると特に。

伊丹孝裕(以下、伊丹):前置きなしに核心を突いてきますね。いい感じです。遠慮のない声は、おそらくホンダも望むところでしょうから、その調子でどんどんいきましょう。

大関:あ、でも乗っている時は全然気にならないんですよ。ただ、バイクから降りて振り返ったりすると、独特の存在感があるな、と。

伊丹:ホイールベースは、1510mm。ホンダ車同士の比較で言えば、『CB1100RS/EX』よりは長いけれど、『CB1300 SUPER FOUR』や『NT1100』、『レブル1100』よりは短い。なのに間延びして見えるのは、細さや低さによって、それが強調されているせいでしょうね。大関さんが走っている姿を見て思ったけど、バイク単体よりもライダーがまたがった状態込みでデザインされている感じがしました。

◆自由なライディングポジションを確保し取り回しも〇
大関:小ぶりなカウルとセパレートハンドルの組み合わせは、一見手強そうな印象ですが、跨ってみるとライディングポジションはきつくなくて、自由度が高いです。普通に乗って前寄りに座っても、上体を伏せて少し後ろ寄りに座っても不自然さがなく、自分のバイクのような感覚で、すぐに操作に慣れました。

伊丹:普段は何に乗ってるんでしたっけ?

大関:『CBR650R』です。ハンドルとシートの位置関係にも、足つき性にも大きな差はなくて、ホーク11の方が車体を起こす時に少し力が必要かな、という程度。あとは、重心が前にある感じがして、取り回しでは多少手応えを感じます。でも、Uターンはしやすくて、走り出すと軽くて曲がりやすい。見た目のスポーティさとは裏腹に、普段使いも苦にならない穏やかさがありました。

◆音のイメージと伝わる振動が違う。走り出したら「滑らかな」2気筒エンジン
伊丹:大関さんが乗り慣れているCBR650Rと比較すると、一番の違いはエンジンですよね。CBR650Rが648ccの4気筒なのに対し、ホーク11は1082ccの2気筒。どんな風に感じました?

大関:どちらにも共通しているのは、特に低速時の安心感ですね。アイドリング+αのあたりから力強いトルクが感じられて、クラッチがつながる時の感覚も分かりやすい。なので、よほど変な操作をしない限りエンストしそうになくて、どんな場面でも気をつかうことなく扱えるフレンドリーさが、ホンダならではの優しさだと思います。

伊丹:2気筒を評価する時、よく「鼓動」という言葉が用いられるのだけど、そのあたりはどうですか?

大関:エンジンをかけた時とか、スロットルを開け閉めした時の音はかなり歯切れがよくて、スムーズな4気筒とは違うな、と思いました。音質的には、確かにドコドコとした鼓動を思わせるものですが、体感的にもそうかと言われるとちょっと違う気がします。

伊丹:撮影中、なにげなく会話している時も大関さんの口からは「滑らか」という表現が出てきていて、それがちょっとおもしろいな、と思ってました。音のイメージと、体に伝わってくる感覚が違うってこと?

大関:そうなんです。音だけが揺れている感じ。信号などで止まっている時はまだしも、走り出すとまったくそれを感じることなく、スルスルッと進んでくれます。すごくスムーズにレスポンスしてくれて、その扱いやすさが好印象でした。ちゃんとキャラがあるのに、主張し過ぎず、そういえばレブル1100やGB350に乗った時も似たような印象を持ちました。

伊丹:どちらのモデルも低回転域のパルス感と中高回転域の伸びやかな回転フィーリングを両立しているから、確かにその感覚は正しい。普通は音に意識がいきがちだし、ある意味、惑わされるものだけど、バイクからの情報を先入観なく受け取っている証拠だね。

◆慣れが必要?ハマる人はとことんハマる「ホーク11」
伊丹:逆に、どこか気になる点はあった?

大関:ホーク11の個性であることは分かっているつもりですが、あのバーエンドミラーには少し慣れが必要かもしれません。

伊丹:見えづらい?

大関:……まぁ、そうですね。どんなバイクでも走り出す前にミラーの位置を調整するじゃないですか。カウルにマウントされていても、ハンドルにマウントされていても、「大体このあたりが見えていればOK」っていう基準があるものですが、ホーク11のそれは独特過ぎて、どこに合わせていいのかで、まず迷いました。走り出してもミラー越しに見えている景色が普段と違うので、今日一日乗ったくらいでは、しっくりこなかったのが正直なところです。

伊丹:視角は確保されているとはいえ、ハンドルや下腕が写り込む位置にあるから、確かに最初は違和感があるかもね。ミラーがなぜあんな場所にあるのかというと、大きな要因のひとつはカウルの造形を優先したから。カウルには、量産車では用いられることが少ないFRPという素材が採用されていて、滑らかな曲面や継ぎ目のない構成を実現している。

つまり、美しさにこだわった結果なのだけど、だからこそ、そこに穴を開けたり、ミラーを付け足したくなかった、という話を開発チームの人から聞いています。ところで、ホーク11の個性といえば、まさにそのカウルを筆頭とするスタイリングです。ロケットカウルという単語にグッとくるのは、僕を含めた一定以上の世代ですが、若いライダー、もしくは女性はどうなんでしょう?

大関:これはいろいろなところで書かれていますし、私も直接聞いたことがあるので言っていいと思うんですけど、ロケットカウルそのもののカタチは好きです。ただ、車体の後半部分は……。

伊丹:なんか変、と。発表試乗会の時も、ホンダ自らが最初にデザインのことに触れ、「賛否両論があった」と説明してくれました。具体的には「車体の前後でデザインがバラバラじゃないか」という声が多数あったらしく、まさに大関さんが感じた通り。「バランスがおかしい」と感じる人もいれば、この個性を熱烈に支持する人もいて、ホーク11に関しては、万人に受け入れてもらう必要はない、と最初から割り切ったみたい。

大関:そういう意味では、ちょっとしたギャップ萌えですよね。見た目は突飛で、主張が強そうなのに、実はすごく穏やかで優しい。第一印象で敬遠することなく、ぜひ試乗してみてもらいですね。ワインディングのイメージで押し出されていますが、幅広いシーンで楽しめるモデルだと思います。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

大関さおり|愛称 さおりん
初めて見に行った二輪レースでバイクに一目惚れ!大型二輪免許を取得。MotoGP・鈴鹿8耐・全日本レースクィーンを経験し、現在は各種メディア出演やMCとして活躍。さらにボクシングプロライセンスを持つ異色の経歴の持ち主。愛車はCBR650Rでディズニーが大好きなバイクタレント。Instagram:@saoriozeki

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