ダイハツが「SIP自動運転実証実験プロジェクト」に出展したレベル2+の自動運転実験車両《写真撮影 会田肇》

ダイハツ工業は9月末に東京・お台場地区で開催された「SIP自動運転実証実験プロジェクト」に参加し、軽自動車『タント』をベースとした、レベル2+の自動運転実験車両を出展。高齢化が進む郊外ニュータウン等での自動運転を想定した実証実験の取り組みについて説明した。

“SIP”とは、内閣府が進める国家プロジェクトで「戦略的イノベーション創造プログラム」を指す。産官学連携で自動運転に関する研究だけでなく、実用化までを目指すのがプロジェクトの狙いで、そのために数々の実証実験をはじめ、高精度3D地図や法改正といった協調領域、さらにはデジタルの力と人間の想像力により様々な社会的課題を解決することを目指すソサエティ5.0への取り組みも含む。

その中で、ダイハツの実証実験は高齢化が進む郊外ニュータウン等での自動運転を想定した実証実験に焦点を当てたものとなる。ダイハツは2022年4月より、福祉介護・共同送迎サービス「ゴイッショ」を主に地方自治体を対象に販売を開始しているが、この実証実験はそうした分野でのドライバー確保や負荷軽減に貢献する取り組みにつながるものだ。

自動運転に使われる実験車両はこうした利用シーンを念頭に開発されている。車両はタントのルーフに全方位LiDARに加え、前後左右に計6個のLiDARを装着。さらに前方カメラやGPSアンテナを組み合わせてセンシングを行い、モノを認識してその対応する判断はAIによる予測も行いながら走行する。一方で“走る”“曲がる”“止まる”技術は、スマアシで培った要素技術で実現しているという。

車内には“レベル2+”でのハンズオフ走行ができるで走行できるよう、視線検知用赤外線センサーを装備。これにより、ドライバーの着座と前方視認は必要になるものの、この対応によりドライバーの負荷軽減を目指すものとしている。

実証実験の場として紹介されたのが、神戸市北区にあるオールドニュータウンでの事例だ。1960年代にニュータウンとして開発されたこの街は、山を切り開いて造成されたこともあり、道路の起伏が激しいために見通しが悪い箇所も数多い。しかも道幅が狭い上に両端には蓋のない側溝もある。実際に走ってみると想像以上に課題が多い場所だったという。

ダイハツによれば、はこうした状況下でもスムーズな走行を実現できたとするが、それでも一般道での実証実験ということもあり、ダイハツ工業ソフトウェア開発本部の増田 基副部長は、「歩行者の急な飛び出しや、クルマの割り込みなどへの対応など、解決すべき点はまだ数多い」とも述べ、その上で「実証実験の結果を踏まえ、次なるバージョンへ向けて進化させていく」とも話した。

また、ダイハツではこの実験車両を使い、2021年11月にSIP実証走行を東京・お台場地区の臨海副都心エリアで実施している。1週3.4kmのコースを約15分で一般車両との混合交通下で自動走行し、4日間の実証実験では計40週を走行した。一般道でありがちな違法駐車や歩行者の道路横断、さらには強引な車線変更などにも対応できており、ダイハツでは想定したシナリオを自動対応することを確認できたとしている。

フロントフェンダー部に取り付けたLiDAR《写真撮影 会田肇》 フロントバンパーに取り付けたLiDAR《写真撮影 会田肇》 後部にも3つのLiDARを取り付けた《写真撮影 会田肇》 絶対位置を把握するために高精度GPSも活用する《写真撮影 会田肇》 実験車両の車内《写真撮影 会田肇》 ドライバーの視線を把握するために取り付けられた赤外線センサー《写真撮影 会田肇》 自動運転実験車の概要《写真撮影 会田肇》 北神戸で行われた実証実験の概要《写真撮影 会田肇》 北神戸での実証実験の模様。極端に道幅が狭い箇所での対応が求められる《写真撮影 会田肇》 鉄塔による見通しが利かない場所での対応も難しかったという《写真撮影 会田肇》 昨年11月に東京・お台場で展開した実証実験の概要《写真撮影 会田肇》