ラリージャパンで3位となった勝田貴元(左/右はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン)。《Photo by TOYOTA》

2022年世界ラリー選手権(WRC)最終戦「ラリージャパン」は13日に競技日程を終え、トヨタ勢では勝田貴元が最上位の3位となった。母国表彰台の勝田は「本当に特別な気持ち。チーム、そして応援してくれたみなさんに心から感謝します」と喜びを語っている。

◆トヨタは勝てず。ヒョンデが1-2フィニッシュ達成
愛知・岐阜では初めて開催された12年ぶりのWRC日本ラウンドは、かなり荒れた展開の一戦になったというべきだろう。ラリーの総合優勝を争う最上位カテゴリー「Rally 1」規定のマシンたちを大小さまざまなアクシデント等が襲い続け、競技最終日(13日)の途中からは雨という辛めの味付けまで加わった。

ドライバー、コ・ドライバー、マニュファクチャラーの年間タイトルはすべて獲得済み、素晴らしいシーズンの締めくくりに母国勝利の栄誉も重ねようとしたトヨタ陣営(マシンは「GRヤリス・ラリー1・ハイブリッド」)にとっては、実に厳しい展開のラリーになった。

主力であるTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)の3人は、昨季王者の#1 セバスチャン・オジェ(今季はパートタイム参戦)が金曜(11日)に、今季王者の#69 カッレ・ロバンペラは土曜(12日)に後退していくこととなり、トヨタの母国勝利は#33 エルフィン・エバンスの走りに委ねられた格好になる。

#33 エバンスは金曜終了時点で首位。土曜の途中で首位から陥落するも、ヒョンデの「i20 N ラリー1・ハイブリッド」を駆る#11 ティエリー・ヌービルとの僅差の優勝争いは最終日(13日)の最後まで続くものと期待されていた。しかし、その#33 エバンスも最終日、コーナーでワイドにふくらみ、タイヤを損傷して後退することに……。#33 エバンスは表彰台圏内からも去ってしまった。

TGR-WRTの3人は、最終的に#1 オジェが4位、#33 エバンスが5位、#69 ロバンペラはトップ10圏外という総合順位でラリージャパンを終えた。母国での勝利こそ叶わなかったわけだが、トヨタが(特に#69 ロバンペラ組が)支配した流れのシーズンであったことは間違いない。

ラリージャパンの優勝は#11 ヌービルで今季2勝目。2位に#8 オット・タナクが続き、ヒョンデはトヨタの母国戦で1-2フィニッシュを飾った。年間成績では敗れたものの、一矢報いた格好である(なお、タナクは今季限りでヒョンデを離脱する)。

Rally 1規定初年度(全13戦)は、トヨタが7勝、ヒョンデが5勝、Mスポーツ・フォードが1勝という最終的な勝利分布になった。ヒョンデは後半6戦で4勝と、シーズンの趨勢がほぼ決まったあとながら、前半戦のトヨタ大圧倒ムードを和らげてシーズンを終えたとはいえるだろう。

◆勝田貴元、走り抜いて母国表彰台ゲット
ラリージャパンのトヨタ勢最上位は、3位に入った#18 勝田貴元(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generation)。金曜に5位だった勝田は、土曜に4位、日曜に3位と、トヨタ勢の後退によって順位が上がっていく展開ではあったが、ラリーとは、モータースポーツとは、ときにそういうもの。Rally 1マシンで戦う唯一の日本人ドライバーとして、“凱旋表彰台”という結果を残した勝負強さ、粘り強さは見事であった。

#18 勝田貴元のコメント
「母国開催のラリーで表彰台に立つことができて、本当に特別な気持ちです。チーム、そしてステージやロードセクションなど、あらゆるところで応援してくれた多くのファンのみなさんに心から感謝します」

「このラリーは非常にトリッキーなステージが多く、グリップレベルが大きく変化する難しい週末でした。最初は良いフィーリングをつかむことができずに悩んでいましたが、金曜のミッドデイサービスでチームと一緒になってセッティングを変更したら、とても良い方向に向かい、クルマがより乗りやすくなって、タイムも良くなりました」

「ラリーの終盤は(天候を含め)特に難しいコンディションになりましたが、なんとか乗り切ることができました。コ・ドライバーのアーロン(ジョンストン)に感謝したいですし、グラベルクルーのユホ・ハンニネンとクレイグ・パリーも、素晴らしい仕事でペースノートの情報面を支えてくれました」

愛知県出身の勝田貴元(かつた たかもと)は現在29歳。近年はトヨタ育成選手の“旗頭”として、WRCのトップカテゴリーに参戦しており、昨年のサファリで2位に入ってWRC(のラリー総合順位における)初表彰台を獲得した。サファリでは今年も3位と好結果で、2年連続の表彰台。そして今回、自身通算3回目の表彰台登壇を果たした。ターマック(舗装路)戦では初表彰台だ。

12年ぶりのWRC日本開催戦は、金曜に一般車両がコースに入るという事象(事故等の発生にはつながらず)があったなどの状況も伝えられており、混乱が目立った一戦と言わざるを得ない面もあった。さらにはトヨタ勢が優勝ならず。そうした状況であっただけに、勝田の母国表彰台という結果で幕を閉じることができたのは、いろいろな意味で「よかった」と形容できるところかもしれない。

今季全13戦に参戦した勝田はリタイアが1回のみで、それ以外は常に3〜8位という安定した成績を積み重ね、年間ドライバーズランキングでは5位となっている(昨年の7位を更新する自己最高位)。来季以降のさらなる飛躍に期待したい。

(*本稿における順位等は、13日に発行されたリザルトに基づく)

3位表彰台に上がった勝田貴元(右から2人目/右端はコ・ドラのアーロン・ジョンストン)。ラリージャパン優勝はヒョンデのティエリー・ヌービル(左から2人目。左端はコ・ドラのマーティン・ヴィーデガ)。《Photo by TOYOTA》 3位に入った#18 勝田貴元(トヨタ)。《Photo by TOYOTA》 勝田貴元は今季をランキング5位で終えている。《Photo by TOYOTA》 優勝の#11 ヌービル(ヒョンデ)。《Photo by Red Bull》 2位の#8 タナク(ヒョンデ)。《Photo by Red Bull》 ヒョンデ1-2フィニッシュの表彰台。《Photo by TOYOTA》 #33 エバンスが最終日に優勝争いから脱落し、トヨタは母国勝利ならず。《Photo by TOYOTA》