シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》

ステランティスジャパンは、シトロエンのフラッグシップ、『C5 X』を10月1日より販売を開始すると発表した。

◆フルラインナップ戦略で
ステランティスジャパンマーケティングダイレクターのトマ・ビルコ氏は、日本におけるシトロエンのイメージは、「Bセグメントハッチのアイコニックなクルマではないか」と。また、「フランスの素晴らしいアイデンティティと個性のあるデザインでも知られてる」と述べる。

一方、今回導入したC5 Xを初めて見ると、「最初は混乱するかもしれない。大きくてエレガントでゴージャスなので本当にシトロエンのクルマか?と感じるかもしれない」と笑う。そして、「シトロエンはコンパクトでとても快適なクルマとだけではなく、これまでの歴史を振り返ると、常にゴージャスでエレガントな大型のクルマを作り続けて来た。常にブランドの誇りであり自動車業界を変革してもきた」と話す。

その一例が『DS』だ。1955年のパリモーターショーでデビューしたクルマで、そのアヴァンギャルドなデザインだけでなく、ハイドロニューマチックサスペンションによる魔法の絨毯に乗っているかのような乗り心地など、市場に一大センセーションを巻き起こした。その革命的である象徴ともネーミングは数十年後には「DS」というブランド名として復活し、いまなおその精神は受け継がれているといえるだろう。

またトマ氏は、日本マーケットにおいて、「シトロエンブランドが『ベルランゴ』とBセグメントだけのブランドになってほしくなかった」と思いを吐露し、「全ラインナップを導入するというプロジェクトをずっと遂行して来た」。その結果としてC5 Xがラインナップされたことで、「BセグメントからDセグメントまでというこの目標を達成できた。このフルラインナップ戦略はずっとキープしていくつもり」と語る。

そして、「シトロエンユーザーはシトロエンブランドに愛着を持ってくださっており、シトロエンブランドも日本のユーザーが大好き。シトロエンブランドは世界の中でも特に日本のマーケットに愛着を感じており、安定したフルラインナップをずっと日本のマーケットに導入し、日本の皆様の広いニーズに長期的に応えていきたい」と述べた。

◆シトロエンの根幹をなす4つの理念を具現化
さて、C5 Xについて同社シトロエンブランドマネジャーの中山領氏は、「シトロエンがDセグメントへの復活を遂げるべく満を持して市場に送り込むフラッグシップモデル」と紹介。「大胆なコンセプト、独走のデザイン、直感的に使いやすいテクノロジー。そして最上の快適性というシトロエンブランドの根幹をなす4つの理念を最大限に具現化したクルマ」と話す。

そのネーミングから「新たなコンセプトを象徴している」と中山氏。「『C5』はシトロエンのトップレンジであることを示し、“X”はセダン、ステーションワゴン、SUVの3つの要素をクロスオーバーさせた独創のスタイリングであることを表している」と説明。また、『CX』に始まるブランドの“X”の系譜を継承していることも示唆している。

そのデザインについて中山氏は、「シトロエンのデザインチームは常に進化するマーケットのニーズを踏まえながら、数多くある商品群の中に埋没しない独自のスタイリングの創出に情熱を注ぎ込んでいる」とし、C5 Xのスタイリングの妙は、「複数のシルエットの奇跡的ともいえる融合だ」という。それは、「正統派セダンが備えるエレガントなステイタスを滑らかでエアロダイナミクスに優れたラインで表現。ダイナミックかつ実用性をも備えるステーションワゴン的な要素は、極めてユニークなリアスタイリングに表れていう」と述べる。そして「SUVのようにまるで路面に踏ん張るかのような佇まいは、大型の19インチホイールを装備することで実現し、これらによりC5 Xをモダンで一層魅力的に感じさせている」とコメントする。

C5 Xのボディサイズは全長4,805mmと、「輸入車Dセグメントでは最大級」。2,785mmのロングホイールベースにより、「後部座席に余裕をもたらし、レッグスペースは先代『C5』から60mm以上拡大」しているという。また、直系720mmの大径タイヤを履くことにより、ボディが持ち上がり、大きなグランドクリアランスとともにアポイントも高まった。「ステーションワゴン並みを誇る545リットルのトランク容量と幅広くスクエアが開口部で実要性を高めてもいる」とのことだ。

◆見どころはリア
そのデザインについて中山氏は、「シトロエンの最新のデザインコードに則ったフロントフェイスは、V型に開いたLEDライトが昨今のシトロエンファミリーであることを明確にしている」。同時に、「クロームパーツを効果的にレイアウトすることで、幅広であるとともに、垂直方向にも大きく見せクラス感と優雅さを与えている」という。

サイドビューは、「高いベルトラインと彫刻的なキャスターライン。そしてルーフにそわせたクロームインサートとともに、ルーフエンドにはフローティングスポイラーを備えている」とその特徴を説明。また大径のホイールもサイドビューを引き立てている。

そして中山氏によると、エクステリアデザインのハイライトはリアビューにあるという。「ワイドでボリューム感のある造形は力強さと優雅さを同時に表現。LEDライトはフロント同様外側に向かってV時に開くデザインとした。流麗なスタイリングとトランク容量の両立も入念に行い、まさにミリ単位での調整により、広さだけでなくアクセスしやすいラゲージスペースを実現した」と語る。

◆新たなデザインアイコンを採用
中山氏はインテリアの説明に入る前に、「コンフォートこそシトロエンが定義する重要なキーワード。走行や乗り心地に関わる部分のみならず、あらゆる側面から究極コンフォートを実現するためにあえて高いハードルを設定し、その開発に時間と労力を作っていった」という。そして、「クルマに乗り込むその瞬間から快適かどうかわかるものだと我々は考えており、それがC5 Xのインテリアがくつろげるラウンジを念頭においてデザインした理由だ」という。「シンプルな水平なラインで構成しながら、素材の質感や色、感触を吟味して、居心地の良さを重視している」と説明。

具体的には、「室内に取り込まれる光の量や、角度による陰影の変化まで配慮し、夜間は柔らかなアンビエントライトによるモタンで落ち着きのある空間を演出」。電動のフロントシートには、ヒーターやマッサージ機能に加え、ベンチレーションを初採用。また静粛性にも気が配られており、遮音性を高めるインシュレーターと、前後サイドウインドウにラミネートガラスを使用している。

さらにC5 Xのカラーマテリアルデザインはフランス本国で活躍する日本人デザイナー、柳沢知恵氏がマネージャーとして担当。その最大の目標はこのフラッグシップからシトロエンの新たなアイコンをカラーマテリアルで実現することだった。その結果としてダブルシェブロンをモチーフとした紋様などがさりげなく散りばめられており、その中にはすでにデビューを飾ったクルマ達に先に採用されているものもある。しかし、“フルスペック”はこのC5 Xが初めてであるという。

◆PHEVがお勧め!?
そしてシトロエンのコンフォートのハイライトといえばサスペンションだ。中山氏は、「シトロエンの至上命題、セグメント最上の乗り心地だけでなく、ハンドリングも踏まえて最上のものを提供するように考えており、この目標を達成するために、世界初となるシトロエンアドバンストコンフォートアクティブサスペンションを採用した」という。

これは従来のPHCと呼ばれるダンパーインダンパーのサペンションにプラス、電気制御を加えた機能を新たにC5 X PHEVに搭載したもので、車速や加速度センサー、ドライバー操作といった様々な情報をパラメーターとして四輪それぞれに最適なダンピングをリアルタイムで制御するもの。路面の凹凸や3次元での車体の動きを排除しながら、フラットライドをキープするシステムで、「フライングカーペットと称されるシトロエンの美しい乗り心地を、信頼性の高いテクノロジーで蘇らせたもの」と中山氏はその完成度に自信を見せる。

搭載されるパワートレインはガソリン1.6リットルガソリンエンジンと、それをベースとしたプラグインハイブリッドの2種類。ハイブリッドシステムはトータルで125ps、360Nm。EV航続距離は65kmというスペックで、「走りながらエンジンからの充電も可能」という。因みに充電時間は、最もベーシックな家庭用コンセントでフル充電まで5時間弱とのこと。なお価格や乗り心地等を踏まえ中山氏は、「シトロエンアドバンストコンフォートアクティブサスペンション仕様のプラグインハイブリットがお勧め」という。「106万円の価格差は補助金やエコカー減税により実質40万円程度にまで縮まる」からだ。「オプションはメタリックペイントのみとなるフル装備でのこの価格は、セグメントのベストプライス。Dセグの中では、かなりバリューフォーマネーだと自負している」と語る。

◆テクノロジーもコンフォートがキーワード
フラッグシップたるC5 Xであることから新しいテクノロジーも搭載されている。それは、「移動を快適にするために、人に寄り添ったインターフェースを備え、使いやすくシンプルであるべきとシトロエンは考えている」からだ。その一例としてエクステンデットヘッドアップディスプレイが挙げられる。

これはウインドスクリーンに直接投影するタイプで、ナビの誘導などもそこに投影できる。これはカラーの情報で4.5m先の路面上に浮き上がるように見せるバーチャル感覚のもので、「ドライバーは常に前方に視線を保つことができることから、安全性を高めている」とし、「シトロエンの考えるコンフォートの1つと捉えてほしい」と中山氏はいう。

また、インフォテインメントも最新のものを搭載。スクリーンは12インチで、その操作性は、「スマートフォンのようなイメージ。音声認識機能も搭載しボイスコントロールで様々な機能を使うことが可能だ。コネクテットナビゲーションは、2分ごとに最新の交通情報を反映させる。また、将来的なソフトウェアの更新は無線を介して行われ、シームレスなカスタマーエクスペリエンスは、新たなフラッグシップの今後の性能に欠かせないものとなっている」と話す。

最後に中山氏は、「ストレスフリーの心地よいドライブへと誘うC5 X。動き出した瞬間から思わず微笑んでしまうような乗り味で、わざわざマンホールの上を踏んで走りたくなるような、首都高の継ぎ目の段差が楽しくなるようなクルマ。シトロエンの醍醐味を凝縮したフラッグシップに期待してほしい」と語った。

シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 シトロエン C5 X《写真撮影  内田俊一》 ステランティスジャパンシトロエンブランドマネジャーの中山領氏《写真撮影  内田俊一》 ステランティスN.V.プジョー・シトロエンデザインセンターカラー&トリムデザインプロジェクトマネージャーの柳沢知恵氏《写真撮影  内田俊一》 シトロエン CX《写真撮影  内田千鶴子》 シトロエン  DS《写真撮影  内田俊一》