日産 サクラ《写真提供 日産自動車》

日本でも車両購入の候補としてEVがあがってくるようになった。EVアレルギーのような人も少なからず存在するが、輸入車を中心に国内EV市場は着実に増えている。国産も日産・三菱ががんばっており、『サクラ』、『eKクロスEV』は発表とともに順調な受注数がニュースにもなった。

じつは筆者も6月に入ってすぐ、「サクラ」を注文した。「発売3週間で受注1万1000台突破」(6月13日付け日産発表)のうちの1台はうちの車なのだ(笑)。ガソリン高やCEV補助金もあり、なにかと話題でEVに興味を持っている人のため、なぜ「サクラ」購入を決めたのか、EVを選ぶときの注意点、オプションや充電への考え方、メンテナンスについて解説したい。

初回は、「サクラ」購入の経緯と、注目のポイントをまとめる。

EV購入を後押しした2つの理由
筆者が乗用車・オーナーカーとしてのEVに興味を持ったのは、2012年ごろ沖縄出張で初代『リーフ』のレンタカーを利用したことだ。現地の足として軽自動車を申し込んでいたのだが、同じ値段でリーフに変えることができると言われ使ってみた。充電こそ体験しなかったものの1日の利用で不便を感じることもなく、乗り心地はむしろ快適で、なによりレンタカーのガソリン満タン返しが必要ないのが楽だった。返却前のガソリンスタンド探しやレンタカー屋周辺の「特別価格」での給油を強制されることがなく、燃料代ゼロで利用できる利便性はレンタカーとして最適と思った。

その後も、レンタカーはEVから探すようになり、取材でもさまざまなEVに接し、開発者の話を聞き、試乗する機会も得た。EVは全体的に従来車より運動性能が高く、アクセル・ブレーキ(回生含む)の過渡性能に優れている。走行速度の全域でリニアなアクセルレスポンスは、並みのスポーツカーなら実現するために数十万円以上のチューニング投資が必要だ。

EV購入を後押ししたもうひとつの理由は、自宅のAC200Vコンセントだ。2015年初代リーフ(ZE0)がテコ入れのためバッテリー容量を24kWhから30kWhに増やしたモデルを投入されたとき、ディーラーのキャンペーンでコンセント工事を無料で対応してくれた。2泊3日のモニターキャンペーンに当選し、クルマを借りるときにディーラーがサービスでつけてくれたのだ。自宅は戸建てで、もともとエアコン用に配電盤には200Vのブレーカーを設置していた。そのため工事はコンセントをひとつ増設する程度のため担当者の計らいで設置できた。出力3kWの最低限の充電コンセントだが、3日間の利用で自宅充電に問題ないことも確認された。

駐車スペースで限定される車種
せっかくコンセントまでつけてくれたディーラーには申し訳ないのだが、このときマイナーチェンジしたリーフの購入には至らず、ガソリン車を乗り続けていた。理由は駐車場だ。戸建てだが庭の奥行がせまく植木や花壇などが占拠していて、クルマを購入するときは全長がネックになっていた。初代リーフ(ZE0)でもギリギリサイズで、2代目(現行のZE1)では確実に門が閉まらない状態だった。

庭を改修して駐車スペースを確保する案を家族に提示し続けたが、そのつど却下されていた(花壇をつぶしたくはないらしい)。よりコンパクトな三菱『i-MiEV』という選択肢はあったものの、リーフと比較してしまうと値段の折り合いがつかなかった。

2015年以降、仕事ではテスラ、アウディ、ポルシェ、メルセデス、プジョー、シトロエン、ホンダ、マツダとEVに接する機会が増え、商用車でも三菱ふそう『eキャンター』やベンチャーEVなども試乗や取材を重ねていく。すっかりEV経験値があがったものの、国内で市販されるEV乗用車はほとんど我が家の駐車場に停めることができないものばかりだ。唯一プジョーの『e-208』と『ホンダe』がなんとか収まるサイズだったが、主に予算的な問題で決断には至っていなかった。サクラが発表になる前、フィアット『500e』を試乗しこれも自宅の夜間充電で問題なく運用できそうだった。ADAS機能、全体的な操作性や運動性能もフィアット500とEVの良さをうまく融合出来ており、購入候補に入ったのだが、2ドアが家族にあっけなく却下された。

5月末の契約で納期は秋ごろ
自分としては、価格、パフォーマンス、国内急速充電器(CHAdeMO)との相性、ちょうど22年モデルで値下げが行われたことなど、全体のパッケージングとしてリーフ(ZE1:40kWh以上)をなんとか車庫に入れる方法(門が閉まらないだけで車体が敷地からはみ出すほどではない)を考えるしかないと思っていた。だが、その前に「サクラ」の最終スペックや価格を見てから、とも思っていた。

5月末、ディーラーに試乗・展示車はいつくるのかを問い合わせたが、未定ということなので、横浜の日産グローバル本社ギャラリーで展示車を家族に見てもらうことにした。グローバル本社でも「サクラ」の試乗は始まっておらず、試乗はリーフか『アリア』で、ということだった。

自分は、事前のスペック情報とこれまでのEV運転の経験から、走行性能や動力性能に不安はなかったので、製品バージョンの内外装が確認できればよいと思っていた。家人も国産で軽なら、どんなクルマでも買った車に慣れるのは同じであり心配はないという。仕事でも使う予定があるので、200kmに満たない航続距離は若干不安だが、バッテリー冷却機能(国内仕様リーフにはない)搭載とのことで、長距離移動でのDC急速充電で安定した充電性能が期待できそうだ。30kWhのリーフで1、2泊の旅行経験もあるので、最終的には購入を決めた。納期は10月か11月だという。

日産のおひざ元である神奈川のディーラーに十分な試乗車・展示車が行き渡らないのはどうかと思った。だが、200万円台(233万3100円から)の価格設定といい、普通充電の便利さをアピールするプロモーションといい、日産は「サクラ」を地方のセカンドカー、足代わりのクルマを強く意識しているようだ。SNS等の自分のタイムラインでは、試乗報告の投稿は都市部より地方のものが多い。試乗や実車に触れる機会を地方を先にという戦略なのかもしれない。

次回は契約内容や車種、オプション選びのポイントなどを解説したい。(続く)

日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラ《写真撮影 中野英幸》 日産 サクラG《写真提供 日産自動車》 日産サクラのコックピット《写真撮影 中尾真二》 日産サクラの急速充電性能は期待できそう《写真撮影 中尾真二》 日産リーフ初代(2009年発表)《写真提供 日産自動車》 日産 リーフ の2023年モデル(写真は米国仕様)《photo by Nissan》