スバルの現行ラインナップでのEV、ソルテラ。トヨタ自動車の工場で生産されている。《写真提供 スバル》

SUBARU(スバル)は5月12日、2022年3月期の連結決算を発表した。それによると、売上高が前年度比3.0%減の2兆7445億円、営業利益が同11.7%減の904億円、当期利益が同8.5%減の700億円と減収減益だった。

「2022年3月期は、世界的な半導体需給逼迫の継続や新型コロナウイルス感染症拡大による部品供給制約などの影響を受け、国内外生産拠点の生産調整や操業停止を余儀なくされた。営業利益をはじめとした各段階の利益は、原材料価格の高騰や生産台数減少による連結販売台数の減少などにより、前年度に対してマイナスになった」と中村知美社長は総括した。

グローバル販売台数は前年度に比べて12万6000台減の73万4000台で、国内が1万2000台減の8万9000台、海外が11万4000台減の64万5000台で、うち米国が10万5000台減の50万6000台だった。米国の比率が70%近く占め、相変わらず“一本足経営”が続いている。

2023年3月期の連結業績見通しは、売上高が前年度比27.5%増の3兆5000億円、営業利益が同121.1%増の2000億円、当期利益が同100.0%増の1400億円を見込む。また、グローバル販売台数は前年度に比べて20万6000台増の94万台、国内が2万5000台増の11万5000台、海外が18万1000台増の82万6000台、うち米国が13万台増の63万6000台を予定している。

オンライン会見の質疑応答では、EV専用工場についての質問が相次いだ。というのも、同日に国内生産体制の再編を発表し、2025年をターゲットにバッテリーEV(BEV)の自社生産に着手し、27年以降にBEVの専用ラインを設置すると発表したからだ。

「EVに対する市場の意識がこの1年で急に変わってきた。米国の販売店からもEVに関する問い合わせが急増した。2〜3年前にはなかったことだ」と中村社長は話し、EV工場の新設を早めたそうだ。

具体的には、まずパワーユニット工場の再編として、次世代e-BOXERの生産を北本工場(埼玉県北本市)へ移管して大泉工場(群馬県大泉町)でのBEV移行へ備える。25年のBEVの自社生産は矢島工場(群馬県太田市)での混流生産で始める。そして、27年以降に大泉工場でBEV専用ラインを設置する。これらの再編を含めたBEV関連の設備投資として5年間に2500億円費やす。

「小さく立ち上げて、大きく育てていきたい」と中村社長と話し、「BEVへの移行期においては、必要に応じてガソリン車やハイブリッド車(HEV)の生産も確保できるように柔軟に対応し、収益性にまだ課題の多いBEV事業では、効率のよいBEV生産を実現させて事業性の向上を目指していきたい」とした。

これまで水平対向エンジンという独自の技術を武器にユーザーを獲得してきたスバルだが、EV工場の立ち上げと大きく舵を切った。

北米向け:スバル・アウトバック《写真提供 スバル》 北米向け:スバル・クロストレック《写真提供 スバル》