参考画像:トヨタが試作した燃料電池大型商用トラック(2020年12月)《写真提供 トヨタ自動車》

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は3月18日、大型トラックや鉄道、船舶、建設機械、農業用機械、産業用機械などの大型・商用モビリティ(HDV)の燃料電池技術開発ロードマップを公開した。

ロードマップでは2030年頃には燃料電池を搭載したHDVが普及し始めると想定し、大型トラックや鉄道など、各用途で求められる仕様と技術開発動向から目標とする燃料電池の性能をまとめた。目標とする性能を達成するために必要となる材料特性や技術開発の課題も提示した。

今回策定した技術開発ロードマップでは、HDVに求められる厳しい運転条件、耐久時間を新たな目標として設定した。具体的には、燃料電池スタックの初期性能(連続定格動作点)は電圧0.77V@1.63A/cm2、希少金属である白金の触媒としての使用量は0.19g/kW、運転温度がマイナス30度〜105度。

各用途で想定される走行パターンを模擬した際の耐久時間は大型トラックや鉄道では5万時間、内航貨物船では6万時間、油圧ショベルでは1万時間を目標に掲げる。これらの目標は米国や欧州で示されている2030年の目標に比べて野心的なものになっているとしている。

また、心臓部である燃料電池スタックの目標性能を満たすため、触媒や電解質、GDL(ガス拡散層)、セパレータといった材料ごとに求められる特性を現在の技術レベルや将来の伸びしろから推定し、シミュレーションを使って目標を設定した。

触媒の活性や電解質の伝導率、ガスの拡散性をそれぞれ2〜3倍程度向上させるとともに、105度運転(冷却水出口温度)で最大120度と推定される内部温度に耐えられる材料系の構築が求められるとしている。これらの目標を基に、基盤・要素・実用化の各段階で今後取り組むべき技術課題も併せて提示した。