DS 9《写真撮影  内田俊一》

ステランティスジャパンはDSオートモビルのフラッグシップサルーン、『DS 9』を発表した。そのデザイン哲学はアヴァンギャルドだという。

◆DSのみがなし得ること
DSオートモビル(以下DS)が目指しているものは、「フランスならではのラグジュアリーな文化を自動車に落とし込み、唯一DSのみがなし得る存在感を示すこと」と話すのはステランティスジャパンDSオートモデルプロダクト・マネジャーの田村明広氏だ。そして、「先進のテクノロジー、パリ由来のデザイン、伝統技法によって吟味したフレンチラグジュアリーを提案することで、審美眼の高いお客様の期待に応えていく」と今後への思いを語る。

そのデザイン哲学の根底にあるものは、「アヴァンギャルドだ」と田村氏。DS 9では、「悠然と構えるボディ、伸びやかに映えるシルエット、そして一目でわかる力強いフロントフェイスが特徴で、かつてセンセーションを巻き起こしたクラシックDSに宿る前衛的な精神を継承している」とコメント。クラシックDSとは1955年のパリモーターショーでデビューしたシトロエン『DS』で、斬新なデザインはもとより、ハイドロニューマチックサスペンションだけでなく、ブレーキやパワーステアリング、ギヤボックスにも油圧を使った、未来的なまさにアヴァンギャルドなクルマであった。

さて、DS 9のディメンジョンは、全長4940mm、全幅1855mm、全高は1460mmで、「Eセグメントの領域に相当し、ホイールベースは2895mmと、コンフォートな走りを実現させるだけでなく、エレガントなサルーンプロポーションをも実現している」という。プラットフォームはステランティスグループで中・大型モデルを担う、EMP2を採用。そこからDS 9専用に、ワイドなトレッドと、前後方向にストレッチし対応。フロントサスペンションはストラット、リアはマルチリング式だ。

日本に導入されるパワートレインは2種類。本社発表値でシステムトータル出力、250psのプラグインハイブリッド、E-TENSEと、1.6リットルターボ、225psのピュアテックだ。どちらもアイシン製の8速ATが組み合わされ、プラグインハイブリッドのシステムもアイシンとの共同開発によるもの。「トルクコンバーターの部分にモーターと湿式多版クラッチをコンパクトにまとめている」とのことだ。

◆ちりばめられたサヴォア・フェール
田村氏によると、DS9の魅力は大きく3つあるという。まず、「DS 9を特徴づけるフレンチラグジュアリー。次に極上のインテリア。最後にプラグインハイブリッドを含めたアドバンステクノロジーだ」。

フレンチラグジュアリーについて田村氏は、「DSの商品には常にフランスの歴史、文化、芸術が感じられる。もっと美しいものを作らずにはいられないというこだわり、クリエイティビティが詰まった生き方の美学。フランス語でサヴォア・フェールと呼ばれるものが、形となってDS 9にちりばめられている」という。

例えば、「文字通り真珠のネックレスのように室内を演出するパールトップステッチは、ドレスの縫製技術を生かしたまさにオートクチュールの装備」。また、ウォッチストラップデザインも、ウォッチブレスレットをモチーフとしたシートの形状で、「多くの工数を要するが、クリエイティブなデザインへのこだわりで、DSならでは」と田村氏。そして、ギヨシエ彫り、クル・ド・パリの文様は18世紀の伝説的な時計職人、ブレゲが光の反射を抑えるために、金属の文字盤加工として使い始めたものとされ、DS9のセンターコンソールのスイッチ部分やドアオープナーなど車内の至るところに施されるなど、「様々な装飾に“美”を見出す楽しみがDS 9にはある」とした。

フランスを代表する2つのブランドともコラボレーション。サウンドシステムは、スピーカー専門メーカー、フォーカル社と共同開発。ダッシュボードのアクセントとなるアナログ時計はベルナール・リシャール・マニュファクチュール(B.R.M)社の時計を用いている。

◆古のフランスの自動車文化へのオマージュ
エクステリアデザインのこだわりも細部に及ぶ。まずヘッドランプはリモコンキーによるアンロックとともに180度ユニットが回転し、「乗車する前段階で、ドライバーを魅了する」。そして、ボンネットの中央にはDS9で初採用されたサーベルや、リアフェンダーまで回り込んだクロームは、「かつてのフランス自動車文化へのオマージュだ」と述べる。戦前のフランスには、ファッションにおけるオートクチュール同様、自動車にも一点制作ものの超高級車、例えば『ドラージュ』や『ドライエ』、『タルボ ラーゴ』などをベースとしたクルマが存在した。それらはアールデコの影響を受けた華やかな装飾が随所に施され、コンクール・デレガンスなどで純粋な美とクリエイティビティが競われていたのだ。「これらの装飾は機能には影響しないものの、そこに美を見出すのもフランスらしさ。それを現代に再現するのも、フレンチラグジュアリーを体現するDSらしさでもある」と話す。

インテリアにおいても同様で、上位モデルのオペラでは、上質のナッパレザーはシート、ダッシュボード全面、そしてドアトリムに採用し、「『DS7クロスバック』に比べ、トリムエリアにも惜しげもなく使われているのが特徴だ」という。さらにルーフライナーにはブラックのアルカンターラで覆われ、「エレガントな上質な室内空間を際立たせている」。他にもアシストグリップにレザーをあしらうなど入念な仕上げが為されている。

◆コンフォートサルーン
居住性について田村氏は、「DS9は単なるドライビングセダンではなく、パフォーマンスを追い求めるセダンでもなく、パートナー、家族、友人の方と快適で上質な移動空間を楽しむコンフォートサルーンだ」としたうえで、「Dセグメント以上のホイールベースにより、後席の乗員レッグスペースは同セグメントの競合車と比べ、4cmから10cmほど余裕がある」という。同時に後席の充実機能は「セグメントナンバーワンだ」とし、シートヒーター、ベンチレーション、そして3種類のマッサージ機能を、後席2席に装備。さらに大型のレッドレストを採用し、「前席同様頭部をしっかりとサポート」。アームレストにはカップホルダーとスマートフォンホルダー、USB充電ポートを2つ備えることを踏まえ、「DS9が乗員全てとコンフォートで上質な移動空間を楽しむというコンセプトだからだ」と田村氏は語る。

極上インテリアを支える大きな要素が“アコースティックコンフォート”だ。車体の防音対策を万全のものとするために、ベースとなるプラットフォーム、EMP2は、「単に前兆と全幅を伸ばすだけでなく、随所に制振・静音化改善が施された」。エンジンマウントはクレードルタイプを採用し、制振、静音化とともに、エンジンの位置決めをより強固にすることで振動を抑制。フロントガラスはDS7クロスバックよりも約1割厚みを持たせ、サイドウインドウにはラミネートガラスを採用している。

◆乗り心地も変幻自在
「走りをアートに昇華する先進テクノロジーでは、しなやかな乗り心地を実現し、コンフォートな移動空間を提供するのがDSアクティブスキャンサスペンションだ」と田村氏はいう。これはフロントガラス上部のマルチパーパスカメラが前方20m先の路面を瞬時に画像解析し、ミリ秒単位で四輪それぞれのダンピング調整を行うものだ。他の競合車との違いは、「カメラを使用し、その日の路面状況、同乗者によって変わる車両状態など、変わりゆく状況に絶え間なく調整する機能」と説明。この機能はドライブモードをコンフォートに設定することで作動する。

DSナイトビジョンもD/Eセグメントでは珍しい機能だ。「絶対光量の乏しい夜間走行において、ドライバーが目視できる範囲はおのずと限りがある。その夜間の視界をサポートし、リスクを低減することで飛躍的に安全性を高める装備だ」。フロントガラスに備えられた、赤外線カメラで約300m先まで映像でとらえ、ドライバー正面のデジタルクラスターにグレースケールで表示。この中で、約150mまでの範囲で存在する歩行者、自転車、動物を捉え、自車の進路と交錯する可能性が高い場合には赤くハイライトしドライバーにアラートを与える機能だ(オペラ専用)。

もう1つ、DSならでは機能としてDSドライバーアテンションモニタリングがある。これは、「ドライバーの疲労をカメラで直接検知する画期的なシステムだ」と田村氏。ステリングコラムの上に設置された赤外線カメラが、ドライバーの視線、顔の向き、瞬きを瞬時にモニターし、わき見の頻度が高まったり、疲労による居眠りの兆候が見られる場合、インジケーターと音でアラートする。3度のアラートを経て4度目になると、アラート音が大きくなり、同時にメッセージで休憩を促すものだ。

◆フォーミュラEの技術を
さて、プラグインハイブリッドモデルであるDS9 E-TENSEについて田村氏は次のように説明する。「フォーミュラEの舞台で切磋琢磨するDSは、ステランティスにおける電動化の先鋒となるブランドだ。バッテリーEVだけでなく、プラグインハイブリッドにもE-TENSEという電動モデルのサブネームがつく」という。そして、「プレミアムセダンセグメントにおける競合車に対して、リチウムイオンバッテリーの容量はこれまでのステランティスのプラグインハイブリッドよりもさらに余裕を持たせた15.6kWh、航続距離は欧州仕様地で61kmを誇る。本国公表値ではシステム合計で250ps、360Nmを発揮し、気持ち良い加速の良さが大きな特徴だ」とした。

◆パリのランドマークをグレード名に
DS 9のグレード構成は2つ。「上位モデルのオペラは、豪華絢爛を誇るオペラ座歌劇場から名付けられた。19世紀のナポレオン三世時代に建造された華やかなパリを象徴するランドマークで、気品と優雅さ、吟味されたマテリアル、そして熟練と伝統の技を注ぎ込んだインテリアのイメージと重ね合わせた。上質なナッパレザーに加え、オペラ専用に後席機能を充実させたDSラウンジ、電動スライディングルーフ、DSナイトビジョンなど、贅を尽くした魅力的なラグジュアリーモデル」と田村氏。

そして、シックなベースモデルがリヴォリだ。「パリの中心部にあるハイブランドのフラッグシップ店や美しいアパルトマンが立ち並ぶ、リヴォリ通りからインスピレーションを得たもので、柔らかな風合いを楽しめるバサルトブラックのグレイレザーに、シックな格子柄を利かせ、格調高いたたずまいが印象的だ」と説明する。

最後に田村氏は、DS 9について、「競合ブランドと一線を画した希少なフレンチブランドとして、エレガントでコンフォオートさが際立つ商品力をアピールし、感度の高いお客様にお届けしたいと」と語った。

DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田千鶴子》 DS 9《写真撮影  内田千鶴子》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田千鶴子》 DS 9《写真撮影  内田千鶴子》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 DS 9《写真撮影  内田俊一》 ステランティスジャパンDSオートモデルプロダクト・マネジャーの田村明広氏《写真撮影  内田俊一》 タルボラーゴ T23《写真撮影  内田俊一》 シトロエン DS《写真撮影  内田千鶴子》