ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》

2016年に発売された人気の125ccクラススクーター、ヤマハ『NMAX』(エヌマックス)がフルモデルチェンジを受け、2021年6月から新型の導入が始まっている。アプリに対応する先進性やトラクションコントロールの搭載による安全性が追加され、コンパクトなプレミアムモデルへと進化した。

◆単なる移動ツールではない、上質感を感じさせるデザイン


パステルダークグレーに彩られたNMAXの外装は上質さを感じさせるもので、デザインへのこだわりが強く見て取れる。その色味やシルエットは、どこか『マツダ3』を彷彿とさせ、凝縮感のある仕上がりが好印象だ。

2眼6灯式のLEDヘッドライトや立体的なテールライトもシックなデザインに見合い、視認性と被視認性の高さにも貢献。単なる移動のツールではなく、ちょっといいモノ感がそこかしこに散りばめられている。


軽量鍛造ピストンや可変バルブが組み込まれた124ccの水冷単気筒エンジンには、アイドリングストップシステム(ON/OFFの選択が可能)が新たに採用され、燃費と環境性能が向上。また、その始動にはスタータークラッチを介さないシステムを用いることによって、高い静粛性が実現されている。実際セルボタンを押した時の音も、その後のアイドリング音も控えめだ。朝早く出発したり、夜遅くに帰宅するようなユーザーにとって、かなりプラスになるポイントに違いない。

シート高は765mmで、身長174cmの筆者(伊丹孝裕)がまたがると両足のカカトが接地。131kgの車重はこのクラスのスクーターとしてはごく平均的なものであり、引き起こしも取り回しも難なく行うことができた。ハンドルの切れ角、ミラーの後方視界も問題なく、街中の走行でストレスを覚えるような部分はない。


エンジンの最高出力と最大トルクは、それぞれ12ps/8000rpm、1.1kg-m/6000rpmだ。この数値は最大のライバルであるホンダ『PCX』のそれよりわずかに劣る(PCXは12.5PS/8750rpm、1.2kg-m/6500rpm)ものの、発生回転数が低いおかげか、体感的な力強さはNMAXに分がある。わざと急開しても余程の登り坂でない限り、タイムラグなく増速していく。

◆入力に対してキビキビ反応するスポーティーな味つけ

ハンドリング、そして足回りの印象はどちらかと言えば硬質な部類に入る。もっとも、これはネガティブな意味ではない。入力に対して車体はキビキビと反応し、サスペンションのダンピングもしっかり機能するなど、ヨーロッパのユーザーが好むスポーティな味つけが施されている。リヤサスペンションには2段階のプリロード調整機能も備わっているため、体重や路面に応じてセッティングすることが可能だ。


ABSは非装備、もしくはフロントにだけ装備するモデルが多い中、NMAXはフロントとリアのいずれでも機能する。ただし、介入時の作動音とレバーに伝わるキックバックに緻密さはないため、初めて経験するとかなり驚くかもしれない。もしもユーザーになったなら、安全性を確保した上で一度体感しておくことを勧めたい。

今回、トラクションコントロールを作動させるような場面はなかったため、こちらの介入度は試せていない。しかしながら、それがあるというだけで心理的な安心感は高く、採用してくれたこと自体が評価されるべきだろう。

◆スマートフォン連携がトピック


さて、ではスクーターにおける重要事項、ユーティリティ面もチェックしておこう。最も活用頻度が高いシート下の収納スペースは、23リットルの容量が確保されている。ヘルメットがひとつ入る他、ヘルメットホルダーもふたつ装備されているものの、このクラスのスクーターとしては特筆に値しない。若干気になるのは、シートオープン状態を保持してくれる点はありがたいが、90度程度開くともっと使い勝手がよく、ヒンジ部分の剛性が上がるとさらにいい。手で直接操作する部分だけに、ちょっとしたガタつきが上質さをスポイルしている。

一方、グラブバーは掴みやすく、剛性感も高い。タンデム走行時の安心感は高いに違いなく、リヤシートの座面の広さやホールド性も良好だ。タンデムステップはアルミで成型され、靴底とのグリップ力にも配慮されている。


今回のモデルチェンジで追加された大きなトピックが、「Yamaha Motorcycle Connect」と呼ばれるスマートフォンとの連携だ。専用アプリをインストールすることによってスロットル開度やエンジン回転数、加速度などが記録される他、バッテリーコンディションやエンジンオイルの交換タイミングといった車両状態をチェックすることができる。

また、車体側のメーターには電話やSNS、メールの着信も表示され、情報取得の効率化が向上。ちょっと変わった機能としては、広い駐車場や慣れない場所へ出掛けた時の最終駐車場所がスマートフォンで確認できる点がユニークだ。このクラスのスクーターを日常の足として割り切るのではなく、より豊かな時間を過ごしたいと願うユーザーにとって、NMAXは最適なモデルになるはずだ。



■5つ星評価
ヤマハ NMAX
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX《写真撮影 雪岡直樹》 スマートフォンと連携する「Yamaha Motorcycle Connect」《画像 ヤマハ発動機》