アウディ A3セダン 新型(1stエディション)《写真撮影 中村孝仁》

日本では長い間、自動車のサイズにかなり厳しい制限が敷かれていた。即ち3ナンバー車と5ナンバー車の存在である。

もう知らない人の方が多いかもしれないが、駐車場などでは「3ナンバー車お断り」という立札をよく見かけたもの。実際物理的に入らない立体駐車場なども多く存在した。でも今、排気量が2000ccを超えてもべら棒な税金が取られるわけでもなく、車幅が1800mmを超えても駐車できないところなどほとんど存在しない。ただ、そうは言っても未だに車幅1800mmは日本の道路においては比較的重要な意味を持っているようにも感じる。

今回試乗したアウディ『A3セダン』は、新しくなって全幅が1800mmを超える1815mmになった。排気量の大きさで自動車のサイズを決めていた時代からしたら、たかが1000ccのクルマで3ナンバーかよ!ということになるのだが、それは昔の話。全長は4500mm以下だから今風の日本ではまさにちょうど良いサイズなのかもしれない(全幅は少し大きいが)。ただ、その全幅も側面衝突の安全性を考慮すると、これからも僅かずつ拡大していくのかもしれない。

◆道具感は強いが乗っていると充足感がある


それにしてもクルマの拡大傾向はとどまるところを知らないといった感じである。今回もA3を見て、ちょっと前なら『A4』で通じたな…と感じるほど堂々としたサイズ感であった。そしてダウンサイジングの行きついた先は、このサイズにしてたった1000ccの3気筒エンジンだ。まあターボが付いているからパワーに不足はない。それも今の技術の成せる業。

そんな素晴らしいエンジンを作り上げても、内燃機関車両が堂々と売られるのは後ほんの僅かだと考えると、実に勿体ない感が強い。確かに自動車はCO2を排出して地球温暖化に拍車をかけているのかもしれないが、もっと遥かに大量のCO2を排出する飛行機は声高に排出量削減を求める話は聞かない。フィンランド航空のように乗客一人当たりで見ると、飛行機の方が排出量が少ないといったPRをするところもある。まあ、実感として自動車はいじめられているなぁ…と感じてしまう。


それはさておきA3セダン、道具感は強いものの、乗っていると充足感があり、快適。それに性能的にも申し分ない。それに燃費だってメーターが示した値は19.0km/リットルである。今回はどれくらい乗って、最終的にどのくらいの値だったか忘れてしまった。でも撮影した段階ではこの値を示したわけで、少なくとも決して悪い値ではない。

それにしてもいつもつくづく思うのは、ヨーロッパ車に乗った時、そのステアリングを動かした時のクルマの反応のリニアさ。特にハイエンドのブランドはこのあたりの作り込みが非常にうまいと感じる。

◆ハンドリングに不満が出ようはずもない


今回の「1stエディション」というのは限定車で価格も472万円と結構な金額だが、装備すべきオプションはすべて含まれているから、これ以上装備するものはない。このクルマには通常はオプションのナビゲーションパッケージやテクノロジーパッケージなどが標準装備され、フロントのシートヒーターやパワーシート、それにACCなどもすべて装備されるから、下手に素の価格が安いモデルよりも当然ながらお買い得感が強い。

どうも自動車の試乗記というと、その運動性能についてあれこれ言及しないといけないような強迫観念に駆られる。確かに昔はそうしたことを良く書いたもの。ただ、最近特に思うのは、「ハンドリングに言及出来るような走りが出来る場所が一体この日本にはどれだけあるのか?」という素朴な疑問である。個人的に2年半ヨーロッパ(ドイツ)に住んでいた経験から言わせていただくと、あちらにはそのハンドリングの重要性をいやというほど思い知らされる場所がいくらでもあり、実際法的にも許されたスピード域でハンドリングがモノを言うシーンが非常に多い。

ドイツを例に取れば小さな村と村を適度に荒れた国道が結んでいる。そして村の入り口には厳格なスピード規制が敷かれているものの、その規制を通り過ぎるとあとはまあほとんど野放し。だから、一般道の比較的荒れた路面で100km/hが当たり前の状況もある。そんなところで生まれ育ってきたアウディなのだから、いくら道路の状況が違うからといっても、日本国内の法的規制の範囲内でハンドリングに不満が出ようはずもない。正直、ヨーロッパには自動車を自由に走らせてその運動性能を愉しむ場所がいくらでもある…ということだ。

◆その昔、Cクラスや3シリーズに乗っていた方なら


A3に話しを戻そう。一見何の変哲もないセダンボディなのだが、よく見ると結構グラマラスである。特にフェンダーの張り出し感はなかなかのものである。その昔使われた言い回しのいわゆるブリスターフェンダーだ。先代と比較してフェンダーの抑揚がドアにまで回りこんだデザインとなっている。どっしり感の印象を持たせるのはこんなところにもあるのかもしれない。

いずれにせよ室内を含め適度な上質感とこれまた適度なサイズ感を持ったセダンである。その昔メルセデス『Cクラス』やBMW『3シリーズ』、それにアウディA4などに乗っていた方なら、そのサイズ感にちょうど良さを感じるはずである。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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