アウディ A3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》

威嚇するような顔立ちに仕立てる大きなグリル(正面にある黒い部分)は好きじゃない。角ばった直線的なデザインもメカメカしくて苦手だ。だというのに、それがアウディになるとどうしてこんなに上品に落ち着くのだろう。

コンパクトの可愛さと使いやすさに、遊び心のフィールド感を足したワゴンボディ。それをスポーツというテーマできゅっとまとめた『A3スポーツバック』は、実に優等生で隙がない。もっとも、車幅が1815mmってコンパクトカーとしてどうなのよという疑問は、日本の道を走る日本人としてはあるけれど。


ただ、全長4345mmにまとめられた小さなクルマなのに、見るだけでいかにも「鉄板厚そう」という高級車として絶対的に必要なオーラを感じる。この鉄板の厚みの信頼感(?)は、走るとさらに感じられる。守られ感がはんぱないのだ。心身ともに安心できる心地よさなのである。

999ccのインタークーラー付きターボエンジンは、体幹の強いこのクルマを見事に加速させていく。走っているあいだに感じる守られ感は一瞬も途切れることがなく、すっかり身をゆだねてしまう。この気持ちよさは格別だ。

採用しているSトロニックの構造は、一般的なATに比べるとクリープ(ブレーキペダルを踏まないと、じわじわと前に出る)がなく、女性たちから使いにくいという声が上がっていた。この声に応えるように改良され、次第にじわじわ動くようになってきたのだが、A3スポーツバックはかなり強めに前に出る。


ちょっとした上り坂でもぐいぐい前に進むので最初は、おおっと思うけれど、使い慣れるととても使いやすい。女性心理をよくつかんでいるものである。

この優等生っぷり、死角はないのか? もういちど最初から見渡してみると、やはり車幅1815mmだけがどうしても気にかかる。日本人としては、小さなクルマは1800mm以内に抑えてほしいのよ。たかが15mm、されど15mm。この差は大きいと思うんだよね。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

アウディ A3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3スポーツバック 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3 新型《写真撮影 中野英幸》 アウディ A3 新型《写真撮影 中野英幸》