VW ゴルフ eTSI スタイル《写真撮影 中村孝仁》

VW『ゴルフ』の8世代目がようやく日本に導入されて路上を走り出している。今導入されているのは1リットル3気筒エンジン搭載の「アクティブ」と呼ばれるモデルと1.5リットル4気筒エンジンを搭載する「スタイル」及び「Rライン」である。

というわけで今回試乗したスタイルは、とりあえず上級モデルという位置づけ。ただし、これはあくまでも“前編”で、今後ゴルフにはディーゼルの追加が予定されているほかまだ見ぬ「GTE」、「GTI」、それに「ゴルフR」など、ハイパフォーマンス系がひしめいているから、そのうちどれが日本にやってくるのか定かではないものの、確実に“後編”があるわけだ。

◆3気筒「アクティブ」との58万円の差とは


それはともかくとして4気筒1.5リットルを搭載したスタイルの走りや如何にということだが、ベースのアクティブと比べるとやはりわずかではあるものの、こちらの方が力強い。そりゃパワーにして37%ほどアップ、トルクにして25%アップしているわけだから、50kgの重量増を差し引いても僅かな力の差を感じさせてくれる。もっともパワーだけの差を持って58万円の価格上昇は正当化できない。

勿論それ以外にも差は沢山ある。一つはリアサスペンションの形状。1リットルはトーションビーム、一方の1.5リットルは4リンクの独立懸架が採用されている。そしてタイヤは16インチだったアクティブに対して、スタイルは17インチとなり、サイズ的にも2サイズ幅広の225/45R17である。そしてタイヤ自体も同じグッドイヤーながら、アクティブは「エフィシェントグリップ」。一方のスタイルはより高性能タイヤである「イーグルF1」を履いていた。

またスタイルにはエコ、コンフォート、スポーツ、カスタムなど走行モードが選べるドライビングプロファイル機能が装備されている。これはアクティブには付かない。


装備面は比較的細かいものだが、その差は顕著。特にシートは断然スタイルの方が良い。アクティブではわりと平板なファブリックシートが装備されて、サイドサポートもあまりよろしくないものだったが、スタイルはよりサイドサポートがしっかりとしたスポーツシートとなるし、素材もマイクロフリースとなって肌触りも良い。それにこのシートはシートヒーターも備える上、ステアリングヒーターの装備もある。

等々、58万円分以上の差はあるように思えた。因みにドライビングプロファイルをスポーツにして深く踏み込んでい見ると、その加速感は絶対にアクティブでは得られないものとなるから、スタイルを選ぶ必然性はここにあるかもしれない。

◆燃費性能に涙ぐましいほどの努力


さて、トーションビームと4リンク。リアサスペンションのこの差が走りに対する影響があるかというと、普通に走り特にコーナリングを愉しむなどしない限りはまず差はない。むしろ細く低扁平率でさらに転がり抵抗の小さなエコタイヤを履くアクティブの方が乗り心地的には有利である。だから一般路を普通に流している限りむしろトーションビームとこのタイヤの組み合わせの方が快適だろう。それに燃費的にも。

その燃費に関してであるが、まあ涙ぐましいほどの努力をしている。4気筒になると3気筒と違って気筒休止システムが入る。負荷の小さな時は2気筒で走る。さらにこちらは3気筒にも付くコースティング機構。これはエンジンをアイドリング状態にするモードと、完全にエンジンを切ってしまうモードがあるようで、メーターパネル内にコースティングと表示されるのだが、状況によってアイドリング状態の時とタコメーターがゼロを指すエンジン停止状態の時が確認された。これらのモードを巧みに使い分けて燃費を低減させる。

今回はここにフォーカスして比較的エコな走り方に徹してみたが、40kmほどの高速区間と120kmほどの一般道区間を合わせた160kmほどの走行しかできなかったので、あまり正確なことは言えないが、総平均は13.9km/リットル。今回の場合はWLTCの市街地モードに近い走りだったと思われるが、カタログ記載の市街地モードは12.8km/リットルだから、かなり頑張った方ではないかと思う。もっとも郊外モードになると一気に18.0km/リットルまで伸びて、ここはどうやっても行きそうにないように思えた。



◆実質400万円近いお値段をどう捉えるか

ゴルフ8の良いところは、新たに48Vマイルドハイブリッドを採用したことで、DSGのネガを消し去ったこと。そしてエボの名が付いたMQBプラットフォームによって、俄然どっしり感とフラット感のある快適な乗り心地を実現していることである。

一方でデジタル化が進んで機能面では向上したかもしれないが、インテリアはダッシュの上面だけがソフトパッドであるほかは、あまり見てくれの良くないハードプラスチックを採用し、先代まではピアノブラックの鏡面仕上げだったシフトレバー回りも無塗装のハードプラッチック仕上げと、装飾面では思い切って加飾のコストを下げている。

しかもそのデジタル化の要ともいえるし装備はディスカバープロパッケージと呼ばれるパッケージオプションとなり(全グレード19万8000円)、これを付けないと通信モジュールが無いので何もできないというわけで、新しいゴルフの特徴的な一面を体感するためにはこの値段を上乗せすることが必須になる。つまりスタイルは車両本体価格が370万5000円だが、どうしてもこれに19万8000円は最低でも上乗せ。というわけで実質400万円近いお値段ということになるわけだ。うーん…。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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