ジープ コンパス リミテッド《写真撮影 中野英幸》

◆日本にちょうどいいジープ

ジープには、『ラングラー』を筆頭に「本物感」があり、流線形が主流になったいまどきのSUVの中ではなおのこと、持ち前の武骨な雰囲気が独自の存在感を発揮している。そのあたりが日本での高い人気の秘訣に違いない。

日本での販売台数は何年にもわたって過去最高を更新しつづけていて、2013年以降、4928台、6691台、7129台、9388台、1万0101台、1万1438台、1万3354台と急激に数を伸ばしてきた。さらに昨年もコロナ禍で輸入車の販売が落ち込み、強力なドイツ勢ですら軒並み前年割れとなる中でも、ジープは1万3588台と微増したのは、それだけ魅力的なラインアップが揃っているからにほかならない。しかも所有者の平均年齢のメインが30代と若い。クルマへの意識が高い日本の若年層の目にもジープは魅力的に映っているようだ。


中でも日本で乗るにはもってこいだと筆者もずっと思っているのが『コンパス』だ。ほどよいサイズ感で室内空間や荷室も十分に広く、見栄えがよくて4WD性能も高く、内容のわりに価格がリーズナブルなところもありがたい。初代がマイナーチェンジで現在に通じるデザインになったのを機に2012年に日本に上陸を果たしたコンパスは、2017年に登場の2代目でグッとスタイリッシュになり、より『グランドチェロキー』の弟分的な雰囲気も増して、ますます魅力的になったと感じていたところ、今回のマイナーチェンジで、さらに魅力度が高まった。

◆インテリアの変わりように驚愕


外観はそれほど変わっていないようでけっこう変わっている。グリル下の開口部が思いっきりワイドにされたほか、ヘッドライドやリアコンビランプもLEDを用いたものとされ、新鮮味を直感できるデザインとなった。

一方インテリアはガラリと変わって、その変わりように驚かずにいられないほど。これはもうプレミアムブランドに匹敵どころか超えたのではと思わせるほどのクオリティ感だ。新たに採用された大画面のデジタルディスプレイも機能が充実していてわかりやすくてよい。あくまでジープブランドに相応しく、見た目を先進的すぎないようにしたあたりもこだわったのではないかという気がする。


ドアパネルの意匠も新しくなり、センターコンソールの容量も拡大してより使いやすくなったのもありがたい。

日本仕様のエンジンは2.4リットル直4自然吸気のみで、「スポーツ」と「ロンジチュード」がFWDで6速AT、試乗した「リミテッド」が4WDで9速ATとなっている。今回のマイナーチェンジで走りに関する変更は伝えられておらず、ドライブフィールに多少はもう一歩期待したくなるところもなくはないが、細かいことはあまり気にならないのも、このクルマのキャラなればこそ。

乗り心地の快適性が十分に確保されていて、操作したとおり素直に動いてくれれば、それで十分だという気分になれる。



◆本格的な四駆性能と、安全・便利装備の充実


センターコンソールまわりに目をやると、ジープの他モデルほど本格的でないとはいうものの、悪路走行に関わるスイッチがいくつも配されていることがあらためて目を引いた。今回は乾燥舗装路のみのドライブだが、それを見るとやはり、いずれぜひ試してみたいと思わずにいられない。

安全装備では、歩行者とサイクリスト検知機能の付く衝突被害軽減ブレーキやブラインドスポットモニターのほか、車線逸脱警報だけでなく死角を走る車両との衝突を回避すべくステアリングを自動補正するというジープ初の機能も全車に標準装備となる。

さらに今回のリミテッドには、カメラが読み取った道路標識をドライバーに伝え、自動で法定速度に車速を合わせる機能や、ブレーキペダルから足を離しても停止状態を維持する機能、車両周囲のカメラ映像を映し出す機能、ドライバーの注意力低下などを検知して警告する機能などが標準装備される。快適装備ではジープ初となるヒーテッドステアリングホイールや、リアバンパー下に足をかざすだけでリアゲートの開閉が可能なハンズフリーパワーリフトゲートなどが設定されたことも大いに歓迎したい。



◆ジープはコスパが高い

価格と従来モデルからの値上がり幅は、今回のリミテッドがこれほど変わりながらもわずか1万円高の435万円となるほか、ロンジチュードが2万円高の385万円、スポーツが10万円高の346万円と、価格の上昇が非常に小さく抑えられていることも特筆できる。ジープのクルマはどれもコスパが高いとかねがね思っているが、コンパスを見てその思いがさらに高まったのはいうまでもない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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