ホンダ ヴェゼル 新型(G)《写真撮影 中村孝仁》

発売1か月で新しいホンダ『ヴェゼル』は予定月間販売台数の6倍ほどの注文が入っているそうだ。まずはめでたしめでたし。

だが、ガソリン仕様とハイブリッド仕様ではその比率はほぼ1:9で圧倒的にハイブリッドの方が売れているという。とりあえず何故だかわからないが、その人気の無いガソリン仕様の方をお借りして乗り出してみた。

◆問題はトルクの薄さ?


搭載されるエンジンは1.5リットルDOHC i-VTECで118ps、142Nmの性能を持っている。車両重量は1250kgだから、最高出力的にはそこそこなのだが問題はトルクの薄さ。つい先日試乗したVW『ゴルフ』の1リットル3気筒ターボだって、出力はともかく、トルクは200Nmあるから、ほぼ4割増しでヴェゼルの場合とりわけパーシャルからの加速感に乏しいなぁ…と感じるのはこのあたりにあるような気がする。

これがエコ(ECON)モードとノーマルモードではさらに差がついて、通常でもノーマルモードが使いたくなるのだが、このモード、何故か静止から出足のほんの少しだけがやたらと速く、渋滞時などで踏み過ぎてしまうとすぐにブレーキ!ということになる。本当はエコモードの発進フィールとより強力なパーシャル時の加速があれば言うことなしだが、まあ無いものねだりだ。

とは言うものの、街中で流れに乗って走っている限り、moreパワーを感じることはほぼ無いから、非力を感じるのは郊外や山坂のワインディング、それに高速での追い越し時などだと思う。そう言えば、このエンジン、新開発を謳っているが、エンジンルームを開けてエンジンを眺めると見慣れたホンダの景色からEARTH DREAMSの文字が消えているのに気づかされた。一つの時代が終わったということだろうか。

◆ドライビングが楽しいクルマであるか


このクルマで来客を駅まで迎えに行った。後席に乗り込んだ来客は「広いですねぇ、このクルマ」と話していた。勿論ドライバーである筆者が小柄であるということも手伝っているだろうが、身長180cm級のパッセンジャーが乗っても前後のスペースは余裕があるようである。ただし、ヘッドクリアランスはこの限りではない。

ドライビングが楽しいクルマであるかという話になると、それにはNoを出さなくてはならない。とにかくステア・レスポンスはお世辞にも鋭敏とは言えず。中心付近も左右で2〜3cmは無感地帯が存在する。つまりステアリングを軽く左右に振っても、全くノー感で直進するということだ。


まあ、裏を返せばのんびりと景色を眺めながら郊外を走るにはうってつけ、といったところ。敢えてそのようなステアリングの味付けにしていると思える節がある。パワーの乏しさからもそうした味付けのクルマに仕上げているということだろう。

一方で乗り心地はかなり良い。タイヤはダンロップ・エナセーブ215/60R16が装着されていたが、路面コンタクトも良く、だいぶフラット感が高くなっている印象である。

◆久々となるホンダのヒットデザインだ


デザインはデビュー当初から賛否両論あったようだが、個人的にはとても好ましいデザインに見える。久々となるホンダのヒットデザインだ。ボディ同色で縁取りの無いグリルはうまい具合にボディに溶け込んでいてトレンドの最先端の印象が強い。また、意図的にグリーンハウスを低くしてウェストラインを高く見せ、安定感、安心化を醸成しているところも好印象だ。

お値段は231万7700円(試乗車車両本体価格)。試乗車の場合ディーラーオプションとなるギャザーズナビとドラレコ、フロアマットがこれに加算される。残念ながらそれらオプションの値段の表記は無い。因みにギャザーズナビを装着しないと最新のホンダコネクトは使えず、売りであるスマホを使った開錠施錠、およびエンジン始動などは行えないのだが、一応話だけ聞いて使う意味はあまりないように感じてしまったので、使ってはいない。

ガソリンモデルは1グレードの「G」だけで、例えばステアリングはウレタン巻きだったり、シートの素材が異なっているなどハイブリッドから比べて装備が落とされているが、肝心なものは基本的にすべて装備されているから、大きな不満はないはずだ。

今回はおおよそ160km、すべて一般道での試乗だったが、燃費は11.2km/リットルと少々期待はずれだった。そうは言ってもハイブリッドと比較して販売比率に反映されるほどの差はないように感じたのだが…何故売れないかなぁ?



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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