デンソーの有馬浩二社長《動画キャプチャ》

デンソーは5月26日、事業の取り組みや進捗を説明するイベント「デンソーダイアログデー2021」をオンラインで開催した。その中で、有馬浩二社長は「今年は新しいデンソーのスタートを切る年にしたい」と強調した。

冒頭挨拶に立った有馬社長は2020年を振り返り、「世の中の価値基準が大きく変わった1年だった」と述べ、「これまで価値があると思われていたものが、カーボンニュートラルという新しい物差しによって見直され、買っていただける製品や選んでいただける企業の基準が変わっていくことになる。これはモビリティ領域を主戦場にモノづくりを得意としてきたデンソーにとって、非車載向け製品の開発に留まらず、非デンソービジネス開拓の挑戦に他ならない」と付け加えた。

つまりデンソーは新しい存在価値が問われているとの認識のもと、新しい価値創造を目指していくというわけだ。特に環境面では、CO2を回収して素材や燃料として再利用する事業を開始する。すでに、そのための装置を開発しており、現在、安城工場で実証実験を行っている。「コンパクトな装置で、必要なときにいつでもどこでもCO2を回収して再資源化できる」と篠原幸弘経営役員は語り、その装置を披露した。

太陽光発電で動くもので、大気中からCO2を回収して炭素と酸素に分離し、炭素をカーボンナノチューブをはじめとした素材に転用するほか、CO2を水素と反応させてメタンなどの燃料に再利用する。今後、25年に社会実証、30年に事業化し、35年には売上高3000億円を目指すという。デンソーは2035年度までにカーボンニュートラルの達成を目指しており、その具体策と位置づけるとともにシステムを他社にも販売する。

また、デンソーが得意とする電動車向け製品については、20年度5500億円だった売上高を25年度に1兆円にする。HEV、BEV、FCEVからe-VTOL(空のモビリティ)まで、全方位で先回りした技術開発を進めていくとともに、多様なモビリティを支えるe-Fuelや非接触充電など車載技術の開発にも力を入れる。

空のモビリティに応用することによって、航空機事業で磨きをかけ、高出力、高効率、超軽量化技術を自動車に還元していく。米国ハネウェル社と業務提携を行い、早期市場投入を目指して22年度に試験飛行をする予定だという。

そのほか、安全については、新車への先進安全技術の搭載だけでなく、保有車や中古車への安全性向上にも取り組み、後付けの安全装置などを積極的に製品化していく。これによって、20年度3200億円だったADAS関連売上高を25年には5000億円にする。

「デンソーはモビリティに留まらず、ソサエティ領域でも、まちづくりや農業支援など非デンソービジネスによる新しい価値に挑戦していく。地域ごとに異なる社会の困りごとに寄り添うため、デンソーのネットワークだけでなく、サービス店や修理工場など地域に根ざしたパートナーと密に連携しながら、デンソーの強みであるメカ、エレクトロニクス、ソフトウェアの三位一体を活かした新しいソリューションを生み出していきたい。従来のデンソーにはない、新しいやり方に果敢に挑戦していく」と有馬社長は話していた。

デンソーの篠原幸弘経営役員とCO2回収・再資源化装置《動画キャプチャ》 モビリティ製品における基本戦略《画像提供 デンソー》 デンソーはハネウェルとアライアンス契約を締結、電動航空機用推進システム製品の開発を加速。《画像提供 デンソー》 レクサスLSに搭載されるデンソー製品《画像提供 デンソー》