ジープ レネゲード リミテッド 4xe《写真撮影 中村孝仁》

◆プラグインハイブリッドの「4xe」

ジープ『レネゲード リミテッド 4xe』を1週間ほど借りて約800kmを走ってみた。得られた結論はやっぱり都会的イメージのクルマである…ということだった。

ジープと名が付くと、どうもアウトドアとか悪路といったイメージが先行しがち。確かに以前のジープはそのクルマ作りからして、そうした印象が強いブランドであったのだが、今やそれを見事に払拭して世界的にもSUVブランドの雄として成長している。

日本市場もJAIA(日本自動車輸入組合)が公表している車名別新規登録台数を見ても、しっかりとベスト10にジープが顔を出している(3月時点)。この統計には日産やトヨタなどの海外生産車が含まれているので純輸入車だけに絞ってみると、7番手である。ドイツ系を除けばボルボに次いで2番手だから、如何にジープの人気が上がってきているかわかると思う。

ジープといえば言うまでもなくアメリカのブランドだが、このレネゲードに限って言えば原産国はイタリアだ。最近親会社の名前がステランティスに変わり、PSAと合体してわかりづらくなったが、元を辿るとジープはクライスラー傘下のブランドで、そのクライスラーがイタリアのフィアットとくっついた結果FCAという会社になり、シナジー効果を期待してフィアットのエンジンや骨格を用いて作られたのがこのレネゲード。そして生産もフィアットの工場で行われているからイタリア産というわけである。だから走ってみるとやはりヨーロッパ的な印象を色濃く感じさせるクルマに仕上がっている。

◆トレイルホークよりマイルドな1.3リットルエンジン


4xeはジープが作り上げた初めてのPHEVモデル。すでによりパワフルで、アウトドアというかジープの神髄である悪路走破性の高い「トレイルホーク 4xe」は試乗済みだが、それよりもパワーが低いが、レネゲードのトップモデルとして君臨するのがリミテッドというグレードである。搭載されるエンジン及びPHEVの機構はトレイルホークと同じだが、その搭載する内燃エンジン、1.3リットルターボエンジンの出力がトレイルホークの179psに対して131psという設定になっている。

機構的にはこの内燃エンジンに小さなモーターを接続して6ATと組み合わせ、フロントホイールを回す系統と、リアに60psのモーターとeアクスルのコンビでリアホイールを駆動させる系統に別れていて、それを3つの走行モードでドライバーが任意に設定できるシステムである。3つのモードはハイブリッド、エレクトリック、およびEセーブというもので、ハイブリッドは基本的に電気を優先して必要に応じてエンジンが活躍するコンビモード。エレクトリックは完全電動モード。そしてEセーブはその時点で残っている電気エネルギーを保持して走るモードである。

クルマをお借りした時に「すみません、まだスタッドレスを履いてます」と案内されたのだが、まあそれは気にしないでまずは都会の雑踏に乗り出してみると、基本フル充電されていれば、ほぼ電気で走る。よほどアクセルを深く踏み込まない限り、エンジンが顔を出すことはまずない。これがバッテリー残量が少なくなってくると、今度はほぼエンジンで走る…というのがハイブリッドモードでの走りである。


家に帰って早速フル充電。200Vのみに対応していて、充電は設定すれば何時に充電開始といった計画充電が可能だから、夜間電力でお安くすることも可能だった。だいたい夜8時に充電開始で満充電という設定にすると、翌朝にはフル充電されている。WLTCモードでは48kmの走行が可能だということだが、何度か試してみた結果、実際にはそれよりも10数kmほど少ない30km台が限界だった。

エンジンとモーターのやり取りはスムーズでその移行にはほとんど気付かないが、ブレーキとエンジンのやり取りはハイブリッド車独特癖が強めに出ていて、停止直前に一瞬ブレーキが強めにかかる瞬間がある。一方で48psも内燃エンジンの出力が落とされているから、性能的にはどうなのかなぁ?と危惧していたのだが、案ずることはなかった。そもそも最初の30kmは電動車だから、それ以上の長距離を走った時にようやくガソリンエンジンが主役になって来るのだが、その状況でも加速感は十分。大人一人分ほどトレイルホークよりも軽いのも幸いしているのかもしれない。

◆ジープだけどハンドリングは「都会的」


走りの印象はスタッドレスだというハンデを差し引いてもしっかり感があってホールド感の強さを感じさせるものだった。ハンドリングも中々軽快である。特に以前のジープは悪路走破性を優先していたことからステアリングの中心付近の遊びが大きく、シャープさに欠けていたのだが、レネゲードはこのあたりの印象が全く異なり、これがヨーロッパ的あるいは都会的と感じさせる一因でもある。

トレイルホークと違ってリミテッドにはACCも標準装備だ。ただ、ACCは後付で通常のクルーズコントロールも付いていて、そちらがコントロールボタンの中心にある。最初は普通のクルーズコントロールのボタンで設定してしまい、前車にどんどん近づくので慌ててブレーキを踏む羽目になった。ここは要注意である。もう一つ試乗している間中悩まされたのが、警告音のデカさ。

例えば前車に近づきすぎたり、ブレーキが遅れたりすると警告が出るのだが、それがとにかく早い。こちらは余裕のつもりでブレーキを踏んでいるのに、突然警告が出る。それとACC走行中に直線路を走っていると、突然ハンドル保持の警告。これも本人その気がないところで突然出るから驚かされることしきりであった。まあ、安全マージンが高いと考えればよいのだろうが、パッセンジャーがいきなり巨大な警告音が出るのでビックリする。

最後に驚かされたのは、電費を無視した燃費の良さだ。走行799.8kmに対してガソリン燃費は何と20.1km/リットル。見事である。トリップメーターには電動で356km、ガソリンで443.8km走ったことが記されていたが、使い方によってはほとんどガソリンを必要としない走りも可能ともいえる。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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