ブリヂストン ALENZA LX100《画像提供 ブリヂストン》

◆注目のSUVタイヤ ブリヂストンはオンロード用とオフロード用で再出発

SUVが定番化している昨今、タイヤメーカーもその需要に合わせて数多くのラインアップを揃えているが、特に今求められているのは、オンロードにおける快適性とスポーツ性である。ひと口にSUVと言っても様々で、大半を占めているのは日常でも使い勝手の良いクロスオーバーSUVで、しかもスポーティなイメージをもつモデルのほうが人気は高いようだ。

ブリヂストンは、その状況を踏まえて、アレンザ(ALENZA)シリーズに、コンフォート性能を重視した「アレンザLX100」と、運動性能を意識した「アレンザ001」を揃えている。アレンザLX100はこれまで同社のSUVタイヤである「デューラーH/L850」に取って代わる商品として位置づけられ、今後他のデューラーシリーズはオフロード向けのブランドとして展開、その一方でアレンザシリーズはオンロード向けということで統一化されるという。

◆静かで重いテストカー だからこそ誤魔化しは利かない

今回、オンロード向けのアレンザシリーズの2商品をテストする機会が設けられ、実際に乗り比べまでできる環境が整えられていた。はじめに試乗したのは、新製品となるアレンザLX100と、実質その前モデルとなるデューラーH/L850。車両は両タイヤともに人気クロスオーバーSUVのトヨタ「ハリアー」だ。

このLX100の特徴は、高次元の静粛性と高い耐摩耗性、さらにSUVの弱点でもあるふらつき低減を目標に開発され、ブリヂストンによればデューラーH/L850と比較した場合、騒音エネルギーで22%、60%の摩耗時で9%低減している他、耐摩耗性は5%向上しているという。特にここでのテスト車両が「ハリアー ハイブリッド」であったから、かえってその効果が分かりやすかったのも事実。ハイブリッドゆえに電気モーターのみで走行する状況では、静粛性の本質はごまかしようもないし、車重もけっして軽くはないから制動性やふらつきも如実に顕になる。

まず分かりやすかったのは、路面のつなぎ目などで見られる段差を越えた時の印象。デューラーH/L850から比べればアレンザLX100は確実な進化を見せ、硬さが抑えられているうえ、乗り越えた後の収まりが良い。それでいてロードノイズも低く、まさに新世代のタイヤだと認識させた。これは主に3Dノイズ制御グルーブの役割のひとつとなる消音性能と、高周波ノイズを制御するシークレットグルーブの効果だろう。しかもSUV専用サイドチューニングも功を奏し、大きなヨレ感も得られないし、妙なふらつきを感じることもなかった。

タイヤテストということもあり、ちょっと意地悪く軽く攻めてみても好印象で、コンフォート性能を重視したタイヤとしてはコーナリング時のグリップ感もわるくなく、ちょうどいいショルダー剛性をもつタイヤだと思えた。制動力に関してもアレンザLX100は抜かりなく、急減速を試してみてもデューラーH/L850よりも確実に効いている印象で、ブレーキングしている最中でもヤワな印象がなかった。全体的にバランスのとれたタイヤで、コンフォート性能を求めるユーザーには最適だろう。乗り心地もよく、静粛性も文句なし。ハイブリッド車でこれだけ好印象なのだから、従来のエンジン車ならさらに印象は良いかもしれない。

◆アレンザ001、乗り心地はわるくない。では直進安定性は?

そして次にテストしたのは、先の「アレンザLX100」と、運動性能を重視した「アレンザ001」の比較だ。車両はいずれもアウディ「Q5」だから、これも非常に分かりやすかった。このアレンザ001は、ドライ性能とウエット性能の両立を狙いながら高い直進安定性をもつのが特徴。乗り心地や静粛性、ライフ性能は多少犠牲にしても、手応えのあるフィーリングを目指して開発されたようだが、実際に乗り比べてみると、意外にもコンフォート寄りで、乗り心地などもわるくない。

直進安定性に関しては、メーカーが主張するほどではないと感じたのが本音だが、とはいえ、大きく疑問を抱くほどでもなかった。わずかだがコーナリングを試しても、ややアレンザLX100よりもショルダーの硬さを感じる程度で、これも不快に思うほどではなかった。性能評価表を見てみると、運動性能を重視したタイヤにしては燃費性能が高いのはありがたい。こればかりは長期間にわたって付き合わないと実際のところは分からないが…。

それにしても、やはり「アレンザLX100」の出来は相当だろう。これだけバランスの整ったSUV用タイヤはそうそう見当たらないかもしれない。クロスオーバーSUVに乗るユーザーには是非ともお勧めしたいタイヤだ。

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

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